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気がついたらアヒルになっていた!?〜ただモチモチなだけのアヒルが神鳥と呼ばれるまで〜  作者: @皐月
アヒル転生!

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あたらしい名前

くうぅ。

(……おなかすいた。)


空腹で目が覚めてしまった。ぼんやりとした頭で辺りを見まわす。

木で作られた屋根に壁。どうやら山小屋のような家のようだ。

その家の中にある椅子の上にポツンと置かれていた。


(確か、アヒルになって、オオカミに襲われて、お爺さんに助けられて……。)


目を覚ましても元の世界には戻っていないようだし、アヒルのままのようだ。

やっぱりアヒルに転生してしまったという事で間違いないらしい。


(お爺さんはどこにったんだろう?)


小屋の中は木のいい匂いがするが、お爺さんの気配がない。

どこかに出かけてしまっているようだ。暖炉に火がついているので、そう遠くには行っていないだろうと、もう一度椅子の上で丸くなる。さっきは眠気が勝ったが、今は空腹が強すぎて眠れそうにない。

野菜とかが置いてあれば食べたいところだが、探し回ろうにも椅子から降りれない。


(アヒルにとっては、この椅子は高いです。)

恐らくモチモチしているし軽いので、落ちても怪我はしないだろうが、冒険はしたくなかった。


(少ししたらお爺さんも戻ってくるだろうし、そしたらおなかがすいたと訴えよう。)

そう心に決めて、下手に体力を使わないように丸まったまましばらく待つと、やはり遠くまで行っていなかったおじいさんが小屋に戻ってきた。


「……起きたのか。」

「クワ(おはようございます。)」


お爺さんは抱えていた木箱を床に置き、その上にわたしをそっと入れた。

中には古い毛布が敷き詰められている。


「お前さんの寝床だ。少しは暖かいだろう」

(お爺さん、優しい……!)

わたしは嬉しくなって、その毛布の中で飛び跳ねた。足踏みをして少し形を整え、丸くうずくまってみる。ふかふかでとても居心地がいい。


わたしが「グワッ」と満足げに鳴くと、お爺さんは無骨な顔を少しだけ綻ばせた。


「暖炉の火のそばは危ないから、寄るんじゃないぞ。あと、一人で外には出るな。森からは少し離れたが、こっちの方にも獣はでる。」


言葉なんて通じないだろうと思いながらの忠告だったのだろう。だが、わたしは振り返り、お爺さんの目を見て「グワッ(わかった)」と一つ頷いた。

「……お前さん、やっぱり賢いんだな」

お爺さんは感心したように太い息を吐いた。そして、わたしの真っ白な羽毛を指先でそっと撫でる。


「名前をつけてやらんとな。」

「クワワっ!クワ。(やった!かわいいのがいいな。)」

前の記憶はぼんやりしていて、名前も思い出せない。だから、新しい名前をもらえることにテンションが上がる。


「…お前さんのような真っ白な鳥は初めて見たからな。ブランはどうだ?」


ブラン。今日からわたしはブランだ。

(うん、可愛い名前。気に入った!)

わたしは短い尻尾をフリフリと揺らして、お爺さんの手に頭を擦り付けた。


「気に入ったか。」

わたしが満足そうにしていることが伝わったのか、お爺さんも嬉しそうに顔をほころばせた。


くうぅ。


いい雰囲気だったのに、わたしのお腹から情けない音が鳴った。

恥ずかしくなって、ワタワタと箱の中で暴れるわたしを見て、お爺さんは笑い声を上げた。


「ははっ! そうだな、飯にしよう」


お爺さんはわたしを再び上着の懐にすっぽりと入れた。

「村へ行くぞ、ブラン。お前さんが食べれそうな美味しい野菜とさっきの毛皮を交換してこよう。」

「グワッ!(野菜、やった!)」


お爺さんの懐の中から顔だけを出し、わたしは初めて訪れる人間の暮らす村へと向かって、期待に胸を膨らませた。


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