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ピラミッドの住人たち


 添島京介が融資課に配属され1カ月後


 桜国橋支店 3階会議室


 「⋯というわけで今月は融資目標達成の目処が立ちました。」


「わかった。みんな、よくやってくれた。」


「「「はい!」」」


「水野くんもようやく融資課に馴染んできたようだね。見直したよ。」


「は、はい!ありがとうございます!」


 は、初めて支店長に褒められてしまった。


「それに添島くん。新人ながら融資課の中でも2番目の成績とは、さすがだ。」


「ははっwヨユーっすw」


 私たちの予想に反して添島くんは要領がいいらしく、融資に関しては好成績を残した。


 こんな感じで仕事ができるのが納得いかない。


 ムカつくけど負けてるし⋯悔しいぃ⋯!


「1位は⋯流石だな恵守。」

 

「ありがとうございます。」


「⋯チッ⋯」  


 でも恵守先輩の成績にはダブルスコアをつけて負けている。へへっ!ざまぁみろ!(←トリプルスコアをつけらてる人)


「しかし、目標達成で浮かれてはいけない。我々が目指すのは、全国一位。最優秀店舗の栄光だ。みんなも自らの限界に挑戦するよう頑張ってくれ。」


「「「はい!」」」


「会議は以上だ。」


___________________________


「はぁ⋯なんとかなったね。みんなお疲れ様!」


「いやぁ、まさかここまで添島くんがいい成績を残すなんて。」


「予想外ですね。」


 桜国橋支店 屋上 


 ここは喫煙スペースであり、今は添島を除いた融資課メンバーのたまり場になっている。


「いい成績ねぇ⋯」


「どうしたんですか課長?いいことじゃないですか。ムカつくけど。」


「いや、実はさ。あれ添島くんが自分で取ってきた融資じゃないみたいなんだよね。」


「自分で取ってきてない?」

 

「そっ。最近本部の融資担当者がちょくちょくうちの支店来てるんだけどさ。どうやらいい融資先を添島くんに渡してるらしいのよ。」  


「ずるっ!?そりゃ、急に新人が2位の成績残すわけですよ⋯」


 負けて悔しがったワタシが恥ずかしい。


「でも恵守ちゃん、よくそんな相手にダブルスコアもつけられたね?」


「ええ、女の武器を使いました。」


「そんなのあるんですか!?」


「死ぬ気と根性です。」


「聞いたことないよ、そんな可愛くない武器。」


 素っ頓狂な回答に課長は冷静にツッコミを入れる。


「しかし帝都派総動員でバックアップしてるからねぇ⋯頭取の息子が仕事できませーん。なんて意地でも隠したい汚点だろうし。」  


「すみません課長。⋯帝都派ってなんですか?」  


 若干の沈黙が起きる。


「あぁ⋯渚くんは、合併後に入行したのでしたね。」


「そりゃ知らんわな⋯水野ちゃん。ウチの銀行がいくつかの銀行が合併してできたのは知ってるよね?」


「は、はい。帝桜ていおう銀行と、みのり銀行ですよね?」

 

「違う、その前があるんだ。」


 -帝桜みのり銀行は、もとをたどれば戦前に出来た財閥系の帝王都民銀行(略して帝都銀行)と、戦後に関西を中心に栄えた桜阪おうさか商人あきんど銀行が、9年前に合併。帝桜銀行に名称を変更。

 そして5年前、名古屋を拠点にしてたみのり銀行が合併して、今に至る。-


 派閥としては帝都派、桜派、みのり派の3つに分かれる。


「添島頭取は元帝都銀行派閥のトップ。だから帝都派の連中がこぞって手を貸しているのさ。」


「なるほど⋯桜派の人たちはどう思っているんでしょうか?」


「面白くはないわな。まぁ俺は元みのりだから関係ないけどさ。どう思ってるの、恵守ちゃんは。」  


「えっ!恵守先輩、元桜の人なんですか?」


「ええ、まぁ⋯」  


「ちなみに轟支店長も元桜だよ。」


 これは新事実!恵守先輩と轟支店長はおんなじ派閥だったんだ⋯仲めっちゃ悪いのに。


「正直、あまり派閥に関しては気にしたことがないですね。合併したのも入行2年目ですし。帝都派も桜派も、仲間同士で足を引っ張って。はっきり言って、不毛な争いです。」


「うん。俺もそう思う。上の奴らは、マジでしょーもない連中だよ。」


 遠い目をしたままタバコをふかす永田課長は、いつもは見せない虚しそうな顔で目の前のビル群を見つめていた。

 

 数日後、とある融資をきっかけに桜乃国支店は、厄介な事件に巻き込まれるのである。

ご精読ありがとうございます。

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