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捨てる神と拾う神

「どうぞ、汚いところですが。」


「いえいえ、そんな。」


 あのあと、どうしても何かお礼がしたいというので、おじさん(名前はバルムさん)の店にお呼ばれすることになった。


「ここは⋯料理屋ですか?」


「はい。繁盛はしておりませんが⋯味には自信があるんです!」


 街外れにある、少し寂れた通りにある料理屋。カウンターが数席と、テーブル席がいくつか。


 小綺麗にしてある内装。


 悪くないように見えます。


「⋯お腹すきましたぁミハル様ぁ⋯」  


 先程まで姿が見えなかったカテリーナさんが、弱々しくカウンターにへたり込んでいる。


「え⋯まだいたんですか?」


「いますよぉ!ゴタゴタしてるから隠れて監視していただけです⋯」


「⋯意外と怖がりなのですね。」  


 バルムさんはキッチンで調理をしているので、こちらには気づいていない様子。ですが、その姿は真剣そのもの。


 調理している姿を見るに、結構な手際の良さです。


 手に取っているのは⋯


 パンにじゃがいも⋯何を作るのでしょうか。


 ―2分後―

 

「出来ました!どうぞ、お召し上がりください。」


「これは⋯」


 円形のパンで肉やチーズを挟んだハンバーガーが出てきました。横に添えられているのはフライドポテト。


 完璧にハンバーガーです。こっちの世界でもあったんですね。ハンバーガー。  


「うわぁ⋯いい香りぃ⋯」 


「⋯?えっ!妖精!?」


「すみません⋯私の知り合いです。」  


 食事するのに邪魔だったのでフードを取って、おしぼりで手を拭く。


「⋯ふぅ。結構邪魔でしたね。このマント。」


「えぇっ!?こ、子供っ!?」


「あれ⋯言ってませんでしたかね。」


「すみません⋯少しびっくりしてます。先程から結構な衝撃で⋯」  


「⋯ですよね。」


 生意気にも子供が金を立て替えたことに申し訳なさを感じていると、カテリーナさんが突っ込んできた。


「もぉ〜、早くいただきましょうよぉ〜。」


「確かに、冷めてはもったいないですね。いただきます。」


 ナイフとフォークできり分けて、さっそく口に運ぶ。


 肉汁の溢れるハンバーグ、濃厚なチーズ、それを包むパン。あちらの世界でもなかなか食べられない本格的なハンバーガーです。


「おいしい⋯」


 私のきり分けたものをちょっとずつ食べているカテリーナさんも、頬に両手を当てながら笑顔を浮かべている。


「んんっ〜!!こんなの食べたことないっ!」


「ありがとうございます。実はこれ、私の地元料理でカルバンダと言います。子供の時からこれを食べて育ちました。」


「なるほど、ライアットヒルズでは馴染みはないのですか⋯ですがこれは素晴らしいおいしさです。」


「そう言っていただけて、光栄です。」


「うーん⋯なんでこんなに美味しいのに、お店は繁盛してないんですか?」


 カテリーナさんが不躾なことを言うと、苦笑いを浮かべておじさんが答える。


「ははっ⋯そうなんですよね⋯なぜこんなにうまくいってないか、私にもわからなくて⋯」


「⋯立地の悪さだと思いますよ。」


「え⋯?」


「あっ⋯」


 『しまった⋯!』と口を押さえてもときすでに遅し。言ってしまったものはしょうがないので、続きを話す。


「⋯飲食店において、料理の腕以上に大切なもの。それは立地です。お客さんが来てくれなければ、いくらご飯がおいしくても見つからない。いくらおいしくても、また来ようとする足が止まってしまうんです。」  


「⋯甘い見通しでした。」  


 バルムさんは私の言葉を聞いて、うなだれたように話し始めた。


「初期費用をあまり用意できず、ここの家賃の安さだけで立地を決めてしまいました。おいしいものさえ作っていたら必ず人が来ると、これまで頑張ってきましたが迂闊でした⋯」


「もしかして、借金は店の赤字の補填で?」


「はい。あのジャリオさんから借りています⋯ですが、利息がとても高くてもうどうしょうもなくて⋯それで一発逆転を狙ってカジノに⋯」


 バルムさんには、料理の腕はあっても商才はない。店の経営とは難しいものだと再認識する。


「ごめんなさい。こんな愚痴をこぼしてしまって⋯必ずお金は返しますから、今日は本当にありがとうございました。」  


 この小さな子供に頭を下げる姿は、すこし情けなく見える。


 しかし、プライドを捨ててでも感謝を伝えるために頭を下げられるこの人には、まだ誠実さがのこっています。


「⋯少し失礼。」

 

「⋯?どうしました?」


 店の奥を調べてみる。何か、この店を変えるきっかけのようなものがのこっているかもしれないから。


「こっちは?」


「倉庫です。前の主人が使っていた物置なので、あまりきれいではありませんが。」


 扉を開けて、なかにズンズンとはいる。


 埃っぽくて薄暗い。バルムさんに持っているローソクで照らしてもらいながら、奥へ進む。


 すると大きな布がかけてある、何かが目に入った。


 気になったので、布をスルスルと引っ張る。


 ―パチリ⋯パチリ⋯


 私の頭の中で珠が弾ける音が聞こえた。


「⋯いいものがあるじゃないですか。」


「これのどこがいいものなんですか?ミハル様。」


 振り返って2人を見る。


「一発逆転の秘策です⋯これで、ジャックポットを狙いましょう。」

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