やっぱりここでもカネを貸す
「もう勘弁ししてくれぇっ!!」
「はい⋯すみません⋯」
結果は大勝ちにつぐ大勝ち。
5億メイズというとんでもない金額に達して、ついに運営側からのストップが入った。
私は黒服たちに裏側に連れて行かれ、この運営の男。ジャリオからブチギレられているのだ。
「おめぇ⋯どんなイカサマしてるんだよ⋯こんなに勝てるわけねぇだろ⋯」
「⋯こっちが聞きたいですよ⋯」
「イカサマしたらその分のペナルティがある事ぐらいわかるよなぁ⋯?」
「!!」
私はパァッと目を輝かせて、彼に詰め寄る。
「ぜひぜひ!!いくらでももらってください!さぁ、さぁさぁさぁ!!」
5億メイズの現金をグイグイと、ジャリオに押し付けようとする。
「なんだこいつ!?いや、くれるならもらうけどさぁ⋯」
「ジャ、ジャリオさん⋯」
そんなてんやわんやの最中、カジノの黒服が入って来た。
「なんだ⋯!今取り込み中なんだよ!」
「取り込み中なのか⋯?私よりもその娘っ子のほうが大事なのだな。ジャリオ。」
「!?と、頭領!!」
黒服の横から、スッと老年の男が姿を表した。
品のいいスーツに身をつつみ、杖をついたその男性は頭領と呼ばれていた。
「そのお嬢さんがイカサマをしたとは、到底思えんのだがなぁ⋯どうなのかな、お嬢さん?」
私の目をじっと見て問うその人に、きっぱりと言いました。
「いえっ!私はイカサマしました。どうぞこのお金、持っていってください。」
「ふっ、くっくっ⋯イカサマした奴が、そんな堂々と言うわけなかろう⋯」
ま、まずい。もっと演技をしたほうがよかったのでしょうか⋯
「このお嬢さんから金を返させるなど、『デスペラード』の信用にかかわる。今日はそのままお返ししろ。」
「しかし、頭領!」
「⋯私に意見するのか?」
「⋯いえ、失礼しました⋯」
「お嬢さん、今日は勝利の女神がついていたようだね。」
先程まで冷酷な顔をしていたおじいさんが、ニコリと笑みを浮かべてこちらを見る。
「そ、そうですね⋯ありがとうございます。」
「では帰るとするかな。またね。」
ツカツカと歩いてその場を去る頭領とその部下たち。その場に残された私とジャリオは、二人とも頭を抱えるしかなかった。
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「⋯はぁ。」
「ため息つきてぇのはこっちだ⋯!くっそぉ⋯売上もヤベェし⋯頭領からの信頼がぁ⋯」
「申し訳ないです。」
「そんなスッと言うな!こっちは大ごとだっ!」
ジャリオにカジノの出口まで送られる道中。すごい勢いで罵詈雑言が。
「すみませんっ⋯すみませんっ⋯!」
「おいおい、そんなんで許されるとでも思ってんのかぁ!?」
カジノの運営側のチンピラが、小太りの男を責め立てる。
「今日、もう全財産を使って負けてしまって、ツケなんてとても返せません⋯」
「⋯じゃあてめぇの店をもらってやるよ!さっさと権利書持ってきやがれ!!」
男は勢いよく土下座をした。
「お、お願いします⋯もう少しだけ待ってください⋯」
額をこすりながらすすり泣く声が聞こえてくる。
「ははっ、アイツついに払えなくなったか。クズってやつは救えねぇなぁ?」
ジャリオはその小太りの男と面識があるのか、小馬鹿にするように笑っていた。
嫌な空気だ。
取り立ての空気。
いつも、ムカムカする。嫌な空気。
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「申し訳ございません⋯どうか、あと数日だけでも⋯」
「そんなこと言ってもねぇ奥さん、返してもらわないとこちらもどうしょうもないんだわ⋯」
「でも⋯お願いです⋯どうか⋯どうか⋯」
「お、お母さん⋯」
母親が弱々しく懇願する。
「⋯はぁ⋯子供の前でそんな姿を見せるんじゃないよ⋯」
「⋯うっ⋯うぅっ⋯」
それは情けなさだったのかもしれない。
悔しさだったのかもしれない。
でもその姿は、とても見ていられるようなものではなかった⋯
母は誰かに助けてほしかったのだと思う。
どんな知らない、他人であっても。
助けを求めていたのだと思う。
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気づいたら、私は責め立てる男の腕を取っていた。
「お待ちください。」
「ああっ!?誰だテメェは!邪魔すんじゃねぇよ!!」
昔を思い出し、つい話に割り込んでしまった。
無関係な奴に取り立てを邪魔されたチンピラは、すごい剣幕でこちらに詰め寄る。
「何がしてぇんだコラァ!テメェが払ってでもくれんのか、ああっ!?」
「⋯いくらですか。」
「はっ!元本含めて300万メイズだ!払えるもんなら払ってみろっ!」
私はカバンににあった札束を、3本ほど取り出す。
「はい。」
「⋯は?え⋯?」
「だから、はい。」
鳩が豆鉄砲を食らったような顔でこちらを見てくるチンピラの胸元に札束を押し付け、取りたれられていたおじさんに近づく。
「大丈夫ですか?さぁ、立って。」
「え、え?な、なにが⋯?」
手を差し出すと、その男は困惑しきりだった。
周りからの目も怖いので、おじさんの手を引いてこのカジノから抜け出すことにしました。
「なんでそんなクズに金なんか出すのかねぇ⋯?俺にはわからねぇ⋯」
「⋯私の勝手です。」
ジャリオに悪態をつかれながらも、足早にその場を去った。
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「ここまでくれば大丈夫でしょう。それでは。」
「ま、待ってください!」
カジノを出て街の繁華街の路地裏。
その人は慌てて私を制止した。
「⋯何でしょうか。」
「ま、まず。助けてくだってありがとうございました⋯」
「⋯いいんですよ別に。気まぐれですから。」
「で、ですがっ⋯」
その答えでは納得してくれないであろうとは思ったでいたが、食い下がるように続ける。
「な、なぜ立て替えてくださったのですか⋯?初対面で何の面識もないのに⋯」
哀れみか、偽善か。
正直私にもわからない。
「⋯なんででしょうね。あなたが、助けを求めていそうだったから⋯」
「⋯!」
おじさんは私の答えに目を潤ませて、膝をつく。
「⋯ありがとうございます。う、うぅ⋯」
涙を浮かべるおじさんの肩に手を当てて、落ち着くまで隣にいてあげよう。
そう思った。
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