祝福(いいえ、呪いです。)
「なんだぁ⋯今なんつった⋯?」
大雨の中、レインコートを着た小さい娘。
顔の見えないその子に、ジャリオはゆっくりと近づく。
「あら、そんな態度をとるんですね。ジャリオ。」
「⋯?なんだこいつ⋯」
「ミハルッ!逃げなさいっ!!」
「⋯おとうさん。大丈夫です。」
俺の忠告を無視して、ジャリオと対面するミハル。
その姿は、とても子供のようには見えなかった。
「おい、クソガキ⋯大人の話に口出してんじゃ⋯!?」
急にジャリオの手が止まる。
「⋯ふふっ。遅いですね。本当に遅い。」
「お、お前⋯いや、貴方は⋯」
「⋯なんだこの状況は⋯」
俺の娘にこの金貸しは、顔を青ざめさせながらたじろぎ始めた。
ミハルはニヤリと笑みを浮かべて、ジャリオに詰め寄った。
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―8年前―
「おぎゃあ!おんぎゃあ⋯」
「いやぁ⋯可愛いなぁミハルは⋯」
「ええ、私たちの娘ですもの!」
どうもこんにちは。恵守美春です。
いえ、今はミハル・ウッドフィールドと申します。
ずいぶん話が飛んだな⋯?と皆様思われていることでしょう。
ですが仕方がありません。
私がなぜあのジャリオにあのような態度を取れるのか。
なぜ私に恐れおののいていたのか。
それには深い理由があるのです。
これからちょっと、昔話に付き合っていただきます。
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―6歳のある日―
「⋯」
―ペラっ⋯ペラっ⋯
「⋯ふぅ⋯そこにいるのはだれなんですか。」
「⋯!?」
ビクンッという音が聞こえるように、何かが反応した気配がしました。
「⋯ば、バレてます⋯?」
「バレてます。」
「あちゃー⋯見つかるなって言われてたのにぃ⋯」
私が食卓でいつものように本を読んでいると、何故か監視されているような気配がしていました。
これは生まれたときからのことです。
この世界に生まれて6年。私は前世の記憶を持ったまま、生活してきました。
この世界は私の住んでいた世界とは違う、ファンタジー世界であること。
私はエルフと人間の子供である、ハーフエルフであること。
つまりのところの異世界転生であること。
そのすべてを受け入れて、第二の人生を歩んでいたのですが。
―シュイィーン⋯
「⋯さすがはあのエビルス様が認めた神童、勘が冴えてますねぇ!」
何もなかったところから金色の光をまといながら、スーツ姿の妖精さんが現れました。
「⋯ようせいさんですか。」
「チッチッチッ⋯私はただの妖精ではありません!黄金の支配者、金融神エビルス様の右腕っ!第二補佐官のカテリーナと申しますっ!」
胸をとんっと叩いて胸を張る妖精さんは、なぜだか誇らしげでした。
「⋯そんな神さまのお付きの方がなぜ私を監視されているのですか。」
「それはもちろん、エビルス様のご指示のもとですっ!」
「⋯ということは⋯あなたたちのせいですね⋯」
「何がですか⋯?」
素っ頓狂な顔をして私の前で首をかしげるカテリーナさんに、この6年間でおきた不思議な体験を話すことにしました。
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「だぁ⋯!だぁ⋯!?んぁ⋯!」
生まれて間もないころ、ゆりかごに揺られているとどこからか背中の感触が変わるのを感じました。
―ジャリッ⋯ジャラッ⋯
(いたい⋯というより硬い⋯?)
両親が見てないのを確認して、ゆりかごの布の中を確認すると中には大量の金貨が入っていました。
(⋯なぜですか。さっきまで柔らかかったのに⋯)
「ミハルー?どうしたのかなぁ⋯?」
「!?⋯だあっ!ぃだあっ⋯」
おとうさんにバレないように、金貨のうえで揺られ続けるしかありませんでした⋯
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「ミハルーっ!こっちだよーっ!」
「ふふっ⋯待ってくださーい!」
4歳のとき、近所の女の子たちと森の奥で追いかけっこをしていると。
「⋯?なんでしょうここは⋯」
子どもたちとはぐれて、変な洞窟に導かれるままに入っていくと。
「⋯だからなぜですか。」
中には骸骨の傍らに、金銀財宝が山のように保管されていました。
「ミハルーっ?どこにいるのぉー?」
「!?早く戻らなきゃっ⋯」
友達にバレないように、洞窟から急いで飛び出しました。
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「⋯だからなぜですか⋯ってもういいですっ!!」
5歳のある日⋯というか毎日なのですが。
森の鹿たちが必ず私の部屋の窓の前で、ツノを落としていくのです。
このツノ。確か薬にできる素材で、金額で言うと8万メイズはくだらない代物のはず⋯
鹿は私にウルウルとした目を向けながら、頭を差し出します。
「はぁ⋯貴方の気持ちは嬉しいですけど、少し迷惑なんですよね⋯」
「⋯!?ウ⋯ウゥ⋯」
鹿はショックを受けたようで大きくうつむきます。
「⋯ごめんなさい。分かりました。ありがたくいただきます⋯」
諦めたように鹿の頭を撫でると⋯
「⋯!!」
パァッ!と明るい顔になって鹿は森の奥へ帰っていきました。
「あぁ⋯かさばる⋯」
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「もう、この方法しかないでしょう⋯」
金銀財宝、鹿の角、レアアイテム、エトセトラ、エトセトラ⋯
私の部屋のクローゼットも、いよいよ限界が来てしまいました。
両親にバレるのを恐れて、こっそりとそれを村の外れに運び出し、シャベルを取り出します。
「⋯隠す場所がないなら、埋めてしまえばいいじゃない。ふっふっふっ⋯」
ケーキよりも贅沢なことを言ってますが、私にとっては不要なものです。
(私は前世で散々金に振り回されてきました。死ぬ直前も、もう金にかかわらないと決めたはずです⋯!)
「誰かに見つかられても、それはそれで良いでしょう。さぁ⋯掘りますよっ!」
ザクッとシャベルを土へ突き立てると、ガツンッ!と音を立てて止まります。
「⋯?硬いですね⋯」
ここは柔らかい地盤のはずですが⋯と思いながらシャベルを使っていると、土の中から少しずつ妙なものが出てきました。
私はそれを見ながら、ヘナヘナと崩れ落ちます。
「もう⋯いい加減にしてください⋯」
中からは黄金に輝いた、埋蔵金が姿を表すのでした。
ご精読ありがとうございます。
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