答え合わせ
「⋯銀行を裏切るような真似をして、許せませんよっ!」
添島くんと木之本社長の密会の翌日。
渚くんが、私にデータを渡しながらすごい形相で詰め寄ってきました。
「まぁまぁ、それ恵守ちゃんに言ってもしょうがないじゃん。」
「あっ⋯!すみません、先輩⋯」
「大丈夫ですよ。気持ちは分かります。」
タバコをふかしながら、永田課長は疑問を投げかけてきました。
「しっかし、あの木之本社長が反社から金を借りてたなんてねぇ。なんでそんな危ない橋渡ったんだろ。」
「それは私も疑問でした。そのようなタイプの人には見えなかったのですが。」
気が大きくなるけど、木之本社長は基本的には気弱な人です。そのような事をするとは思えません。
「ですから、これを用意しました。」
バッグから書類を取り出します。
「⋯なにそれ?」
「間乃坂について調べた調査書です。何かの手がかりになるかと思って。」
「そんなものどこから⋯?」
楓くんが首を傾げながら、問いかけました。
「私の友人に探偵業をしている方がいます。その方に頼みました。」
「ほんとに交友関係広いよね。君。」
三人で肩を寄せて書類を見る。
「⋯ふーん。学歴は結構いいんだな。⋯ん?⋯お、おい⋯」
「なんですかこれ⋯」
「⋯そういうことでしたか⋯」
青ざめる二人をよそに、私は深く目を閉じました。
___________________________
「⋯この二つの証拠があれば、確実に立証できるな。」
「⋯」
「よくやった、恵守。駿河さんも喜ばれるだろう。」
支店長行きつけのバーで、不正の証拠を渡し、ようやく任務から解放されました。
「支店長。少しよろしいですか。」
私は支店長に目を向け、話を始めます。
「⋯なんだ。」
「今回の不正ですが、少し気がかりだったことがあります。それは、木之本社長がなぜ反社会的勢力の間乃坂から借金をしたかです。」
「⋯ほう?」
支店長は少し訝しんだ様子で、私の話に耳を傾けました。
「闇金から借金をするのは、相当危ない橋です。なぜ、そんなところから木之本社長はお金を借りてしまったのでしょう。」
私はもう一台のICレコーダーのボタンを押し、カウンターに置きました。
___________________________
―添島京介と木之本社長の密会から数日後―
「木之本社長、これはどういうことでしょうか。」
社長室で私は木之本社長に、先日録った音声データを聞かせました。
「⋯なんだこれは⋯」
「私がつかんだ証拠です。このままではあなたは詐欺罪を働いた犯罪者になってしまいます。まだ、未遂ですが。」
「なぜ君がこんな事をっ⋯君は何者なんだい⋯?」
「騙していて申し訳ございません。私、帝桜みのり銀行の恵守美春と申します。」
「ははっ⋯最初から私は疑われていたのか。」
木之本社長は椅子に深く腰を落とし、のけぞるように頭に手を当てました。
「⋯ですが、少し気になることがあります。貴方はなぜあの間乃坂社長から、お金を借りてしまったのですか?反社会的勢力だと知っていながら、なぜ。」
「⋯最初は彼は実業家だと名乗っていた。ゲーム業界の会食で出会ってね。そこで彼は、私の会社に将来性を感じると言ってくれた。赤字が続いていたウチの会社にだ。」
「⋯」
「そこでウチに金を貸してくれるとまで言って、あとはトントン拍子。でも気づいたら彼は、裏の人間だったんだ。」
諦めたようにポロポロと話を続ける
「彼からの要求はどんどんとエスカレートして、最終的に彼の仲間までウチの会社に送り込まれてきて⋯もう、どうすればいいのか⋯」
「警察に行こうとは思わなかったのですか?」
「⋯怖かったんだ。ははっ⋯そんなしょうもない理由だよ。」
紙のような音がする。
「彼の素性を調べました。裏の人間だと名乗っていたようですが、そのような事実は認められませんでした。入ってきた仲間たちも同様です。」
「⋯!?な、なんだって!」
「実業家というところは本当のようですが、彼は一般人です。⋯どうやらこの事件にはもっと裏があると私は思っています。」
「そ、そんな⋯私には何がなんだか⋯」
「安心してください。私があなたを守ることをお約束します。こちらを。」
「名刺⋯?」
「警察の友人と、弁護士の友人のものです。とても優秀な人たちですよ。」
「⋯」
「会社を守るために一生懸命に奔走された。私はそんなあなたを守りたい。ですからお願いします。どうか私にご協力ください。」
「⋯わかりました。恵守さん。よろしくお願いいたします。」
木之本社長は深く、私に頭を下げました。
ご精読ありがとうございます。
ご感想、お待ちしております。




