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第七十七話

 あれから4度の魔物襲来があった。全てユーリが瞬殺したが、王国軍は寝る時間を取れなかった。


 敵の魔法使いの技量は解った。Aランクの魔物を1度に30匹まで操れる。1度魔法を発動すると次の魔物を操るまでのリキャストタイムは1時間だ。1時間のリキャストタイムは致命的なんじゃないかとユーリは思う。しかし、ユーリは勘違いをしていた。通常Aランクの魔物30匹はSランクの魔物3匹分、これはもはや災害級と言って良いだろう。王都近辺で起こったなら騎士団総動員の上、冒険者ギルドからSランクパーティーを含むAランクパーティーが全員召集され、それでもギリギリ追い返せるかどうかと言う案件だ。瞬殺するユーリが規格外なのだ。1時間に1回災害級が押し寄せれば王都は2、3回の襲撃で沈むだろう。


 現に帝国軍の指揮官は何故砦が落ちないのか苛ついていた。魔物を操っていた魔法使いも魔力切れで動けなくなっている。


 そんな事になってると知らないユーリは、魔力回復ポーションがあれば、また何度でも仕掛けて来るんじゃないかと待ち構えている。


 魔物の来襲が途切れてからは兵士たちは交代で仮眠を取っている。ユーリも空が明るくなり始める頃、休みを取った。


 3時間程寝ただろうか、外の喧騒で目覚める。どうやら王国軍が砦の内側で集結しているらしい。


 急いでユーリも駆けつけると総指揮官のヘルムウッド辺境伯に声を掛けられた。


「昨夜は活躍だったようだな。良くやった。今日も同じ事が起こったら任せて良いか?」


「御意。魔物とそれを操っている魔法使いは任せて下さい。」


「頼んだぞ。」


 ユーリは魔物を操っている魔法使いを早めに捕獲するつもりである。流石に兵士と連携を取られたら死傷者が出かねない。


 9時を回った頃、帝国軍に動きがあった。3万程の部隊が進軍し前線を押し上げて来る。砦まであと3キロと言う地点で進軍を止める。これは良い判断だ。これで王国軍が焦れて砦から出れば帝国の勝利に繋がる。しかし、本体が動いていない。通常なら前線を押し上げたら本体も遅れて進軍してくるはずなのだが、まさか捨て駒?あるいは3万の軍と魔物で攻める気か?


 しかし、そのどちらでもなかった。3万の軍は動かず、魔物も現れない。ユーリは不思議に思い、サーチで本体を探ってみる。魔物を操れるほどの大きな魔力は感じない。では前線の3万の中に?そちらにも魔法使いらしき反応は無かった。


 睨み合いは続く。その間ユーリは魔法使いの反応を探り続けるが見つからない。流石に焦れたのか、幾人かの貴族が出兵を具申する。しかしヘルムウッド辺境伯は許可しない。大丈夫だ、この人にはちゃんと状況が見えている様だ。


 ユーリは壁の上に上り3万の軍を視認する。視認できればこちらの物だ。敵の軍隊の周囲を四角く囲い。ガイアコントロールで足元の地面を30センチ程液状化する。液状と言っても水の様にサラサラではない。粘土の様な粘り気のある液だ。帝国軍の兵士は足を取られ転ばない様に必死にバランスを取っている。沈み切ったのを確認し、液状化を解く。すると元の固い地面に戻り。兵士は足を30センチ地面に埋められた状態になる。たかが30センチだが、両足が埋まっていると抜け出す事が出来ないのだ。


 総指揮官の元へ行くとお前も進軍の具申か?と問われたので違うと答えた。


「前線の3万は無力化しました。面倒だから捕虜にするのはやめた方が良いですよ。あ、これから敵の本隊を偵察して来ますので一応警戒だけして置いて下さい。すぐに戻るつもりです。」


「確かに3万の捕虜は邪魔だな。まあ、好きにやれ。そう言う命令だからな。」


 ヘルムウッド辺境伯はどうやら有能な指揮官らしい。


 ユーリは視認出来る範囲で転移しながら帝国軍の本隊を目指す。3回転移した所で魔法使いの反応が幾つか現れる。どれも1万程度だ。どうやら魔法使いの質では王国より帝国の方が上らしい。しかし、1万程度の魔力では魔物を操るのは無理があるだろう。何処へ行ったんだ?魔物を呼びに?


 ここからは相手にもサーチの魔法があると仮定して、歩いて偵察に向かう。なるべく林の中を歩くようにしてサーチを掛けながら敵に見つからない様に隠密行動に徹する。この時点で敵陣まで1キロと言った所だろう。フライで飛べばすぐに視認できるのだが、こちらも見つかってしまう。


 どうしようかと考えていると、砦方面から走って来る人物を3人ほどサーチで捉えた。多分敵の情報部隊であろう。前線の3万が無力化された事を伝える伝令だと思われる。盗聴器でもあればなぁ。って魔法で何とかならないか?『賢者の叡智』を使うと遠くの音を収音する魔法があるようなので、それを獲得する。


 帝国軍の位置は解っているのでさっきの伝令の3人を追い。辿り着いた地点の音声を拾う。やはり3万の軍が無力化された事を指揮官に伝えている様だ。周りの兵士たちがざわめく声も聞こえる。その後も暫く聞いていたが、どうやら帝国軍の指揮官は怒りっぽい性格の様だ。なんでも昨日も1人魔法使いを剣で斬首したとか・・・それって、例の魔物を操る魔法使いじゃ?秘密兵器を1回のミスで切り捨てるとか、愚か過ぎるでしょう。なんか戦争やってるの馬鹿らしくなって来たぞ。


 ユーリはフライで浮き上がり帝国軍の本隊が視認出来る地点まで上がる。視認した瞬間地面を液状化する。今回は5センチほど水の様にと言うか水にする。そこへ弱目のサンダーを数発撃ち込む。7万は痺れて気絶した。スタンガンの要領だ。そのまま転移で砦に戻る。


 ヘルムウッド辺境伯に事情を話し、今日は敵襲は無いと思いますよと言って部屋で寝る。寝不足は良く無いからね。

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