第五十話
「まあ、書いたって言うか作ったって言うか、とりあえず3冊出来ました。」
「なによ、それ?」
「いいじゃん、商品は出来たんだから。とりあえず皆に3冊ずつ配るから時間のある時に読んでね。」
そう言ってユーリは皆に3冊ずつ本を手渡しして行く。
「問題は販売方法なんだけど、何か意見ある人。」
「私たち女性陣は下着を売る時に口コミを掛けるわ。そうでなくても下着が凄い勢いで売れてるから他の方法は男性陣にお任せで。」
「うわ~、丸投げかよ。イルミ酷いな。」
「ルーカスこそ暇でしょ?頑張って本を売ってね!」
「アルトはどうかな?何か意見ある?」
先程からアルトは本を読みたくて仕方ない様でずっと本を気にしている。ちなみに本の表紙と挿絵は劇画タッチのイラストにしてある。恋愛物だけ王道の少女漫画っぽい。本当は日本のラノベみたいなのにしようかとも考えたのだが、この世界では初めて物語に触れる人も多いのでやめて置いた。
「潜在顧客はかなり居ると思っています。なのでここは口コミが効果的ではないかと。」
「じゃあ、男性陣も口コミで行きますか。女性陣に負けない様頑張ろう!」
女性陣はマジックバッグに下着3000枚、シャンプーや石鹸などの小物、更に本を750冊程持って部室を出て行った。
対する男性陣は同じようにマジックバッグに男性用シャンプー等と本を詰め込んでまずは図書室へ向かう。ここで最初の口コミを掛けるらしい。
昼休み、部室に皆集まっている。ユーリが食事を用意して、それを食べながら会議だ。今日のメニューはチャーハンと餃子にしてみた。皆フォークで器用に食べている。ここのメンバーはライスにも慣れている。
下着は相変わらずの売れ行きを見せている様だ。今日は外部からの頼まれ物が多く10枚単位で売れて行くそうだ。
本に関しては女性陣は恋愛物が結構出て50冊、騎士物が5冊と言う感じだそうだ。男性陣は騎士物が一番多くて35冊、ミステリーが10冊、恋愛物が2冊と言った所である。
まだ、最初に売った本を読み切った者が居ないので明日以降の口コミ効果が期待される。
この世界にはマンガが無い、物語の本と言うのは日本人の小中学生がマンガを読むのと似た感覚だとユーリは思っている。だとすれば、口コミ効果が発揮されれば本を読む生徒は必ず増えるはずだ。アルトも潜在顧客数は多いと言っていた。娯楽の少ないこの世界である。『賢者の叡智』も同様の予測を出している。
今日はこのまま口コミ販売を続けて、放課後の会議は無しと言う事になった。結果は明日の早朝会議に持ち越しだ。
が、放課後に異変が起きた。女性陣がユーリの所に駆け付けたのである。
「どうした?今日は会議無いから帰って良いよ。」
「本が足りないのよ。恋愛物の本を100いや、200冊追加!!」
「え?250冊売り切ったのか?」
「とにかく恋愛物が人気で他の本も併せて買ってくれる人も多くて、預かった本は殆ど売り切れてます。」
「じゃあ、各500冊ずつ1500冊預けるよ。無くなったらまた言ってね。」
「了解!じゃあ私たちはもう少し売ってから帰るね。」
「無理するなよ~」
なんと言うか、予想外に娯楽に飢えている子たちが多い様だ。
翌日早朝会議で女性陣の話を聞いた男性陣は俄然張り切った。双方1500冊ずつ本を持って部室を出るのであった。
どうやら昨日本を買った者はその日のうちに読み切ってしまったらしい。口コミを掛ける間も無く向こうから声が掛かる。
「本を売ってるんだって?どんなのがあるんだい?」
「騎士物、ミステリー、恋愛物の3冊を現在は扱ってます。1冊銅貨5枚です。」
「じゃあ、騎士物とミステリーってのを1冊ずつ。」
こんな感じである。学院内をぶらぶらしてるだけでどんどん売れて行く。中には続編を希望する気の早い者までいる。
こうして放課後の会議までに実に3000冊近い本がほぼ完売となった。
これは、ほとんどの学生が2冊以上買って行くのと、外部へお土産用として購入する者が居る為である。この学院販売部の商品を外部に持ち出す行為はもはや伝統となっている。また、教職員が結構な数を買ってくれると言う事もある。
また、恋愛物は今までに無かったジャンルで、目新しさもありかなり注目を浴びている。中には学院外の友達や家族用にと同じ本を複数冊買って行く子も居る程だ。
「さて、本の売れ行きもだいぶ良いみたいで安心したよ。下着はどう?」
「下着も売れてるよ。今は外からの頼まれ物が多いみたいだね。」
「外部かぁ。何とか外部に販売する方法を考えないとね。」
「そうだね。学院内だとキャパが限られるからね。生徒が1000人、職員が200人で総数1200人じゃあ、最大売り上げ数もたかが知れてるからね。」
実はユーリたちがこんな話をしている時にある事件が起こっていた。貴族学院から校長宛てに1通の抗議文が届いていたのである。
内容はこんな感じである。
『魔法学院ばかりに画期的な商品が生まれるのは何故か?そして、何故それを魔法学院の中だけで独占しているのか?我々貴族学院にもそれらの商品を販売して欲しい』
要約するとこんな意味の抗議文だ。
校長は頭を抱えていた。




