第四十九話
翌朝登校と同時に皆部室に集まった。下着販売の最終チェックの為だ。
「昨日言い忘れてたんだけど、値段は何時もと同じく銅貨5枚で頼むね。それから幾ら伸びるからと言って1サイズって訳には行かないから、1サイズ上のサイズも1200枚追加しておくよ。デザインとか色はそのままだよ。こっちは上級生や教職員等の、ユーカ達から見てお尻が大きめの女性に販売して下さい。これでも対応出来ない場合は僕の所へ連れて来て下さい、オーダーメイドで作るから。オーダーメイドでも値段は一緒で良いよ。」
「解ったわ。頑張って売って来るね!!」
「あと、デザインや色の希望が有ったら聞いて置いてね~」
「「「は~い!」」」
と、女性陣は張り切って出かけたが、男性陣は手持無沙汰だ。
「さて、僕らも売れるものを考えないとね。」
「やはりリピーターが期待できる物は強いですね。」
「そうだな、口紅や鏡は今でも売れ続けてるからね。」
「別にそこは考えなくても良いと思うよ。ユーカみたいに自分が欲しいって言う理由でも構わないし。」
男性陣はどうしても女性陣のサポートに回りがちだ。それも、今回の下着の様な商品の時は役に立たない。
「杖なんてどうでしょう?ユーリさんが魔法が得意なのは知れ渡ってますし、売れるのでは?」
「あ~、僕は杖は使わない詠唱は無しって言う派なんだけど、大丈夫かな?」
「でも、今の杖より効果のある杖が作れちゃう?」
「まあね。」
「つくづく変わった男だな。知ってたけど。」
「でも、杖は百害あって一利なしなんだよね。まあ、一時的に魔力操作をしやすくは出来るんだけど、使い続けると魔力量が上がりにくくなるんだ。更に、杖に慣れていると実践で杖を無くした時に魔法が使えないって事態にもなりかねない。」
「へぇ、そう言うもんなんだね。」
と、無駄話をしているうちに授業の時間になってしまう。
「続きは昼に食堂で!」
どう言う営業を掛けたのか下着は売れまくっていた。昼休みも取れないほど忙しいらしく。食堂の昼の会議も男3人だった。
「なんか無力感に苛まれるなぁ~」
「まあまあ、腐らずに新商品会議続けよう!アルトは何か欲しい物とか無い?」
「欲しい物ですか?そうですねぇ~、本ですかね。」
「本?」
「図書室へは行ってみましたか?ここの図書室は貴族学院よりも立派なので有名なんですよ。蔵書も1万冊はあるでしょう。でもね、物語の本が極端に少ないんですよ。多分10冊も無いでしょう。それも子供向けの物ばかりで、大人向けの娯楽作品が1冊も無いんですよ。」
「ああ、確かに図書室は何度も利用しているけど、物語って言うのは見かけなかったな。」
「そうなんですよ。本は高価です。特に羊皮紙の物は庶民には手が届きません。そこで、学院に入って図書室へ行けば本が好きなだけ読めると期待してたんですが、結果は無残な物でした。」
この世界の本は高い。印刷技術が未発達な為全てが手書きだからだ。また、物語などの小説も普及していない。戯曲や劇の台本は書籍化されているが、物語は劇場で見る物と言うのが常識である。
「なるほど本かぁ、参考書は作ったけど、娯楽本はまだだったね。どう言う話が受けるかな?」
「やはり、舞台劇になっている騎士物や勇者の話が受けるんじゃないかと。」
「王道だね!恋愛ものはどう?」
「恋愛ものは女性に受けると思いますよ。ユーリさんは物語書けるんですか?」
「ん~、なんとかなると思うよ。」
「ユーリは何でもありだからな。」
「ルーカス、それはちょっと酷くない?」
幾らユーリと言えど、今すぐにパパっと小説は作れない。少なくとも図書室へ行って戯曲や舞台劇の資料を取り込んで地球の小説とすり合わせてこの世界に通じる話を作らなければならない。
「ん~と、1日欲しいな1日あれば多分物語3冊くらいはどうにかなると思うよ。」
「1日で3冊ですか?それは参考書みたいに紙の本で、安価で購入出来ますか?」
「もちろん、お約束の銅貨5枚で行きます。って言うか、アルトは読んでもいいけど、売る方も頑張れよ!」
「それはもちろん、面白い物なら売る気もアップしますので!」
その日は放課後に図書室へ寄り戯曲や舞台の台本、子供向けの物語等を『賢者の叡智』に詰め込んだ。下着はかなり売れたようで、2400枚用意した商品が殆ど無くなっていた。追加を要求されて3000枚マジックバッグに詰め込んだ。家に帰ると自室に籠り地球の名作と呼ばれる本や漫画、映画などを参考に王道の騎士物語。ミステリー物、恋愛物の3つの小説を考える。それぞれの小説を『賢者の叡智』でこっちの世界の設定に合う様に調節してから本にする。それぞれ500冊ずつ作った。売れ残ったら図書室にでも置けば良いだろう。とりあえず作品として通用するかどうかアルトに読んで貰おう。
(販売はどうするかな?口コミか食堂か?)
翌日も早めに学院へ行き部室で会議である。まず、女性陣の下着販売の状況を説明して貰う。
「下着は皆不満に思っていたらしくて、実物を見せると飛ぶように売れたわ。10種類全部買っていく生徒も結構いたわね。」
「あと、教職員にも人気で、若い先生だけでなく、結構な年の先生も買ってくれました。」
「キルケはどう?買う側から売る側に回った気分は?」
「うちも商会をやってますが、商品がこんなに凄い勢いではけて行くのは壮観でした。」
「昨日の段階で既に新色の期待の声も上がっていましたので、暫くは売れ続けると思います。」
女性陣は一夜明けても興奮冷めやらぬ様子である。
「まあ、一度穿けば元の下着には戻れなくなるわね。それだけ、今までの下着が駄目だって言う話だけどね。」
「OK、下着の話は分かった。今度は新製品の話ね。」
「新製品って、下着を作ったばかりなのに、もう次の商品が出来てるの?」
「これなんだけどね。」
テーブルの上に3冊の本を置く。サイズは参考書と同じB6判ページ数はどれも250ページ程度ある。1冊は騎士物語で、地球の物語をベースにこちらの世界観で書いてある。タイトルは「騎士王誕生」、2冊目はミステリーで「王宮殺人事件」3冊目は恋愛物で「プリンセスの初恋」正直ユーリの感性ではあちこち痒くなるタイトルだが、こちらでは小説が普及していないので、タイトルで内容が分かるようにしてある。内容は地球の物語がベースなので結構まともだ。
「この3冊の物語を売りたいんだが、売り方について何か意見はあるかな?」
「え?昨日の今日で3冊も本を書いたの?」




