表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

52/53

オーラス7本場:「あの日」の手役

「……終わりだな」


 軍星はそう呟きタバコを吸おうとしたところで、雀荘ではなかったことを思い出し胸ポケットにしまい込む。

 軍星が和了った手役。大七星(だいちーしん)

 人によっては麻雀の最高難度の手役と言う人もいる。

 もはや幻と言っても差し支えない手である。


「……すご。ボクもそこそこネト麻はやってるけど。初めて見た」

「うわぁ。マジかよ。そんな手、上がれんのかよ……」


 鈴木と河下があまりの珍しい手役に、思わず放心状態となっている。

 それだけ、この手は奇跡の手である。

 否、白崎舞が死した時に使われていた牌。因縁の相手との決着。

 ある種、運命といえるかもしれない。


「あぁ……、白夜様。役満ですか……。でも、しょせんシングル。まだ私は生きてますよ……」


 今、軍星たちが行っているルール――Aルールと呼ばれる――では、ダブル役満は「役の複合」でしか認めていない。

 つまり、「字一色」と「大三元」のように複合した場合はダブル役満と認める。

 しかし、「大七星」はあくまでも「字一色」の「七対子形」でしか無いという判定になる。

 故にただの役満となる。


「……えぇ、確かにそうですね。あなたを倒すためにはFルールのままであればよかった。でも、そうしなかった理由があります」


 軍星は静に、だが丁寧な口調で一色字美に語りかける。

 それに対して「……は?」という顔をする一色字美。


「ロン。頭ハネですね」


 中原みなみが牌を倒す。

 その牌は「中」と「南」の役牌2。

 南場の親である以上、和了する権利はある。

 この場面で普通はしないだけで。


「みなみ!? キミは何を考えてるんだ!! 六道教諭が和了で終了じゃないか」

「だぜ、中原パイセン。何やってんだよ!! そんなもんに意味なんか!!!」

「……そう、意味なんて無いよ。でも、()()()()から聞いたんです。い白崎舞さんは()()()()()()()()()()()()()()()()って」


 その言葉に妹である白崎静が反応する。


「……どういうこと?」


 地の底から聞こえるかのような静謐な声。しかし、確かに怒りがにじんでいた。


「一色字美が妹である一色清美に命じて、順位の変わらない和了をさせた。その時のルールで満貫振り込みの罰ゲーム。そのロシアンルーレットで白崎舞さんは無くなった。ほら、見てください。この牌。そのときの血がついています」


 明らかにドン引きしている鈴木と河下。

 対照的に、軍星へのわだかまりが氷解していく白崎静。


「六道……先生? 何で、言ってくれなかったんですか?」

「……俺が舞を守れなかったのは事実だ。お前にはそんな俺を恨んでいてほしかった。今でこそこんな雑魚の一色だが、当時は危険だったからな」

「先生、後でビンタ一発させてください。それで許します」

「……お手柔らかに」

「知りません」


 そんな和気藹々とする麻雀部。

 対照的に死屍累々としている一色率いる麻雀部。


「……白夜様。頭ハネ成立で良いんですよね。なら、続行ですよね。早くしてください。まだ、終わってないですよ」

「あぁ、そうでしたね。()()()()()()()()忘れていました」

「……びゃぁくぅやぁあああああああ!!!」

「うるせーよ。あと、息くせーから呼吸すんな。 ……悪いな()()()。こいつを片付けるぞ。お前の親番から続行な。もう少しだけ、この茶番に付き合ってくれ」


 軍星の挑発に面白いように乗ってしまう一色字美。

 普段であればこの程度であればスルーできるであろうが、冷静さを失っている。

 故に簡単に乗ってしまうのである。

 そして、勝負は冷静さを無くしたら負けである。


(で、対局再開は良いんだけどさぁ……。何これバラバラじゃん)


 第3トンまで持ってきた段階で刻子や順子はおろか、棟子すらみなみの手牌には存在していない。

 いわゆる「お祈り国士無双」を狙うにしても悲しい状態。

 また、「九種九牌」で流すには邪魔な数牌もいくつか混入している。

 要するに、凡手にすらならないゴミ。

 まさかのここに来て中原みなみ絶不調な配牌。


(せめて、4トンとチョンチョンで少しは勝負になる手になれば……)


 だが、その期待もむなしく4トンでは見事なまでにバラバラ。

 もはやどうしようもない不幸。

 だが、チョンチョンで奇跡は起こる。


「中原、その牌で一色を地獄に落とせ」

「分かりました。 ツモ。 『十三不塔(しーさんぷーとう)』です」


 白夜と中原が初めて共闘したあの日。

 鈴木純を救いに行った時に和了したその手で、今度は一色字美を――終わらせる。


「この牌で地獄に落ちてください」

恐れ入りますが、作品の評価をお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ