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オーラス6本場:北斗七星

遅くなりました。

――


 それはある日の記憶。


「軍星、知ってる? 北斗七星ってさ戦国時代は『軍星(いくさぼし)』って言って、武将たちが勝利の願掛けをしたんだって」


 穏やかな日差しの当たる部屋の雀卓。

 そこに向かい合わせに座る軍星と舞。

 牌を並べているところからすると、対局ではなく振り返りの検討をしているようだ。


軍星(いくさぼし)ですか。でも、それが何か?」

「自分の名前に関連した手役って、縁があるとは思わない?」

「縁ですか?」

「そう、縁。わたしだったら、『白』って入ってるじゃない? だから、大三元や小三元。後は単純に白の役牌なんかをついつい狙っちゃう。食い下がりもないからね」


 麻雀は運の要素が高いゲームである。

 いわば願掛けに近いが、自身の好きな手役、得意な手役を見つけて攻めていくのが上達の早道である。

 運というものは、運以外の要素を排除していく。

 そして最後に残った運をどうやって引き寄せるかというゲームである。


「でも、俺の名前に縁のある手役なんて無いでしょ。『軍星』なんて手役は無いですよ」

「ばーか。無いなら、勝手に思い込めば良いの」


 そう言うと白崎舞は卓上に散らばった牌を14枚集め、理牌し、倒す。


「軍星、いつか一緒に北斗七星を見に行こう。いつも私たちは夜、対局ばっかしてて見に行かれないからさ。引退する日が来たら、そのときに見に行こう」


 その「いつか」は永遠に来ることはなくなってしまった。

 しかし、いま軍星の手役にその北斗七星が宿ろうとしていた。


――


(みなみはまだ時間がかかりそうか。俺の手牌は牌がバラバラ。この局では決められないか?)


 順目は3巡。

 字牌の重なりにかけて、あえて老頭牌から切り捨てていた軍星。

 だが字牌がくっつく気配はなく、数牌も引けていない。

 無難に行くのであれば字牌を切り始め、低確率ではあるが流し満貫にかけてみるというのもありだろうか。

 軍星は「中」に手をかける。

 が、その手が止まる。


(軍星、その牌は切っちゃダメ。『役牌』を崩しなさい)


 脳裏に聞こえるかつて愛したものの声。

 それはもしかしたら、単なる幻聴なのかもしれない。

 それはもしかしたら、単なる思い込みなのかもしれない。

 だが、


(舞! 俺はお前に賭けるっ!!)


 六道軍星は「白」を切り捨てるっ!


(え、軍星さん。『白』を!? せっかく出来てる役牌をわざわざ? でも、何でそんな理解出来ないようなことを……?)


 そのとき、中原みなみに女の声が聞こえる。

 その声は中原にしか聞こえていないようだ。


(まさか、今のは白崎さん?)

(軍星は結構難しい人だけど、あなたたちなら大丈夫。とりあえず、この雑魚女をさっさと倒しちゃいなさい。 ……軍星のことをよろしく)


 中原は一色の捨てた9索をポンする。

 それは手役の進まない「意味の無い」鳴き。

 だが、それが一色を殺すための嚆矢となった。


「……一色、知ってるか? 麻雀の手役は4面子1雀頭。だが、その手役にはいくつか例外があるって」


 麻雀は同じ種類で3枚同一の「刻子(こーつ)」。連番の「順子(しゅんつ)」。それを4組と2枚同一の「対子(といつ)」をどれだけ早く、かつ点数の高い組み合わせを作れるかというゲームである。

 だが、それにはいくつか例外となる手役がある。


 代表的なものは「国士無双」。

 字牌の全てと数牌の1と9。それを全て1枚ずつに加えて、どれか一つを加えた手。

 次にあるのが「七対子」。

 これは「対子」を7組つくる手役である。


 そして、「七対子」に使用する牌に制限はない。

 ポンチーカンが出来ないということしか制限はない。


「は? 白夜様馬鹿なの? そんな常識!! 私たちに何の意味が!!!」

「……牌を倒してから揉めたくないからな。一応確認だ。ロン」


 軍星は自身の手を倒す。

 その手役は字一色。

 ただし、全ての字牌をを2枚ずつ使用する「七対子」型。


「……『大七星(だいちーしん)』だ」


――――


「ほら、軍星。この『大七星』。これを北斗七星に見立てちゃいなさいよ。そうすれば『軍星(いくさぼし)』っていえるじゃない?」

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