オーラス3本場:あの日の雀牌
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「で、軍星様。牌交換ですか? 別にかまわないですけど。そんなこと程度で私を倒せると思ってるんですか?」
一転して落ち着きを取り戻したらしく、口調が丁寧なものに戻った一色字美。
それを意図的に無視して軍星は二組の麻雀牌を取り出す。
傷が入り、所々赤黒くシミがついている牌。
「何、ガン牌ですか? ずいぶんと情けないですね。軍星様ともあろうものが」
ガン牌というのは麻雀牌に傷や印をつけることによって、どの牌が何処にあるかを把握するイカサマである。
麻雀牌136枚が透けて見えるも同然なので、軍星のような熟練者であれば容易に状況を把握できる。
だが、一色字美とて熟練者。
数局は耐えられるかもしれないが、どの牌にどのような印がついているかを把握してしまうであろう。
そうなれば、結局有利不利は溶けて消える。
「……お前ごときに、この牌は使いたくなかったけどな」
白夜は自嘲めいた笑みとともにつぶやく。
「お前には地獄など生ぬるい。無間地獄に落とす」
「軍星様。だから、その程度でこの私を倒せるとお思いですか? ずいぶんと私も舐められたものですね」
一色字美には勝算があった。
かつて茂索の元でともに麻雀を打っていたときから度々使ってきた牌の入れ替え。そしてもう一つのイカサマ。
今日までそれが見破られたことがなかった。
たとえイカサマを指摘されたとしても、言い逃れるだけの自信がある。
そうして、今日まで裏の世界で生き残ってきたから。
一色字美という女はそう言う女である。
「どっちの組も竹牌だ。だからよく血が染みこんだ。あの日、あの時の……」
そう言うと、軍星は自らの頬を叩く。
気合いを入れるかのように。
後悔を振り切るかのように。
そして、敵の一人を殺す覚悟を決めるように。
「舞の血がな」
その言葉で空気が凍り付く。
あの日、白崎舞が死んだ日。
あの日、一色清美が無駄な和了で舞を殺した日。
あの日、一色字美が一色字美に実行させた無意味な和了をした日。
その日に使われていた麻雀牌、272枚二組。
軍星はその牌を用いる。
一色字美を殺すために。
今、殺意に彩られた対局が始まろうとしていた。
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