南3局4本場:逆上の字美
「あなたたち、自分が情けないと思わないのかしら? 白夜様に負けるのでしたら仕方ないですが、あのような小娘たちに負けるとか恥を感じなさい」
丁寧な口調ではあるが、あきらかな怒りを隠せていない一色字美。
ある意味では仕方ないが、ある意味では自分勝手である。
わざわざ妹である一色清美を殺してまで部活を乗っ取った。
その結果が、このふがいなさである。
「うわー、六道教諭があんなんじゃなくてよかった……」
「というか、六道先生。私たちって強くなってるんですか?」
「静に『先生』って言われると違和感すごいな……。まだまだ甘いところはあるけど、なかなかおまえたちは強くなってると思うぞ。これで調子に乗らないで修行していけば、表の世界では負けないだろうな」
そう、わずかな期間ではあるが3人ともかなり強くなっている。
現状でもそのあたりの雀荘で、昼ご飯をフレンチのフルコースにすることができる位には勝てるだろう。
だが、それはあくまでも「表の世界」での話である。
愛憎渦巻く修羅の道ではその限りではないだろう。
「……白夜様。一つ提案があるのですがよろしいでしょうか?」
「よろしくないです。今日はありがとうございました。お互いの生徒がよい経験を積めたと思います。今後とも生徒たちの研鑽を行っていきましょう」
麻雀部顧問六道軍星として、対戦相手の学校へお礼の言葉を述べる。
だが、それが一色字美の気に食わなかったらしい。
「白夜様。そんなことはどうでもいいのです。私は、あなたを殺したいんです」
「……物騒ですね。冗談はそのくらいにしてお帰り願えますか?」
「……いやですねッ!」
そう言うが早いか、懐から銃を取り出し六道軍星の頭に突きつける。
「……字美。冗談はそのぶっさいくな顔だけにしておけ。じゃないと、おれもオマエを殺さなければならなくなる。銃を向けられて『ハイそうですか』って訳にはいかないからな。今ならまだギリギリ赦そう。 ……帰れ」
「死ね」
軍星は銃のスライド部分をつかみ、字美側へとスライドさせる。
自動拳銃はその構造上、スライドが後ろに下がっていると引き金を引くことができない。
そのまま、字美の腕を膝で蹴る。
痛みから銃を取り落としたので、蹴って中原へとパスをする。
中原は弾倉を取り外し、装填されている弾薬をスライドを動かして排出する。
人を殺すための武器は、その牙を抜かれ美しい工業製品となった。
「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね」
「……字美。そんなに俺を殺したいなら、麻雀で殺せ。その代わり、オマエが負けたら二度と俺たちに関わるな。それが約束できるなら、命をかけた麻雀を受けてやる」
「あははははははははははははははっ! 乗った乗った乗った! 高林だっけ? 高橋だっけ? まぁどっちでもいいわ! 卓に入りなさいっ! みんなゴミだけど、あなただけはマシなゴミだからっ! 使って差し上げますわっ!!」
狂人と言ってもいいだろう。
その執念。その感情。その、思い。
だから白夜はそれを真っ正面から受け止め、はじき返す。
「……中原。卓についてくれ。今この場で、こいつを終わらせる」
六道軍星の、白夜としての最後の麻雀が始まろうとしていた。
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