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南3局3本場:潜航の一撃

(中原さんはおそらく2~3シャンテン。この田中と中田は1シャンテンってとこかな。牌を切るスピードが0.2秒くらい早くなってきた。なら、私がやるべきことは……)


 白崎静は潜航する。

 それはまるで潜水艦。

 息をひそめ、気配を隠し、その瞬間を待つ。


「……チー」


 中田という生徒が「あまり意味のない哭き」を行う。

 それは白崎静の聴牌が近いと踏んでの、ソナーでの探知のようである。

 ゆえに中田はすでに手牌の中で完成していた役牌のみで和了する。


(んー、点数状況としてはそろそろ行きたいとこだけど……。中原さんはこの局は厳しいみたいか……。私が何とかするしかないってことか)


 ゆえに、ここで潜水艦は浮上する。


「立直」


 六道軍星から教わった立直の使い方。

 ここまで一度も和了らず、立直すらかけていない白崎静。

 ゆえに、中田と田中は舐めていた。


「一発です。倍満」


 かつての伊号第十九潜水艦のように複数の敵を一度の和了で打ち取る。

 唯一の違いは中原みなみも被弾したことではあるが、点数状況的に問題はない。

 今は亡き一色清美が指導していたのでそこそこは戦えるようだが、田中も中田もはっきり言って弱すぎた。


(……弱すぎない? それとも、それすら狙いなのか? わからない)


 困惑が白崎静を支配する。

 だが、すぐにそれを否定し考えないようにする。

 それは在りし日の姉、白崎舞に教わった事。

 困惑は身体と頭を固くする。

 だから、


「立直」

「すみません、白崎会長。それでロンです」


 中原が和了る。

 白崎静の読みでは中原の手牌状況は2シャンテン程度。

 まだまだ時間がかかると思い、自分が行こうとしたがそれを否定される。


(え……。私が読み間違えた?)


 仲間内で和了るというあまり意味のないことを行ったことで、中田と田中も困惑している。

 先の2人よりも感情を隠すのが下手なのはともかくとして、白崎静はその意図を理解する。


(……舐めやがって)


 それは「私の手を読めますか会長?」という言外の挑発。

 もはや私にとって、田中と中田は敵ですらない。だから、会長。遊びましょ? という事である。


「立直」


 だから、白崎静は攻める。

 浮上した潜水艦。

 その一撃は必殺の「清一色(ちんいつ)一気通貫(いっつー)平和(ぴんふ)一盃口(いーぺーこー)」。

 立直をかけているので裏ドラ次第では数え役満という大物手。


「ポン」


 田中が哭き、一発を消される。


「ロン」


 その田中の捨て牌で中田が和了する。

 どんなに強力な一撃も当たらなければ意味がない。

 ゆえに、どうやって当てるかというものを考える必要が出てくる。


(……甘い打ち方だと中原さんが和了ってくる。かといって、日和った打ち方はほかの人達に打ち取られる。どうする。どうする。考えろ、考えろ、考えろ)

「会長、番です。ツモって下さい」


 中原から思案の海に潜っていた白崎静へとツモの催促が行われる。


(そうか、わかった)

「すみません、発声が遅れましたが『チー』で」


 白崎静は一瞬浮上し、再び潜航する。

 一撃で敵を落とすことは理想である。

 だが、そんなことはできないことのほうが多い。

 ならばどうするか。


「ロン」


 相手が沈むまで攻撃を続ければいい。

 攻撃の機会を逃さず攻撃し、再び静かに潜航してしまえばそうそう沈没することはない。

 そして、潜水艦は静かに(ひそ)む。


(お願い、誰も哭かないで……)


 静かに潜む。


(後、2枚)


 手牌はバラバラ。

 だが、この状況でもたった一つだけ敵を打ち取る手段はある。


(後、1枚)


 手牌が3シャンテンに進む。

 だが、そんなことはどうでもいい。

 この「手牌」には関係が無いからだ。


(来た)


 白崎静は「白」を河へと放る。

 それはまるで、姉を殺したと思い込んでいた「白」夜への謝罪。

 それはまるで、死んでしまった姉である「白」崎舞への決別。

 それはまるで、新しい道を見つけたかのように「白」崎静は感じた。


「ツモを宣言します。流し満貫。田中さんと中田さんのトビで終了ですね」


 海底に潜ったまま、その一撃で敵を確実に沈める。

 それを活かすための「立直」という浮上。

 白崎静は強い。

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