南3局2本場:煽りの効果
「……東場終了ですね。一旦状況を整理しましょうか」
柳という生徒が提案する。
現状の点数は
鈴木 30000点
河下 2500点
柳 47500点
高林 20000点
となっている。
東4局で河下が柳に倍満を振り込んでしまい、その後のノーテン罰符で500点取り戻す。そして自分の親番で1000点のノーテン罰符を貰ったという状況。
はっきり言って状況は最悪に近い。
もはや振り込むことは当然できないし、相手の手役次第ではトンでしまう。
鈴木も下手に和了るとトバしてしまい、総合点で負けてしまう。
もはや説明をするまでもなく、詰み寸前である。
「……どうしますか? 降参していただいても構いませんよ」
柳が煽る。
だが、その煽りは「くっくっく」という笑い声にかき消される。
「はぁ~、いい子ちゃんごっこはやめ止め。めんどくせ~。そろそろ、本気出すっとすっか。鈴木パイセン、振り落とされんなよ」
河下がそれまでの「陰キャモード」から、「殺戮用浪漫砲台モード」へとスイッチを切り替える。
あまりにもキャラクターが違うので普通であればビビってしまうだろう。
だが、この人造人間のような奴らには効果が薄いようだ。
「あっれ~、ビビってんっすか~? ざーこ、ざーこ、雑魚雀士。もう、オレ様には勝てない。よわよわ~」
煽る。
だが、所詮煽りというものは強いものがやるので効果がある。
すなわち、柳と高林にはその煽りが効いていない。
否、舐めている。
それが致命傷となった。
「だーかーら、言っただろぅが!! ロンだよ雑魚」
河下が満貫で和了る。
これで10500点。
まだ危険ではあるが、即死は免れ得る点数となる。
「ツモだ。8000点」
点数が18500になる。
一度であれば跳満までは耐えられる。
だが、当然まだ満足はしていない。
「河下クン、ボクのことも忘れないでもらえないかな」
餓狼が役牌のみでツモ和了する。
柳が倍満を張っていたので、歯ぎしりをしている。
感情がないようであったが、確かに「怒り」を感じているようだ。
高林もおそらくダブロン狙いであったのだろう。無感情である様に見えるが、確かに怒りを覚えているようだ。
そして、怒りはミスを産む。
「あ~あ、そんな甘い牌を捨てちゃうんだ~。ロン。立直即断赤2」
あえて「一発」を「即」と発声しての満貫和了。
人によっては煽りと思うだろうか?
確かに煽りと感じているようで、無機質なロボットのような顔には確かな怒りが浮かんでいた。
そして、煽るのも技術である。
「ん-、ここはロンで」
卓に晒された1~3索の順子。それは和了に関係のない哭き。
役牌の後付け。
ルール上は問題ないが、これを蛇蝎のごとく嫌う人間もいる。
「……あなた、マナー悪いですよ?」
「はぁ? マナー? 馬鹿かな? 完全先付じゃない以上、問題ないだろが。それともなんだ? てめぇの言う『御大層な助言』とか言うのは、てめェの都合が悪いことを否定するためのもんか? あぁ!? どうなんだこのザコ?」
河下の行為はルール上何にも問題はない。
先ヅモや三味線、タメロン、引きヅモなどの一般的なマナー違反と言われる行為すらしていない。
ただただ、相手が勝手に不快に感じマナー違反という「いちゃもん」をつけてやめさせようとしているに過ぎない。
「……はぁ、飽きたな。終わらすか」
河下がそうつぶやく。
その手牌は神の祝福か、悪魔との取引か。
「ツモ。天和。あと、八連荘は……つけなくていいか」
煽りというものは弱者が行っても効果が薄い。
強者が行ってこそ効果がある。
そして、河下更江は強者である。
恐れ入りますが、作品の評価をお願いいたします。




