南3局5本場:字美の過去
「ふーん、で。今度入ってきた新人はどうなの? 使える?」
「清美さん。即戦力ばかり求めるのは間違ってますよ? 育てるだけの実力がない無能な会社だと思われてしまいますわ」
「和了超特急とか言うらしいけど、牌符見る限りだと安手速攻タイプ。でも、ここぞって時はきちんと高い手も作るみたい。結構戦うとやっかいなタイプかな?」
一色清美、一色字美、そして白崎舞が雑居ビルの一室に置かれた雀卓を囲み話し合う。
入り口から一番遠い席に白崎舞が座り、右に字美、左に清美という形。
「ふーん、まぁ所詮はネト麻雀士でしょ? 少し脅したら、びびって勝てなくなるんじゃねーかな?」
「清美さん。あなたの悪い癖ですよ? 人を嘗めてかかって、ハメられる。茂索さんにも指摘されていたでしょ?」
時は現在から、数年前。
まだ、六道軍星が「和了超特急」と呼ばれていた時代に遡る。
「茂索さんから『いっちょ新人の実力を見てくれ。で、誰が育てるかを決めろ』って言われてるんで、私たちで麻雀を辞めたくならない程度にボコボコにして良いってこと。一応言っとくけど、きよみん。彼、強いよ?」
「へー、舞っちっがそう言うって珍しいな。ってことは、久しぶりに本気だしても良いか」
「……清美さん。やり過ぎてはいけませんよ?」
茂索が造った麻雀の代打ちを専門とした会社。
そこに三人はいた。
数分後、六道軍星がその雑居ビルに現れる。
「へー、キミが茂索社長が見つけてきたっていうネト麻最強雀士『和了超特急』クンか~」
「すみません、白崎先輩。その名前ダサくて嫌いなんで、もう一個のあだ名の『白夜』にしてもらえませんか?」
「決して沈まない麻雀を打つから、気象現象の白夜になぞらえてそう呼ばれてるんだっけ?」
「そうです。そっちの方が格好いいから気に入ってるんですよ」
「舐めんな」
そう言うと、六道軍星に白崎舞はビンタをする。
(大丈夫でしょうか? このようなモヤシのような殿方で……)
だが、一色字美のその考えは数局後に改められる。
(この殿方、強い……!)
事前に聞き及んでいたとおりの早和了。
そして、それだけではない。
高い手を和了るべき時にはきちんと作り上げる。
見た限りでは、イカサマをしている様子もない。
純粋な実力。
(ああ、合点がいきました。配牌からのどのような手になるかを想像する能力がとても高いのですね。そして、それをつくりきる覚悟と実力。これは、清美さんでは厳しいですね……。本気になった舞さんや茂索さんでなんとか……ってとこでしょうか?)
軍星の本質を見抜いていたのは、一色字美だけであった。
それはタイプが似ているから。
故に、その実力に憧れた。
(この殿方を私のものにしたい……。それが無理なら、殺したい)
そして、憎んだ。
「白夜様、お別れです。私は、清美さんと別の会社へ行くことになりました」
「そうなんですか。ありがとうございました。字美先輩に教わった立直の生かし方、とても勉強になりました」
白夜、六道軍星の指導役となったのは白崎舞。
そこで確実に実力をつけていく白夜。
時が過ぎるごとに、男女の仲になっていく。
それが、一色字美には許せなかった。
(白夜様の実力に気がついているのは私だけ。なのに、単純に『実力があるだけ』で白崎舞ごときが……。あの、泥棒猫め……)
支離滅裂意味不明理解不能。
一色字美は――ー狂っていた。
その数ヶ月後、そのときは来た。来てしまった。
麻雀のルールを統一するための麻雀。
その関東代表として選ばれた白夜、舞。
それに立ち向かう敵として現れた一色姉妹。
「軍星この戦いが終わったら、一緒に北斗七星を見に行こう」
その白崎舞の言葉に一色字美はキレた。
(へー、眼中にないってことですね。 ……思い知らせて差し上げますわ)
そして、無意味な和了により行われたロシアンルーレット。
自身の狂気に当てて狂わせた妹に行わせ、自身の手は汚さない。
結果として、白崎舞は死んだ。
結果として、六道軍星に恨みを産んだ。
(あぁ……、軍星様。『恨み』で私のことを思ってくださる……)
一色字美は狂っていた。
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