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南2局7本場:三人の強者

(ボクの和了牌は12枚ある。ここは和了りたい)

(このオレ様は安手も役満も無理だな。この局は流しだなぁ……)

(立直は……かけずに行こう。手替わりか、ドラをツモったら即リーだな)


 完全にその実力が分かっている中原みなみを抜き、六道軍星。否、白夜が麻雀部部室に設置された卓に着く。

 状況は東2局2本場。軍星が親で左回りに鈴木、河下、そして白崎が卓に着いている。


「お前たち、この短期間で本当に強くなったな」


 白夜は六道軍星としての称賛を贈る。

 だが、六道軍星は白夜としての宣言を行う。


「だが、まだまだだな」


 そういうと、「東」の牌を切る。


(お、役牌ゲット。オレ様の手も進むか……。ここはノミ手でサクッと和了して、次局で殺しにかかれば良いか)

(……この状況で六道教諭が「東」を切る? 妙だな)

(ふーん、まだ手が出来てないか……)


 数順後、白夜が「赤5筒(あかうーぴん)」を切る。

 それを河下がポン。

 不格好ながら「役牌」のみの聴牌。

 三家とも聴牌の気配が濃厚。

 誰も立直をかけていないので、一見するとわからない。


「さて、これが戦い方ってやつだ」


 白夜は「3索」を切る。

 そして、「ロン」の声が鳴り響く。

 3人から。


三家和(さんちゃほー)。この局は無効だな」

「え」

「は」

「ふぇ?」

「他人の手を読み切れば、まったく勝負にならないゴミ配牌でもこうやって戦える。まぁ、運がなさすぎるから普通だったらあえてこんな低い確率で勝負はしなくてもいいけどな」


 暗に「お前たちは弱い」と伝える白夜。

 確かに数日ではあったがものすごく麻雀部のメンバーは強くなった。

 普通の雀荘に行けば出禁レベルである。

 だが、一色清美や、一色字美。その世界は「普通」とは解離した世界。

 その世界で勝つためには「異常」である必要がある。


「さて、殺すか」


 まるで、「今日のお昼はかつ丼にするか」くらいの気軽さで発せられた言葉。

 現実感がない。

 異常者。

 その言葉が似あう。


「ロン」

「ツモ」

「ロン」

「ロン」

「ツモ」

「ツモ」


 これが白夜。

 かつて「和了超特急(ほーら―えくすぷれす)」と言われた、超高速和了。

 手役の高さや安さは気にせず、とにかく早和了。

 誰にも和了らせないことにより、勝つ。

 できれば世話がないという勝負の仕方ではあるが、それをやってのける。

 それが「白夜」という男である。


「……まるで魔法じゃないですか。六道教諭」

「魔法じゃない。言っただろ鈴木。すべての牌を把握しろって。これがお前の目指すゴールだ」

「……は? アンタ全部これを?」

「あぁ、お前の姉はやってたぞ。お前の姉に仕込まれたからな。ツモ。八連荘」

「これが……」

「河下、わかっただろ。安い手での役満がこれだ」


 自分が親番の時に8回連続で和了する。

 それが「八連荘」という手。

 たったそれだけではあるが、それであるが故に難しい。


「……できりゃ世話ねぇよ」

「川下、いいか? できるかできないかじゃない。やるかやらないかだ」

「……おねぇちゃんって、すごかったんだ」

「あぁ、もしも俺が今一番戦いたくない相手はって聞かれたら、確実におまえの姉と答える。ちなみに2番目はシゲさん。俺とおまえの姉がいた会社の社長。3人目がそこにいる中原みなみかな?」


 軍星を除く三人の目が中原みなみへと集まる。


「ぐ、軍生さん? 何言ってるんですか?」

「事実だ」

「え、みなみ。キミはそんなに強いのかい?」

「はぁ? このギャルパイセンがそんなに?」

「信じられないなら戦ってみればいい。だが、中原は強いぞ?」


 そう言うと軍星は席をみなみへ譲る。


「中原、一つだけアドバイスしてやる。一色清美を相手にしていると思え」


 日本刀はその鍛錬で何度も折られ、打ちのめされ、その強度を増していく。

 中原みなみは先の()()との訓練、一色清美や一色字美との戦い、六道軍星という人間を探すための雀荘めぐり。その過程で何度も心を折られ、砕かれ、打ちのめされてきた。

 ゆえに、もはや折れる事のない一振りの強靭な刀の心を手に入れている。


 もはや普通に戦った場合に、中原が巻けることは困難であろう。

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