南2局5本場:浪漫の大砲
「で、どうしろって? このオレ様が人の指導を受けてやるんだから、下らねぇこと言ったら金玉すりつぶしてブタに食わせるぞ」
河下更江はいわゆる「整えれば美人になるであろう、陰キャ女子」という風体である。
だが、麻雀のことになると性格が変わる。
軍星ですらドン引きする。なお、茂索に軍星が話したところ大爆笑していた。昔のワシみたいだと。
「あー、河下……さん? あなたは、常時役満狙いですよね?」
「麻雀やる以上、役満以外狙ってどうすんだ。そんなケツ穴キツキツなことやってもしゃーね―だろ。どんなに負けてても、その一撃が決まれば一発逆転大勝利ってわけよ。 ……って、すすすすすすすみません! わ、私!!」
「……いや、性格変わる人は結構見てきたけど。ここまでのは初めてだ」
「うゆぅ~」
普段の性格と見た目、それは庇護欲をそそられる。
だが、麻雀を始めると性格が変わる。
「……だから、逆に河下さんはそれを活かした戦術をとってみたいと思うんだ」
「うゆぅ?」
「『ワザと』素人っぽい行動をして、言動も麻雀をしていないときを意識して発言してほしい。で、いざって時に」
「……なるほどな。要するに、『意味わかんない素人が実は役満を打ってきました。バーカバーカ』ってことか? なんだそのラノベ主人公みたいなもん。面白そうじゃねーか」
正直六道軍星はそのテンションについていかれず、「こいつどうしたらええねん……」となっている。
麻雀はその人間の本質が露わになる物である。
「あとは、一回くらいの役満だったら『た、たまたまですよ。たまたま……』みたいなテンションにすれば……」
「なーる、『馬鹿め。まぐれや偶奇で役満が出るか。狙ってたんだよ』って言えるわけか。おもしれー」
麻雀というのは「得体が知れない化け物」という人間が時々存在する。
その人間を認識したときには手遅れという事も多い。
つまり、常人のフリをした狂人。
それが麻雀を打つときにはかなり怖い。
「なら……、こ、こんな、感じですか?」
おぼつかないような手つきで牌を河に置く。
先までの乱雑に投げ捨てるような打ち方とは180度違う。
まるで麻雀を覚えたてのように見える。
「河下、上手いじゃないか。麻雀が下手な振り」
「は、はい、だって、普段どおりの演技をすればいいんですよね。ここ、一応お嬢様学校なので、おしとやかな振りをしてるんです、で、でも本当は」
「あー、麻雀を打つと性格が変わるんじゃなくて、麻雀を打つときに本性が出るのね」
「いや、ちげーよ。麻雀の時だけは取り繕うのをやめてんだよ。役満狙えねーだろ」
「あ、そうなの……。なら、もう一個面白いこと思いついた。河下、お前ワザと安い手を和了ってみる気は無いか?」
その発言を受け、河下は――キレた。
「あ゛ぁ゛? このオレ様に1000点そこそこをしろって言うのか? ふざけるな」
「ふざけてなんかいないさ。もちろん意図はある」
役満というのは例えるのであれば、一撃必殺の大技。
当たれば当然強い。
だがそれだけでトドメを刺せるかというと、決してそうではない。
例えるのであれば日本刀での斬り合い。
相手の急所を貫く一撃必殺が役満としたら、じわじわとした切り傷を与えて失血により生命を終わらせるのが安手の役目。
そして、麻雀には一つだけ。
採用率は低いものの、安い手で役満となるルールが存在している。
「…………ははははは。お前、かわいい顔してるくせに、えげつねぇな」
「そうやって俺は裏の世界で生きてきたからな」
「……わかった。お前の話にのってやろう。だから今日はもう帰らせてもらう。ネト麻で練習してみるからなぁ!」
凶悪な一撃を活かすための、小技。
それを身に着けた時、河下更江は恐ろしい人間となるだろう。
おそらく、誰にも止められない……。
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