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南1局1本場:顧問と殴打

「……軍星さん、麻雀部の正式申請却下されました」


 麻雀部(仮)の部室で六道軍星は中原みなみから、そう報告を受けていた。

 まぁ、そうだよな。

 大福を食べながら軍星は考える。


 この学校はいわゆる「お嬢様学校」と呼ばれる学校である。

 そのため、「本校の品格を落とすようなギャンブルを主体としたものは認められない」と却下されるのは分かり切っていた。

 ましてや六道軍星は臨時職員から正規雇用に移ったばかりである。

 言ってみれば「右も左もわからない先生を顧問に据えようとしている」と学校側に見られて、許可が下りにくくなることはある意味で当然である。


「良いか、みな……中原。こういうものは『大義名分』っていうものが無いと、頭の固い連中(おえらいさんたち)っていうものは納得しないんだ」

「……大義名分、ですか?」


 天板をひっくり返してフェルト生地が張られた面を上にしたコタツに突っ伏したまま、中原は顔だけあげて軍星の言った「大義名分」という言葉を繰り返す。

 その形の良い胸が天板に押し付けられて形を変えている。


「そうだ。ぶっちゃけどんな理由でもいい。例えば…… 『現在、麻雀はかつてのギャンブルというイメージから、競技としての側面が強くなってきている。また、交流という面も持つようになってきている。ゆえに、社会に出る前に基本的なルールを身に着けておく必要がある』とか。 ……まぁ、なんでもいいんだ。」

「……なんか面倒ですね」

「しゃーないだろ。それが社会ってもんだ」


 六道軍星は社会人としての経験は茂索の元での「代打ち」としての経験しかない。

 だがその対戦相手は超一流企業の人間から、その辺のゴロツキみたいなものまで多岐にわたる。

 しかも、基本的にそのすべてで勝たなければならなかった。

 実践を通じて社会のルールを学んできた。

 ある意味で「たたき上げ」と言える経歴なのである。


 なお表向きには「前職は人材派遣会社社員」という肩書になっている。

 依頼を受けて、派遣されて、勝負に勝ってくる。

 何も間違っていないが、何もかも間違っているような気がするのは気のせいであろう。


「……あと部員ですよね。基本的に4人いないとダメなんですよね」

「鈴木さんは確定で良いだろ? となると、あと二人か」


 校則で部活として活動するための最低限の人数が定められている。

 もちろん、それを満たさずに「同好会」として活動するのであれば問題ない。

 だが、交流試合や大会出場のことを考えると「部」という形をしている方が都合がいい。


 と、話し合っていると「麻雀部(仮)」の部室へ鈴木純がやってくる。

 その後ろには、黒ぶちの眼鏡をかけた小柄な女子。黒い髪の毛を姫カットにしている。胸元のリボンの色からして1年生であろう。ちなみに胸の大きさは控えめである。


「やぁ、みなみ。それと六道教諭。入部希望者を連れてきたよ。ほら、自己紹介して」

「一年の河下更江(かわしもさらえ)です。昔から麻雀に興味があって、やってみたかったんです。経験はありませんが、もしよろしければお仲間に加えさせていただけますか?」

「あぁ、ちなみに河下にはきちんとこの部のことは説明してある。まだ発足すらしてないけど、それでも良ければってね」


 これにて麻雀部(仮)は部員が3名に顧問が一人。

 あと一人部員が入部すれば最低限の体裁だけは満たせる。

 あとは、創部に当たっての大義名分をつくれば良いだろう。

 そう軍星、白夜が考えていた時だった。


 突然、麻雀部(仮)の部室扉が外れるのではないかという勢いで開けられて、一人の女子が入ってくる。


「生徒会長、どうしたんですか?」


 中原みなみに生徒会長と呼ばれたその女子。

 しかし、その呼びかけを無視して白夜の前に立つとその頬を叩いた。


 先ほどまで、部活として発足できるのではないか。

 そういう、ある意味で「緩んだ空気」に支配されていた空間。

 それが一瞬にして張りつめる。


「アンタが、六道軍星ね。アンタのせいで。アンタのせいでっ!! 私のお姉ちゃんはっ!!」


 白崎静(しらさきしずか)

 

 白夜が守れず、喪ってしまった最愛の女性。白崎舞の妹。

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