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南1局0本場:軍星の苦痛

第2部開幕します。

 六道軍星。

 彼にとって、朝というものは一日の中で一番苦痛な時間である。


「……ねみぃ」


 晴嵐女学院の教員になるまでの白夜は、好きな時間に起き、好きな時間に食べ、好きな時間に麻雀を打ちに行く。

 その自堕落な生活の合間に、白崎舞に仇を取ることを考えて生きてきた。

 教員となったために朝7時には遅くとも学院についていなければならない。

 朝が弱くなっている軍星にとって、それは何よりも苦痛であった。


「……うわぁ、もう時間ねぇじゃんか。朝メシは抜きだな」


 倉庫に突撃して破損していた車が修理から戻ってきたのが昨日。

 それまでは徒歩での通勤であったため、そこそこの時間がかかっていた。

 ゆえに、朝の6時には家を出なければならなかったが、30分程度の余裕ができるというものはその心理的に大きい。

 とはいえ、朝ご飯を取れないというのはキツイ。

 幸い、晴嵐女学院は朝の7時30分から購買が開かれているので、1時間目に授業が入っていなければ軽食程度はとることが出来る。


(カツサンド、あると良いんだけどなぁ……)


 軍星は一見するとそのからだつきは細身である。

 ともすると、その白髪が混じった髪の毛によって病弱な印象を受ける。

 だが、見た目に反して食事はきちんととるし、睡眠もしっかりととっている。

 大人ではあるが、健康優良児と言ってもいいだろう。


――――――

――――

――


「……では、教科書の38ページを開いて。今日は表計算ソフトを用いたアンケートの集計方法だ。これは、社会に出ても役に立つ場面が多々ある。ぜひ覚えておくように」


 その授業は学院生たちからは大体高評価を受けている。

 それまでの情報科の授業は、数学科の教員が掛け持ちをしており本業ではなかった。

 だが、軍星は自身の麻雀の成績をパソコンで管理している。

 ゆえに、最低限のオフィス系ソフトは使うことが出来る。

 これも白崎舞に仕込まれたものである。


(いい、軍星。これからはパソコンで成績も管理したほうが良いよ。もちろん、紙にも利点はあるけど電子端末で見られる方が便利なこともあるから)


 そう白崎舞は生前に言っていた。 

 軍星も、白夜に名を変えたことからそれに従って実行している。

 もちろん、紙ベースでも保存しており時間が出来た時には白崎舞の記録を読み返している。


「せんせー、しつもーん」


 軍星が一通りの説明を終え、演習に入る。

 この学院では一人に1台ずつパソコンを配るのではなく、パソコンを複数台おいた専用の演習室が準備されている。

 管理や空調の都合で丁度良いために、軍星が空き教室を学院側との交渉で改装。

 パソコン自体は幸いにも出入り業者に在庫があったことと、学院の予算が残っていたことで調達。


 中原みなみに手伝わせて、配線や初期設定を行ったのが1週間前。

 そして今日が初使用である。


「どうした、中原?」


 やや言葉遣いが荒いのも、いわゆる「お嬢様生活」が長い学院に通う者たちから好評。

 そして、とある無免許医のように白髪が混じった髪がミステリアスな雰囲気を出しているのが、人気がある根拠の一つとなっている。

 それはまるで、研ぎ澄まされたナイフのような冷たさと恐怖が同居した美しさ。

 ある意味で「温室暮らし」である少女たちには、「格好良く」見えているのであろう。


「コレ、よくわかんないんですけど~」

「えーと、あぁこれはだなぁ……」


 情報科教師、六道軍星。

 それが今の、白夜。六道軍星の仕事である。

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