東2局5本場:接吻
「いったーーーーーーいっ!!!!!!!!!!!!」
「……ガラスに飛び蹴りなんかするからだ」
白夜さんにガラスで切った足を消毒してもらい、包帯を巻いてもらう。
「……あまり深くはキレてないから、縫わなくてもいいがしばらく痛むぞ。この馬鹿が」
「だって、こうでもしないと白夜さん、いや、軍星さんは中に入れてくれないでしょ?」
私がシャワーで血を洗い流している間に、白夜さんが段ボールで応急修理を終わらせていた。
シャワーから出たら、女性ものの服が置かれていた。
「……とりあえず、お前のタイツはダメそうだからこっちで処分しておく。制服は洗濯してやってるから、乾いたらそれに着替えて帰れ」
「もしかして、この服って?」
「……舞のだ。逆に、俺のだったら怖いだろ」
緑色のオフショルダーニットに、黒のショートパンツをはいた白夜さん。
悪くない気がするけど……。
「……それよりもどうしてこの家が分かった?」
「シゲさんに聞きました」
「……シゲさんも余計なことを」
頭を抱える軍星さん。
「それよりも白夜さん。この人が」
「……あぁ、舞。白崎舞だ」
私は仏壇に飾られた写真を見る。
そこには一人の女性。銀髪に青い瞳。服装は遺影だからか、喪服に修正されている。
語彙力がショボい私ではうまく言えないが、すっげー美人。すっげー頭わるそうな言い方だけど。
目を引くのはお供え物として備えられている大福。一個や二個ではなく、山のように盛られている。
その目線に気が付いた軍星さん。
「……舞は大福が好きだったんだ。いつも対局を始める前に食べていた。だからそうして供えてる」
「……教えてもらえませんか? 舞さんのこと」
軍星さんの目を見つめて問いかける。
1秒、2秒、3秒。
不意に、軍星さんが目をそらそうとする。
だから、その顔を掴んでキスをする。
4秒、5秒、6秒。
そのまま、たっぷり1分は経っただろうか?
私は口を離す。
二人の間には唾液が糸をひいている。
「……中原、お前」
「言ったでしょ? 私は軍星さんの彼女になりたいって。これがその証拠です」
白夜さんの目をしっかりと見つめて、決してそらさない。
彼女になりたい、隣に立ちたい。
そして、一生を共に生きて生きたい。
その意思が伝わるように……。
「…………はぁ、俺の負けか。わかった、わかった。お前に話してやるとしよう。舞のこと」
白夜さんがついに折れる。
「……まぁ、お前も一色に出会ってしまった以上、当事者になってくるからな。自衛のために知識を持っておくことは大事だろう。 ……この部屋だと、外の音とかが気になるだろ? 麻雀部屋に行くぞ。あそこなら完全防音だからな」
白夜さんに連れられて、麻雀部屋へと移動する。
「……え、なんでこんなものがこんなところにあるんですか?」
そこにあったのは、「者」が「物」に代わってしまった「モノ」。
人を火葬した後の遺骨を納める入れ物である――骨壺。
「……舞は、家族が居なくてな。墓も立ててやることが出来ないから、こうしてここに居てもらっている。 ……怖かったら帰ってもいいぞ。シゲさんに頼んで護衛をつけてもらうからな」
その白夜さん、いや軍星さんの問いかけに対して私は否定の意思を表す。
「いえ、舞さんのことをお聞きするんですから、ご本人に居ていただいた方がいいんじゃないですか? ……本音を言うと、少し怖いですけど」
「……わかった。なら、俺と舞の出会いから話すとしようか。こういうことは一番最初から話していく方がいいだろうからな」
そして、軍星さんは自らの過去を語り始めた。
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