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東2局2本場:逃走

「……何とかまいたか」


 俺は何処とも知れない雑居ビルに中原みなみと共に逃げ込んで、息を整える。

 一番危惧していたことが起こってしまった。

 一色清美は性格が終わっている。

 他人の嫌がることを自ら進んで積極的に行う。

 こういうといいことのように聞こえるが、ベクトルは180度真逆を向いている。


「……白夜さん、あの人が?」


 中原みなみは震えていた。

 今までに感じたことが無いであろう「悪意」に当てられた。

 それにより、今までに感じたことが無いであろう「恐怖」を味わったためだろう。


「……あぁ、()()が『一色清美』だ」

「……なんなんですか、あの人は。まるでドブよりも濁ったような目に、人が苦しむ顔が好きって何なんですか。 ……むしろ、()()()()()()?」


 中原みなみの言いたいことも分かる。

 ()()はもはや人の形をした悪意。

 ()()はもはや人の形をした災害。

 ()()はもはや人の形をしただけの……。


「……あぁ、アレが人間らしい感情を持っていたなら舞は死ななかっただろうな」

「……白崎舞さんでしたっけ? 結局、何があったんですか? お亡くなりになったっていうのは白夜さんからも、茂索さんからもお聞きしたんですけど、どうして亡くなったかは……」


 一色清美のターゲットはおそらく俺だろう。

 その俺が苦しむ顔を見るためであるのであれば、あいつは中原みなみを利用してくるに違いない。

 つまり、もう話したほうがいいのかもしれない。


 ……いや、まだ間に合うか?


 もし、まだ間に合うのであれば中原みなみを一色清美から守るためにも……。


「……俺と、お前は今日のデートで終わる関係だ。だから話すつもりはない。これで終わりだ」


 だから俺は逃げた。

 その逃げ出した先が、たとえ無明の闇だとしても。

 あとには呆然とした姿の中原みなみが残されているが、その姿を見ないようにして……。


□■□■


「嬢ちゃんじゃないか? こんなところでどうした。今日は、白夜の奴とデートじゃなかったか?」


 白夜さんが去った後を見ていたら、茂索さんが雑居ビルのエレベータから降りてきた。

 漫画に出てくる暗殺者のようなスーツを着こなしていて一瞬分からなかったけど、声を聴いて確信した。


「……一色清美に会いました」


 茂索さんは持っていたアタッシュケースを落とし、私の肩を掴んで激しく揺さぶりながら問いかける。


「どこだっ! あいつは……、あいつだけはヤバい。ワシや白夜であれば()()が出来ているが、嬢ちゃんは関わっちゃならない。 ……いや、もう遅いか」


 茂索さんは私の肩から手を放し、落としたアタッシュケースを拾う。


「……いつもの食堂はなおか。いや、そこも危険だな。 ……ワシの事務所が一番安全か。嬢ちゃん、ついて来いっ! 嬢ちゃんのことを一色に知られたなら、もはやこの国に安全な場所は無いが、多少はマシじゃろっ!!」


 茂索さんの車に乗せられ、私は茂索さんの「会社」へと連れていかれた。

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