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半亜人(ハーフ)と共に行く精霊世界ーエスティールに吹きあがる炎  作者: 水素(仮名)
第16章 流血の6月
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16-10 万骨達の復讐


 

― 天精の年、6月14日 朝



 ファーマーン軍との会敵をまじかに控えたガイアスの元に、とんでもない情報が入り込む。

 

「チェザレアとルジェが生きており、私を倒すための兵を募っている?……何者かが名を騙っているだけではないのか」


 確かに一昨日、奴らはあの地下運河で焼け死んだはず。

 

 今だ彼には、処刑にかまけている内にアナーリによってちゃぶ台を返されたという真相を理解出来ていなかったのだ。

 

「考慮する必要はない。このまま会敵せよ」


 ガイアスは共和国軍を戦場へと進めた。

 

 

 軽装のファーマーン軍がドゥネ=ケイス共和国軍の前に現れたのは、午前10時の事だった。

 

 ガイアスは本陣を、戦場に設定した荒野から小川をまたいだ500メー後方に置き、戦闘の直卒を図る。

 

 共和国軍は装備に優れ、数的には5日間戦争当時と同等の総計3万人。ファーマーン軍もまた同数だったが、装備の統一性、充実度の面は大幅に劣った。今だファーマーン軍は軍制、戦闘技術の面でもバイハラ式に改変中であったのだ。

 

 ファーマーン軍からは魔法の炎が、共和国軍からは大砲の砲撃が開始され、戦場が形作られた。

 

 耳をつんざく大砲の発射音に、ガイアスは気分を高揚させる。

 

 縦列に並んだ両軍は、ガイアスから見て左翼から衝突するが、装備と練度の差は明らかだった。

 

 統制の取れていないファーマーン軍が先に手を出してきたのに対し、共和国軍は多少の犠牲をものともせず前進を続け、装填中のファーマーン軍に対して40メーの距離で停止、一斉射撃を浴びせる。

 

「見ろ、もう敵右翼が崩れたぞ!」


 ガイアスはご満悦だ。

 

 10:20。崩れたファーマーン軍左翼に対し、ガイアスは更なる圧力を掛ける為予備兵力の投入を決定。

 

 こうして、彼の近辺には共和国親衛隊の600名しかいない状態となった……

 

 

 状況が動いたのは、10時半の事だった。

 

 エアブレードの魔法が、共和国親衛隊の前面に直撃する。

 

「な、何だ!?」


 小川を利用して転移器を用いた、奇襲だった。

 

 それと同時に、先ほど出撃させたはずの予備兵力4000人が何故かガイアスの方へ向かって転進してくる。

 

「ま、まさか……」

 

 共和国軍は、真の国家の敵に対して、その銃を向けた。

 

 

「共和国軍の射撃に応じて突入ッ!!」


 転移してきたのはルジェを先鋒とした元同盟突撃隊員、総勢50名。

 

 憲兵隊の粛清リストに載り、軟禁されていた各地の駐屯兵を、ルジェが救出してかき集めたものである。

 

 そして、

 

「久々の戦場、腕が鳴りますね」


 アナーリも突入部隊の戦列に加わり、

 

「全く……」


 チェザレア自身も、少数の護衛と共にそれを援護していた。


 ルジェの短剣ダガーが唸り、槍を突き出そうとした憲兵隊員を一人、また一人と仕留めていく。

  

「雑魚にかまうな、狙うはガイアスの首一つだッ!!」


 ルジェの突進を止めようとした憲兵隊員を蹴飛ばしつつ、彼は兵士達に檄を飛ばす。


「そうか……最初から、軍にも図られていたのか……!?」


 ようやくガイアスは気付いた。全てはこの状況に自身を追い込むための茶番だったという事に。ルジェとチェザレアの生存を知っていて自分に喋らず、こうして戦場へとおびき出して仕留めるつもりだった事に。

 

「ふふ、フフフフ……」


 それは嘲笑だった。自身と相手、双方の不明に向けた。ガイアスが敵の作戦を見抜けなかったのは確かに落ち度だ、それは認める。しかし、……敵も自分、『ガル=ディ』を見余っていると見えた。


「ガイアス、覚悟ッ!!」


 彼を守ろうとする黒服の憲兵隊員たちを押しのけ、ルジェとアナーリがガイアスの元へ迫る。

 

「人間風情が、この『ガル=ディ』に覚悟だと……身の程を知れ」


 遂に、ガイアスがその正体を現した。その長身が突如二つに避け、中から巨大な肉の塊が現れる。

 

「ルジェ君離れて、顕現に巻き込まれますッ!!」


 アナーリはルジェの服を掴み、そのまま肉の塊に巻き込まれるところだった彼を引っ張り出す。

 

 そのような保護のない憲兵隊員たちは、そのまま膨張し続ける肉塊に次々と飲み込まれていった。

 

 肉の塊は膨張を続け、憲兵隊員たちをあらかた飲み込んで直径20メー程になると突然宙に浮いた。

 

 肉塊の内部から羽……鳥の羽のようなものが次々とでたらめに生えていく。そして鳥の頭……鷹、鴨、雀、鴫、鵜、ペリカン、フラミンゴ……

 

 ありとあらゆる長さ1メー程に巨大化した鳥の頭が肉塊を覆っていく。

 

「何て禍々しさ……」


 不意に、風切り音をうならせ、肉塊本体からピンク色の筋組織のケーブルで繋がれた鷹の頭が彼らに襲い掛かる。

 

「チイッ」


 ルジェはそれを回避するが、肉塊、『ガル=ディ』の本体はその隙にルジェ達の上空を通過する。鷹の頭はそのまま本体へ戻っていった。

 

 

― 刹那、ルジェの脳裏の恐ろしいビジョン、直近の未来が映し出される。既にそれを防ぐ手段はないのに、見せたのだ。万骨達は。



「チェザレアッ!!」


 彼らの後方、『ガル=ディ』の向かった方向にいた人物に対して、ルジェは叫ぶ。

 

「分かってるわよ、ラ=クラウレ……!!」


 呪文詠唱をする間も無く。

 

 

 次の瞬間、ルジェの脳裏のビジョン通り、ペリカンの頭が風切り音をうならせ、チェザレアを丸のみにした。

 

 

 ルジェは短剣ダガーでペリカンの頭と本体をつなぐ筋組織を断ち切ろうとしたが……

 

 彼の刃が届く前に、ペリカンの頭は本体へと収容された。

 

 

 ルジェは、短剣ダガーを放り出し、項垂れる。

 

 

「……これが、これが……お前たちの復讐だってのか、名も無き魂たち、名を残さず朽ち果てた万骨達よ……」

 


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