第21話
「アレックス! シェリー!」
「ルイ! ルイじゃないか!」
「ルイ……!」
翌日、思いがけずルイがやってきた。レイラ同様、彼と会うのは結婚式以来はじめてだ。
「レイラが来なかったかい? 急にシェリーに会いに行くと言って、帝都へ出掛けたきりなんだ。心配で、来てしまったんだが……」
思わずアレックスと目を見合わせてしまった。ギャツビーとレイラのことをどう説明すればいいのだろう。
「ルイ、長旅で疲れたろ? とりあえず入れよ。レイラは今日、我が家に来る予定だ。うちで待つといい」
「ほんとかい? それは助かる。アレックス、ありがとう!」
ルイは相変わらずの好青年で誠実そうな瞳をしていた。レイラってば、こんな良い人を裏切るだなんて。
「ハハハハッ……マッキントッシュ教授も相変わらずだな」
「レイラに会いに行くと、教授とよく話すんだよ。アレックスとシェリーのことはいつも心配してる。特にシェリーのことをね……シェリー、幸せかい?」
ルイもアレックスの帝都での噂を知っているのだろう。心配そうな目でわたしを見つめていた。そのことには気づかないフリをしながら軽く笑った。
「ルイ……ありがとう。帝都の生活にもだいぶ慣れたわ。マッキントッシュ教授によろしく言ってね。彼は孤児院にもよく視察に行ってくれていて、ときどき手紙で報告してくれるのよ。マッキントッシュ教授には、助けられてばかりだわ……」
「マッキントッシュ教授か……シェリーもぼくも彼には本当にお世話になった。たくさん、助けてもらったよ。感謝してる。手紙の中で、いまだにぼくに嫌味を言ってくるけどね」
「アレックス、そういう人こそ自分にとって大事なんだぜ。ところで、バーナビー教授はどうしてる? 会いたいな。彼ほど優秀な教師は王立魔法大学校のどこにもいないよ。また魔法の実験をしてもらいたいもんだよ」
「バーナビー教授は……表向きは離宮で魔法の研究中だよ。実際は幽閉の身だ。平和な世の中になったら、また戻ってくるだろう」
「そうか……帝都も大変なんだな。魔法の法律もますます厳しくなる一方だよ。レイラのために花束を出すだけの小さな魔法も、規制されてるんだからな」
「ルイ、レイラとは……」
「ぼくってバカな男だろ? あんなに袖にされてたレイラと結局、付き合うんだからな。結婚を申し込んだ途端、レイラに帝都へ逃げられて……それをまた追いかけてきて……」
「ルイ……どうしてレイラと? 前の彼女との仲も、故意に裂かれたって言ってなかったか?」
「キャロルか……彼女はもう、新しい彼氏と婚約したよ。君たちの結婚式の帰りに、レイラに謝られたんだ。本当はぼくのことが好きだと気づき、それでキャロルと別れさせたって……。それを聞いてぼくは舞い上がり……バカだろ?」
「……レイラの取り巻きたちは? どうしたんだ?」
「ぼくと付き合いはじめてからいなくなったよ。レイラが追い払ったんだ」
「そうか……恋に関してはぼくは何も言えない。恋する気持は十分、ぼくもわかっているからな……」
アレックスがわたしの瞳を覗き込んだ。彼の目は相変わらず青空のように澄んでいた。
その後、故郷の大学の近況など懐かしい話を聞きながら、ルイとアレックスと3人で楽しく過ごした。まるで学生時代に戻ったかのようにたのしいときが流れた。だが、お目当てのレイラは夕方になっても現れなかった。
「おかしいな……知り合いのところを当たってくるよ。シェリー、レイラの取り巻きは帝都の出身なのか?」
「さあ……でも、彼の婚約者は帝都の人間だと聞いたことがあるわ」
「なんだって? シェリー……もしやレイラはギャツビーといるのか?」
「ルイ……それは……」
「待てよ、ルイ! いずれわかることだからハッキリ言おう。昨夜、レイラはそのギャツビーとかいう男と一緒に観劇に来ていた。ぼくらは偶然、桟敷で出会ったんだ」
「そんな……」
「ルイ……レイラは昔の知り合いの家に滞在していると言ったわ。決してギャツビーの家では……」
――コンコンッ! カチャッ!
「アレックスさま! 緊急で弁護士が会って欲しいとみえております!」
突然、エヴァが部屋に入ってきた。何事だろうか。あわてている。
「弁護士だと? カーライル家のか?」
「いいえ。奥様のお友達の件で至急、警察に同行していただきたいと……」
「ぼくに警察が? シェリーの親友って……まさか!」
「アレックス……レイラに何か……?」
「なにがなんだか……とにかく警察に行ってくるよ」
「アレックス、ぼくも連れていってくれ!」
「わたしも行くわ!」
「わかった。2人も一緒に行こう」
レイラが警察に連行された。わたしたちは不安を胸に、迎えに来た弁護士と共に警察へ向かった。




