龍神の巫女
海辺の町は突如現れた龍の影に大騒ぎになっていた。
ただでさえ、ここ数年とある問題に悩まされていたところに、龍の出現。
町中が大混乱に陥っていた。
町の議会では、そのとある問題のために集められた兵を龍対策へ回すことが決定された。
しかし、町民の避難などについては具体案は出ない。
避難先が無いためだ。
逃げ場が無いことを理解した人々は、町を囲む壁が牢の鉄格子に見えていた。
――
龍が現れた次の日。太陽が中天を示す少し前。
見張りの兵は、龍の降り立った方から人が歩いてくるのを発見した。
たった一人。
ゆっくりと一歩一歩、町へ近づいてくる。
龍では無いため一瞬迷ったが、すぐさま全兵へと通達する。
龍が向かった方角には村も町も無い。
当然、海岸沿いをずっと進めば別の町はあるが、馬を使っても一月はかかる距離な上、内陸の街道を通った方が圧倒的に早い。
人がわざわざ通るはずの無いところからやってきた人影。
龍は一体どうしたのか。
と、情報が伝達し、様々な憶測が流れ出した頃に人影はすぐそこまで来ていた。日差しが強いためか、フードをかぶっているようだ。
行く必要の無いところに門は無い。
町を囲む壁の上から、兵達が警戒にあたる。
人影が立ち止まる。視線を左右に振り、壁の上へ目線を向けた……ように見える。
こちらを確認したのだろうか。
そして人影は―跳躍した。
警戒する兵の中央へと降り立つ人影。
人の身ではありえない高さの跳躍を目の当たりにし、近くの兵は思わず後ずさる。
そしてそれはフードを外した。
今まで見たことも無いほど美しい少女だった。
美しく、そして……真っ白な髪。真っ白な肌。真っ赤な瞳。
――忌み子だ。
誰もがそう思った。
そしてそれは声を発した。
「私は龍神の言葉を賜りし巫女。龍神様の御言葉を伝える。長の元へ。」
儚げで、優しい声だった。
俺、傭兵フェルガーは、巫女が所謂忌み子だと知りつつも、その声と美しさに惚れてしまった。
――
ありがたいことに、忌み子とされるその巫女に近づこうとするヤツは他にいなかった。
迷信だが、忌み子と関わると不幸が振りかかるなどと言われているためだ。
不幸が怖くて傭兵やってられるか。
「巫女様御自ら足を運ばれる必要はございません。場所をお作りいたしますのでそちらでお休みください。長を呼んでまいりますので。」
「……承知いたしました。」
少し間を空けて返事が来る。微笑んでいる気がする。かわいい。
ここぞとばかりに、手のひらを差し出し、エスコートする。
意味がわからないようで、少し首を傾げる。かわいい。
「ご案内致しますので、御手を。」
「あぁ……。……お願いします。」
だいぶ間が空いたが手を載せてくれた。かわいい。
すると、手が触れた瞬間全身に猛烈な悪寒が走る。
なんだ!?……あれか?女の手を握るなんて母親以来だからか?
悪寒じゃなくて、感動に打ち震えたとか……?
――
壁の内側に備え付けられている会議室に巫女を通す。
長を呼んでくるようにとは道すがらの部下に伝えた。
これでも部隊長なのだ。
お茶とお菓子を用意させ、巫女は上座に。
「失礼かと存じますが、監視として私が部屋に残らせて頂きます。」
「……ええ、よしなに。」
普段は上座下座なんてどうでもいいだろうと思っていたが、意味はあった。
監視、見張りならば逃げられないよう、下座の扉のすぐ側に居なければならない。
そこで巫女を下座に座らせると……顔が見えない!
誰だ上座は扉から遠い方って決めたヤツは!すげぇな!
今だけは面倒な上下関係に感謝しつつ、町長を待つ至福の時は過ぎていった。
ブックマークありがとうございます。
遅くなって申し訳ありません。最低でも月曜日は絶対更新しないとね。
というわけで初のメイン二人以外の名前ありキャラです。(龍神名前無いけど)
ただしフェルガーくんがメインキャラになるかどうかは未定です。




