龍神の巫女・裏
前回の龍&真白視点です
「巫女……ですか?」
「そうだ。我の代理者として町へ行くのだ」
浜辺に降り立った後、龍は真白へ行動の方針を語る。
「我が直接姿を現すわけにはいかないのは今言った通りだ」
「だから、私が代わりに、ですか」
「そうだ。明日は真白一人で、ここから真っ直ぐ町へ向かう」
「ふむふむ」
「以上だ」
「ちょっと!適当過ぎませんか!?」
あまりに簡素な方針に思わず叫び声をあげる。
「問題無い。指示は随時念話で行う。会話することになれば、基本的に我が指示を待て」
「あぁ、なるほど……あれ、でも喋らないと私の考えが龍神様に伝わらないのでは?」
「方法はあるが、必要か?」
「……あれ?要らない?」
自分の存在価値って……と真白が遠い目になる。
それなりにショックを受けた様子に龍が方法はある、という。
「でも私の意見なんて要らないですよね……あ、涙が。砂から草の芽が」
「ヤケになるな。冗談だ、半分くらいは」
真白が周囲を緑化しかけたところで慰めにはいる。
「最初は肝心なので細かく指示するが、ある程度目的を達成したら町では自由にしていい。何か選択に迷うこともあるだろうしな」
「わかりました。で、伝える方法とは?」
「伝えるというよりは、そなたの頭の中を覗く」
「え」
戸惑いの表情を浮かべる真白。
龍もやや遠慮がちに伝える。
「やろうと思えば、我にはそれができる。覗かれてもいい時は合図を送れ」
「うへぇ……」
女性が発するにはあんまりな声を上げて落ち込む真白だった。
――
次の日。
ゆっくりとした朝を過ごし、町へ向かう準備をする真白。
準備と言っても、荷物は何も無い。
近場から採集したもので朝食を取る程度だ。
「よし!じゃあそろそろ行ってきます!」
「ああ。行ってこい」
三年着続けて丈の短くなった服のフードをかぶり、浜辺を町へ向けて歩き始める真白。
浜辺に足跡が残る。
町の壁はまだ小さくしか見えない。
だが真白の強化された視力は十分に情報を捉えていた。
「壁の上に人がいっぱい居ますね。昨日は居なかったような?」
「我々の降り立った方角の見張りを増やしたのだろう」
「おーい!」
「見えんとは思うが、巫女らしくないからやめよ」
「はーい……ところで、どこから町に入ったら良いんでしょう?」
「ん?入り口、門かなにか無いか?」
「壁しかありませんよ?」
「ふむ……とりあえずそのまま進め。調べておく」
「わかりました」
真白の周囲までしか感知していなかった魔力を一気に町全体を覆うように感知する。
確かに真白の向かう先には門は無く、町から出ている街道のある場所に一つあるだけだった。
こちら側の壁の上は武装した人間が十メートルほどの間隔を開けて並んでいる。
町の中はその規模と現在の時間の割に出歩いている人影は少ない。
感知していると、見張りの兵士達が中央の方へ寄りはじめていた。
調べている間に真白が相手からも目視できるところまで来たらしい。
「真白よ。入り口はなさそうだ。」
「え、じゃあどうしましょう?帰りますか?」
「そのまま進め。入り口が無ければ……」
「作れば良いんですね!」
「落ち着け。そういう方法もあるが今は違う」
「あるんだ……半分冗談だったのに。……それにしても大きい壁ですねぇ」
真白が壁を海側の端から逆側の端まで眺める。
「壁の頂上、人のいるところが見えるか?」
「はい、見えます」
「よろしい。お喋りはここまでだ。あとは合図を出すように」
「あぁ……わかりました……」
「では、跳べ」
怪訝な顔をしつつ、合図で指を交差させる真白。
『翼、無いんですけど……』
『飛行するのではない。跳躍だ。行けるだろう?』
『まぁ……行けると思いますけ……っどっ!』
ドッ!
砂の地面を強く蹴り跳び上がる真白。
壁の高さは約二十メートル。建物にして七階分程もある。
それを余裕を持って越え、壁の上に着地する。
着地点の側に居た見張りの兵は、ありえないものを見たかのような表情で後ずさる。
『龍神様が上まで運んでくれてもよかったのでは?』
『それだと若干不自然な動きになるからな。そなたの力を見せるいい機会だろう?では、ゆっくりと丁寧にフードを外せ』
両手でフードを外し、窮屈だった長く白い髪も外へ出す。
直後、様々な感情が入り混じった視線が真白へ注がれる。
『はっきりとした声で周囲の者にこう伝えよ』
「私は龍神の言葉を賜りし巫女。龍神様の御言葉を伝える。長の元へ」
すると、一人の兵が真白の元へ近づき案内をすると伝えてきた。
『出向くつもりだったが、呼び出すというなら手間が無くていい。了承しておけ、愛想良く、な』
「……承知いたしました」
愛想良く、が慣れていない真白は若干ぎこちなく微笑む。
すると、目の前の兵が少し顔を赤くしながら手を差し出してきた。
だが初めて人と接する真白には、その手をどうすれば良いのかがわからず首を傾げる。
『手を繋ごうという腹づもりらしいな』
「あぁ……」
『って、どうしたらいいんですか!?手を繋いでどうしようっていうんですか?』
『下心はあるかもしれんが、害意は無いだろう。おしとやかに手を取るといい』
「……お願いします。」
そっと兵の手を取る真白だったが、無意識のうちに警戒していたのか魔力を強く流してしまい、その瞬間兵の身体が震えるのがわかった。
震えたのを見て魔力のことに気づいた真白はすぐに弱めた。
『やってしまった……かも?』
『……まぁ、何も言ってこないようならいいだろう。今後気をつけるようにな』
しばらく歩き、机と椅子が用意された部屋へとやってきた。
手を引かれたまま、上座の椅子へと案内され座る真白。
真白の手を引いてきた兵はそのまま部屋の中で見張りに立つらしい。
『監視ですって』
『まぁ当然だろう。了承しておけ……そうだな、よしなに、と言うといい』
「……ええ、よしなに」
そして真白はそのまま監視の兵の熱い視線を受けつつ、長の到着を待つことになった。
ブックマークありがとうございます。
そして感想もありがとうございます!
モチベ上がります!(なのに日が空いて申し訳ない)
ただの裏話なのに文章量が倍くらいになった……
あと、カッコ内の最後の句点をやめました。
以前のもそのうち修正するつもりです。




