08. 傷の手当て
二階の部屋まで来ると莉桜をベッドの上に静かに座らせ、目線の高さを同じにしようと、ベッドに手をかけてしゃがむ。そして顔を覗く。
「傷の手当てする物とかはどこにある? 」
「えー…と」
視線をさ迷わせる。実は救急セットがどこにあるのか分からないんだ。両親は早くに他界してしまってこの家にいるのは莉桜、一人だけ。だから怪我した時はいつもおじいの所に行った。
おじいというのは子どもの頃から何かと気にかけてくれる人だ。神社にいて、前まではお祓い屋をやっていた。今はもう年だからそういう事はしていないらしい。
-*-
ドアの所に立っていたルカがなんとなく辺りを見回すと一つの箱を見つけた。十字架のような模様がある。これには見覚えがあった。以前、人間に怪我の手当てをしてもらった事があり、覚えていたのだ。
それを手に取り、困っているような表情をした莉桜の所まで行くと救急セットを突き打し、ぶっきらぼうに言う。
「これだろ? 」
「あ……そうです。 ありがとうございます…! 」
感激して頬を緩ます莉桜を見てルカは思った。大げさすぎだと。
莉桜にとってはある意味危機的状況を助けられたものだから、嬉しかったに違いない。ましてやこんな感情のなさそうなルカが、自分の気を遣ってくれるなんて思っていなかったのだろう。まあ、頭を下げる事のほどでもないと思うが。
-*-
彼は無言で立っていたかと思うと、歩いていってしまった。どこに行くのかなと後ろ姿を見ていると、莉桜がいつも宿題を広げている席のイスに軽く座った。
そこで莉桜が気づいた。机には、忘れたと思っていた鞄があったことを。
(あ……持ってきてくれたんだ )
妖怪からから逃げている時、ハデに転んで持っていた鞄を手離したんだ。それからは鞄どころじゃなくなって、彼が持ってきてくれてなかったら、今頃道路にあっただろう。
なんて思っているうちに、純白の彼は傷の手当てをする準備を終わらせていた。
「こっちの準備はできたけど、心の準備はできた? 」
莉頭を下げている莉桜が中々受け取らないのを面倒だと思ったルカは、救急セットを純白の彼に渡したんだ。今は彼の横に置いてある。
手際がいいな、なんて思いながらコクっと頷く。だが、まだ心の準備なんてできていない。
「痛いと思うけど、すぐに終わらせるから 」
たぶん『大丈夫だよ』と言っているのだろう。莉桜にもそれは伝わった。
消毒液を染めらせてある白い綿を、ピンセットで莉桜の膝に近づける。
「ーーっ」
想像していた通り痛かったようだ。手をぎゅっと握り、唇を噛んで痛みに耐え、消毒し終えるのを待っていた。




