09. 正体不明
「はい、これで終わり」
消毒の痛さに慣れていないだけだと自分に言い聞かせながらも、最後に通常より大きな絆創膏を貼られ、ケガの手当ては終わった。
「これであとは治るのを待つだけだね」
「ありがとう 」
最後の語尾に「ございました」と敬語でつけようかと迷ったけど、結局そのまま言った。意外と自然に言えた気がする。
「どういたしまして」
ニコッと笑うと立ち上がり、近くの棚まで行くと「これはここに置いとくね」と救急セットが置かれた。
こちらに戻り歩いて来ると、わたしの横に腰を降ろし、顔を傾けてくる。
「君は僕たちのこと、怖いと思う? 」
急な質問、確信した言い方。頬を緩ませ、何でもないかのような彼を凝視し、なんて答えたらいいのか思考を巡らす。
助けて貰った上にここまで運んでもらい、傷の手当てまでしてもらった。
最初は怖いという気持ちしかなかったけど、このヒトの笑みに安心して。
今は、怖いという気持ちを忘れていた。
けれど、もし人ではないなら何なのか。そう思うと怖いという気持ちが蘇ってくる。
考えた結果、自分の今の思っている素直な想いを首を横に振って表した。
「いいんだよ、正直なこと言っても」
その言葉に反応し、俯いていた顔を上げ、誤解を解こうとしたが。
彼は視線を外し、こう続けた。
「ーー知らないというのは怖いものだからね」
表情は変わらないのに、どうしてこんなに切ない声音を出すんだろう。
横顔を見つめながら、あることを思いついた。
少しでも教えてもらえないものかと。
「あの…」
小さい声で尋ねたわたしを、不思議そうな顔をして見てくる。
次の言葉を待っているようだ。
「あなたたちって、何者……? 」
まるでこの言葉を待っていたかのように、彼は微笑んだ。
「その事については順を追って話すよ」




