05. 漆黒の剣
(もうダメだ…)
逃げる事も諦め、思い切り目を瞑る。
突如、大きな叫び声が響く。
《 ぎゃあああ゛ 》
目を取ろうと伸ばしてきた手は、わたしの瞼に触れることはなかった。
なにが起こったのか。状況を把握するため、瞑っていた目を開く。
そこには……さっきまでわたしの目を狙っていた得体のしれないモノの体に、一筋の線のようなものが入っている光景があった。
その一筋の線のせいで物体を保てなかったかのようにパッと光って消える。
ソレが消えたことで後ろにいる者が見えた。
何がなんだか分からなくて頭が回転しなかったが、少しの時間が経った後落ち着きを取り戻し、考える。
断言はできないがさっきの一直線上に光るものは、彼がしたんではないかと思う。
わたしを助けてくれたのかは知らない。
彼は人の姿をしているが、やっぱり人ではないと分かる。
片手には鋭い剣を持っていて、それでアレを引き裂いたんだと分かった。たったの一振りで、アレを消してしまったんだと。
彼は闇の中からでてきたんじゃないと思うくらい、全身が黒で包まれている。
黒い髪と、黒い服装。
黒くて長いコートを羽織っていて。全体的にシュっとした感じがある。
一瞬見ただけで、この容姿は誰だって分かるだろう。ただ一つ、彼の目をよく見なければ気づけない事がある。
瞳まで黒くて、輝きがないという事を。
まるで感情がないみたいだ。
そんな目を見ていると、彼もわたしを見てくる。なにか喋るのか、それともあなたまでわたしの目を狙っているんだろうか。
この目になにがあるっていうの?
相手の言葉を待つ。けれど彼はわたしの事を見ているだけで、なにも発してこない。言葉を発しないどころかひとつの動きもみせない。
彼が何を考えているのか黒い瞳から探ろうとするが、その瞳からはなにも感じとれない。何も思っていないような、何も感じていないような瞳から探ろうとしても無駄。
闇の中の奥底を見ているようで。引き寄せられるようにその瞳を見つめてしまう。これを表すなら暗闇の中のブラックホールのようなもの。
殺気なんかが無いことは、なんとなく分かる。
だったら、なに…?
どうしてそんな眼差しで見つめるんだろう。わたしを哀れむような、悲しい瞳。
コンクリートの地面に尻餅をついていて、彼には見下ろされている状態。
居心地が悪い訳ではない。わたしたちだけ別空間にいるような錯覚に陥ってしまいそうなだけ。
言葉を待っていてもそれはこないものだと頭の片隅にはあった。されど待ってしまう。




