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ハルウタ ー黒兎と白兎ー(下書き)  作者: MIA
【第一話】序章 -はじまり-
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04. 歪んでいく日常

(気のせい、かな…? )


 9月、学校が始まって数日。下校中の道で何かがわたしを見ている気がする。

 誰か・・ではなく何か・・となにも考えずに出たのは、それをわたしは見ていた気がするから。

 『見えていた』

 のほうが正しいかもしれない。


 気のせいかもしれないけど、あのガラスの破片のような物が目に入って数日……ぼやけて得体のしれない生き物が見えてきていた。

 


 莉桜の考えは当たっている。莉桜の背後には妖怪がいるのだ。

 足を止め、興味本位でゆっくり後ろを振り返った莉桜の瞳に映るものは人ではないモノ、妖怪と呼ばれるモノだ。

 その妖怪はニコーっと口角をあげ、不気味な笑みを浮かべながらこう言った。


 《 その目玉、ちょうだい 》


 直感的にやばいと思った。

 ーー逃げなきゃ

 そう思っても足が竦んで動かない。まるで金縛りにあったかのように。


 ーー動け…動け

 自分に言い聞かせる。その間にも妖怪の人のような手が、莉桜の目にゆっくり向かってくる。


 本当に目を取ろうとしているという事を今更確実なものとして受け取った莉桜。

 ソレの五本の指だけが視界に映る。右目を取ろうとしている手。

 早く逃げなければ、と硬直した身体に訴える。


(動け! )


 心の中で勢いよく叫ぶとやっと動いてくれた足。その足を使ってソレに向けている体をくるっと反転させ、逃げ出す。



 《 待て!  こっちが穏便に済ませてやろうとしたものの…。その目玉、よこせ…!  》


 -*-


 後ろから大きな怒号が聞こえたが、気にせずに走って走って逃げ続けた。


 ーー…


 息を切らしながら横を見る。

 ふと、頭の片隅で考えた。

 今まで走ってきた道の横にはたくさんの木が並んでいる。前に若葉と入った森だ。


 この森の中に入ろうか、どうしようか。


 この中に入って、相手の視界から逃げるようにすれば、いずれはアレも諦めるかもしれない。

 しかし、逆のことも思いつく。一目につかなく木々が邪魔になって逃げずらそうだから、森の中はアレにとって良い場所なのかもしれないと。


「……っ! 」


 よそ見をしていたせいで、勢いよく転んでしまい、視界に映るものは木々ではなく、コンクリートの地面。

 地に手をつき、顔面は無事だが、打ちつけた足と手がズキズキする。



 莉桜を追いかけていた妖怪はそれを見て、鼻で笑った。


 《 ふっ、痛くて動けないのか 》


 はっとして振り返る。そう離れていない所まで追いつかれていたことに気づき、心臓がバクバクし始める。立たなければ本当に目を取られてしまう。目だけではなく、命も取られてしまいそうな勢いだ。


「…った 」


 立とうと足に力をいれた瞬間、激痛が走り、その行動は無意味なものとなる。膝を少しだけ浮かせ確認してみると、擦りむいて少し血がにじんでいた。



 《やっと追いついた。 早くその目玉をよこせ…》


 後ろから聞こえる低い声が耳にまとわりつく。

 ……やばい

 立とうと試みてはいるけれど、またもや足に激痛が走り、座り込んでしまう。


 なんでこんな訳の分からない事で追いかけられなきゃいけないんだ。

 こんな虚しい出来事に疑問を抱いた。


  (どうしてわたしの目を狙うの? 見えるからいけないの? 見たくて見ているわけじゃないのに、幻だって言ってほしいのに)


 わけ分からない気持ちと、ソレに対しての恨みの気持ちを込めて睨みつける。

けれどソレは、莉桜の気持ちなんか知ろうともせずに目を取ろうと手を伸ばす。ニヤーっと不気味な笑みを浮かべながら。



 《 やっと手に入る。 やっと… 》


 -*-


 どうしてわたしの目なんかが欲しいの?

 ねえ、あなたは一体何者? 


 普通の人に見えないことは知っている。若葉と一緒にいて、そんなことはもうとっくに知っているんだ。


 道端に見たこともない変な生き物がいた時があった。ソレは珍種なのかなと思って隣にいる若葉に聞いてみたんだ。だけど……

 「なに言ってるの? そんなものどこにもいないじゃない」って。 『いるよ』って言っても若葉には全然見えていないようだった。


 だからその刻なんとなく思ったんだ。これは見えてはいけないものなんじゃないかって。


 人に見えないものが見えるなんて最初は信じられなかった。

 でも…信じたくなくても無理やり分からせられてしまったんだ。


 -*-


 四つん這いぎみになりながら、妖怪に背を向けていた格好をなんとか直そうと、膝を動かし尻餅をつくような態勢になる。そして真っ正面を向き、自然と両手を後ろにつく。


 後退し、少しづつ距離を取ろうとするが、それは無駄なこと。尻餅をつきながら後ろに下がる速度なんて、歩きなれた二足の速さと比べたらたかがしれてる。



 《これが手に入るなんて、夢にも思わなかった》

 ソレの指は瞼にれるくらいの近さまで迫ってくる。



 ーーもう無理なんだって

 ーー助からないんだって


 そう思っても、


「い…いや…… 」

 まだ助かろうとしている。



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