05. ルカと天邪鬼の出会い
莉桜に逃げられた妖怪、天邪鬼はポツリと一人歩いていた。
「チッ、おもしろそうなヤツだったのに逃げられちまった」
「誰に逃げられたんだ?」
「オレのこと見て怖がっていたからたぶん人間だよ。……はーあ、珍しいヤツだったのに」
そこまで言ってようやく気づいた。オレは誰の質問に答えているんだと。
「って、誰だよオマエ」
振り向いた先にいたのは漆黒のルカ。自分より何倍も大きい彼を見上げる。
「名乗る必要はない」
「なんだそれ。話しかけてきたのはソッチのくせに」
名を名乗っても良いことなんてない。ただ名が知れて噂が立つ、それだけだ。
ルカはそれを経験したことがある。一度収まった噂をもう一度呼び起こすなんて、自分に得にならないようなことはしない。
「あ、ちょっと待てよ」
背を向けたルカに呼びかける天邪鬼。それに対して黙ったまま威圧的な視線だけを向ける。
「オマエ、何か探してるだろ?」
「探してる? 何を? 」
意外に食いついてきたルカに天邪鬼は心の中で笑った。ただ当てずっぽうに言っただけなんだ。つまらないから誰かで遊んでやろうと。
にやけた顔、表情にも十分気持ちが出ている。もちろん、ルカが怪しく思わないはずがない。何かを企んでいるなどとすぐに分かることだ。
「それはその、えっと……」
「帰る」
「ま、待てって」
踵を返すルカを慌てて止めようとする。
ちゃんとした答えを出さなければ今度こそ本当に帰るぞという視線を送り、言うとおりに足を止めた。
「そうだアレだ力の石」
慌てて考えた天邪鬼はパッと明るくし、ポンっと手を当てた。
妖怪はみんな力を求めているもの。だからこいつも求めているんじゃないかと思った。実際、天邪鬼もその一人。
ピクッと眉を動かし、反応を示したルカは訝しげに訊く。
「氷力石のことか? 」
「ああ、そうだ、氷力石」
先程と比べほどにならないほどの食いつきに、焦り始めた。
それを気づかれまいと、偉そうに腕を組む。
「駄目元で訊くが、お前ハウラの居場所を知っているか? 」
莉桜が学校にいる間、情報を聞き回っている。だが天邪鬼を当てにしても何も知らないだろうという判断からスルーしようとしたが、それは間違っていたようだ。
「おう、まあほんの少しの情報くらいならな」
「本当か? 」
「ほ、本当に決まってんだろ」
オドオドしている様子の天邪鬼を見据える。あまりの怪しさに信用ならない。
「そんなに怪しむんだったら、教えてやんねーよ」
腕を組み横目で見てくる天邪鬼に対して、まあ聞くに越したことはないか、と口を開く。
「言ってみろ」
「なんだその上から目線は。教えてもらう身なんだから、普通もっと讃えるもんだろ」
あまりのルカの態度にいじけ、ボソボソと口にする。
ーー面倒な奴
これがルカが天邪鬼へ対する印象となった。




