02. 黒と白。二つの影
静かな空間。木の葉が揺れ、ザワザワとざわつく心地いい音は、漆黒の彼にとってはどうでもいいもの。そんな彼とは対象的に、木の上に立っている男は安らぎを得ていた。
莉桜と若葉が森の中を駆け出して行った姿を見ていた彼は、口を開く。
「ルカ、ちょっとやりすぎじゃない? 下手したらあの二人に当たってたよ」
呆れた笑みを浮かべ、見下ろす彼の目の先には、さきほどまで妖怪の相手をしていたルカ。剣を片手に持ち、どこか納得のいかない表情をしていた。
「そんなことはどうでもいい。 氷力石の気配が人間に……。 どういうことだ」
誰にも答えは求めず、まるで自分の中で状況整理をしようとしている。そんなルカは、木の上にいる男に一度目を合わせるもすぐに逸らし、長く太い剣を腰に下げている鞘にしまった。
詳しく言うのであれば、ルカが持っている剣は『ロングソード』であろう。
「たぶんだけど……妖怪に食われて力を手にいれられるよりは、人間の中にいたほうが安全だと考えた、とかじゃない? 」
助言するように自分の考えを発した彼もまた、頭の中で駆け巡らせていた。ありえもしないこの状況に陥った、その答えを深く追求するように。
「ただの石に意思があるって言うのか? 」
「ぷっ」
思いもよらぬおやじギャグに吹き出す。いつの間にか木の上に座っていた彼は腹を抱え、クスクスと笑い始めた。
もちろん、ルカは笑わせるつもりで言ったわけではない。
「なに笑っている? 」
何も分かっていないルカは怪訝そうに、いつもヘラヘラしている彼を見る。
「さあ……どうだろうね。 僕もそこんところはわからない」
まるで聞こえなかったかのように頬を緩ませながら話を続けた。そんな彼に気にすることなくルカは彼女の走り去った方向を無意識に眺め、木の上にいる彼もまた、ずっと見続けていた。
あの人間はこれから妖怪に狙われるだろうと、心配ではなく、好奇の眼差しで。もう一人の漆黒の彼は、感情の持たない、深い闇のような瞳でーー。




