11. 冷たい態度
ネコミミくんがいなくなってからすぐにレオが来た。
「大丈夫? 何もされなかった? 」
「うん、大丈夫だよ」
額に手をあてるのをやめて立ち上がり、氷力石は取られていないと無事な瞳を向けて微笑む。そこでレオの後ろの方にルカの姿があることに気づいた。
鋭い視線が痛々しくも突き刺さる。
「なぜ邪魔をした? 」
突き放すような、険のある言い方。
さっきネコミミくんを守るように間に入ったのが気に食わないんだ。
怯まずに口を開く。
「レオから聞いたの、あのネコミミくんはルカの大切な人なんだって。だから傷つけさせたくなかった」
もう一度、先程言えなかった言葉を続けた。
ルカが村の人に祟られていたりしても唯一ずっと一緒にいてくれたネコミミくん。そんなネコミミくんに自分と同じ想いをさせてしまうんじゃないか。そう怖くて突き放したルカ。
人間にはもう自分の姿は見えなくなり、人目を気にせずにいられるようになった。なのにまだそれは続いている。
ルカが兎だった時とは違うのに。黒色が不吉と伝わっていても今の人は祟るなんてことをしない。兎なんてペットショップにいるくらいだ。猫も。
「余計な事を……」
ネコミミくんの事を〝大切な人〟と言ったことを否定するルカは無表情で、眉間に皺を寄せ、ものすごい剣幕。でも……どこか寂しそうに見える。微かだけどなんとなく分かった、苦しいんだって。
わたしはルカを苦しめたいんじゃない。
何も言えずに霧のかかったルカの瞳を見つめる。
すると体をくるりと反転させ背を向け、顔だけを覗かせた。
スラっとした横顔。
「これだけは勘違いするな。お前はあいつに頼まれたから守ってやってるだけだ。氷力石が無くなればお前の価値なんてない」
それだけを言い残し、前を向いて歩き出して行ってしまう。ぎゅっと何かが胸に突き刺さる。
ーーそんなのわかってるよ
これ以上、踏み入られたくないんだね。だから線を引いた。
何年も生きているルカにとって、わたしはまだ会ったばかりのただの人間だろうけど。わたしにとってルカはルカなんだよ。
『お前』なんて言われている以上、『莉桜』として向き合えないか……。
ルカちはーー……この世に何年生き続けているんだろう。
妖怪って、どのくらい生きられるものなの?
長く生きられるから焦ることもなく、ずっとすれ違ったままなんじゃないかな。
ネコミミくんが可哀想だよ。




