09. 亀裂
「あ、いた」
ようやくルカを発見した。森の中にいると予想して入って捜したんだけど居なくて。いったん家に戻ってみたけどそこにも居なかった。それでもう一度学校へと続く道を来てみたらここに居たんだ。けれど……ーー悲惨な光景が目に写った。
ルカがネコミミくんに剣を向けている。それも地面に尻餅をついている相手に。木々を背にネコミミくんはルカを見上げていた。その顔には少し恐怖の色が見える。
剣を振りかざし、それがネコミミくんへと放たれる。
「待って、ルカ……! 」
一瞬の事だった。レオから離れ、地に足を付けるとすぐに駆け寄り、名を呼んでいた。
そして自分でも驚くほど早く走り、ネコミミくんを庇うように間に入る。
「何の真似だ? 」
心ない瞳でわたしを蔑む。
ーー怖い
それでもルカと向き合う。
「……殺さなくてもいいと思うの」
地についた片膝。背にネコミミくんを隠すように両手を広げたまま、ルカを見据える。
「ソイツはお前の右目を狙っている妖怪だ。消し去れる時に消し去った方がいい」
「でも、この男の子はルカの大切な人なんでしょ? 」
わたしを襲ってきた妖怪はルカの手によって消された。その光景が目に焼き付いて離れない。鋭い剣で、今ルカが持っている剣で消し去った。ネコミミくんが同じように消し去られるなんて思ったら見てられなかった。
あんな話を聞いた以上、見て見ぬ振りなんてできない。
ルカは眉を寄せ、押し黙った。
どうしてこんなにも悲しい事を言えるんだろう。消し去るなんて……本気で言ってるの?
訊きたい事はたくさんあるけど、余計なことは言えない。ルカだって分かっているはずなんだ。
考えた上で行動していると思うけど、今は冷酷になりすぎている。大切な相手を傷つけるのは自分の心を傷つけるのと同じ。それを消し去るなんて……どう考えても行き過ぎだよ。
「人質もーらいっ」
「え……」
上機嫌な声がしたと思ったら後ろから手が回ってきて、気づいた時には体が宙に浮いていた。前にも体験したことのある感覚。
ネコミミくんに背負われてるんだと分かったのは、少し経ってから。




