12. 氷石力
「もう分かってると思うけど、君を襲ってきたのも妖怪。普通の人に見えないモノ全て、妖怪」
普通の人には見えないモノ……。
前までは見えていなかったモノ。
ーー心の中で復唱し、そこで閃く。
「どうしてわたしは見えるようになってしまったの? 前までは見えなかったんだよ? どうして……」
レオなら何か分かるんじゃないか。問い詰めるように訊いてしまう。
そんな莉桜を見据え、人差し指を向ける。
「それは君のその右目に入った氷力石のせい」
「ひょうりょくせき? 」
妖怪は聞いたことがあったが、『ひょうりょくせき』なんて聞いたことがない。
差された人差し指を見てから、レオに視線を向け、首を傾げる。
思っていた通りの反応をされ、レオは微かに頬を緩ます。けれど、ここは緊張感を出すところだと、できるだけルカのように無表情を取り繕う。
「氷の力と書いて『氷力』、最後の文字が『石』、それで『氷力石』ーー簡単に言えば氷のように透明で力の持った石、ということ」
わたしの目に入ったのは氷力石。氷のように透明で力の……。
そこで、あ…もしかして、とまたもや閃く。
「あのガラスの破片? 」
大事な事を思い出したかのように声を上げる。
莉桜は井戸の中を覗いていた時に飛んできた物を言っている。
目に入った直後は痛かった、時間が経ったらその痛みはいつの間にか完全になくなっていた。
「そういえばあの時もそう言ってたね 」
真剣な話をしているというのにレオはクスクスと笑う。それを見た莉桜は、笑われるようなことを言ったんだろうかと不思議に思いつつも、『あの時』に引っかかった。
「あの時、レオたちはあの場所にいたの? 」
森の中に入った時の事。若葉が井戸の中を確認してから背を向けてわたしの方へ歩いてこようとした時だった。後ろに勢いのある風が通ったんだ。
何か飛んできたのかなと思ったけど、そんなことはなくて。怖くなって一気に森の中から駆け抜けてきた後、若葉は何か嫌な予感がしたと言っていた。
「そうだよ。あの時、勢いのある風が通ったでしょ? それは氷力石を狙う妖怪を相手にしていたからなんだ、ルカがね」
「そうなんだ…」
机にいるルカを見る。
……突っ伏して寝ている。
莉桜の視線に気づいたレオもルカを見て、ある事を思い出した。
「ずっと見守っていたからたぶん疲れちゃったんだね」
僕もねむい……と欠伸をするレオ。
あの時からレオたちは、わたしを見守ってくれていたんだ。こんなにも眠そうにしているんだからもしかして、夜も寝なかったとか。……なんだか悪い事をした気分になる。
「ごめんね。なんか」
「僕は大丈夫だよ。君のほうこそいきなりで驚いちゃったでしょ? だから、お互い様」
申し訳なさで下げていた視線をあげると、優しいレオの笑みがあった。




