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バックルーム

 世界が歪む。彼女がいる世界が。ぐにゃりと。そして、別の空間が現れる。黄色い空間に。無限に同じ部屋が連なる空間に。

その空間は、その部屋は迷い込んだものを狂わせる。終わりが無いのだから。果てが無いのだから。

 蛍光灯の明かりが連なる。かすかな音を立てて。臭いがする。かすかに臭う程度に。不快な臭いが。

 彼女は戸惑っていた。いきなり見ていた風景が変わったのだから。空気も。音も。何もかもが。

 心が警鐘を鳴らしている。この場にいてはいけない。彼女は戸惑いながらも歩き出す。

 スマホを見る。文字化けしたまま。役に立たない。どこをタップしても、ボタンを押しても、何も変わらない。

幸いにして、彼女が歩きスマホをしても大丈夫だった。空間の中央が開いていて、躓くような障害物が無かったのだから。

 彼女はスマホに対する愚痴をこぼしながら、警鐘に従うように歩みを進める。

不安と不満。それが彼女の心を満たしていた。しかし、歩みを進めるたびに蛍光灯の音が増していく。部屋の臭いも。彼女はイラついてもいた。スマホが使えない。音や臭いが妙に気になる。

しかも、心の警鐘がうるさいぐらいに鳴っているのだから。

 どうして、私がこんな目に遭わないといけないのか。その時、彼女は思い出す。

「悔い改めたかい?」という少年の言葉を。しかし、どういう意味なのかは分からない。

悔い改める。何だろうか。過去に少年を侮っていたことだろうか。彼女にとってはいじめだと思っていない。侮っていたことは確かだけども。

 考えても仕方ないこと。しかし、考えずにはいられない。一体どういうことだろう。

 彼女は進んでいくと、不意を衝くかのように、臭いが強くなった。悪臭が立ち込める。彼女は来た道を引き返そうとした。だがしかし、後ろを振り向くと、壁しかない。今まで歩いてきた道はどこにいったのだろうか。

 彼女が戸惑っていると、狙いすましたかのように、蛍光灯の明かりが激しく点滅しだした。音もうるさいほどにまで高まっていた。

 彼女はあわてて耳を塞ぐ。けれども、悪臭が鼻を突いてくる。片方の手で鼻を押さえるも、今度は蛍光灯の大音量が入ってくる。

彼女は思いつく限りの対策をしても、無意味であることを思い知らされる。

 立っていられない。彼女はそのまま床に倒れてしまった。意識は無い。気絶である。

空間は再び歪み始める。何になるのかは分からない。彼女をそのまま閉じ込めるのか。

それとも、異物を吐き出すかのように、別の場所へと移動させるのか。それは誰にも分からないことなのだからーー。


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