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きさらぎ駅

 彼女は侮っていた。彼のことを。しかし、やがて転校することが決まり、彼と離れることになった。

そして、彼女は思い知る。彼のように侮れる相手がいないことを。

ついには、孤立することになってしまった。転校してきた異物として。それから何年経っただろうか。

彼女は大人になった。そして、ある日、疲れがひどく仕事帰りの電車の中で眠ってしまったのである。

 それが彼女に残された最後の記憶であったーー。

  

 彼女は気がつくと、誰もいない電車の中にいた。そして車掌に起こされたのである。終点であると。そして降ろされてしまったのである。

 スマホを見ると深夜2時であった。終電の電車は通らない。始発までは3時間もある。

彼女は時刻表を探そうとした。しかし、どこを探しても見当たらない。薄明かりの下で必死に探すも見つからないのだ。普通ならばどこかに必ずあるものなのに。

しばらくして駅名を見る。そこにはきさらぎ駅とあった。知っているようで知らない感覚に襲われる。

彼女は混乱してしまった。どこかで聞いたような。そうでないような。思考がグルグルと回っていく。

 しばらくすると、片足の無い老人が現れた。彼女にどんどんと近づいてくる。片足なのに。それすら問題ないという感じに。恐ろしい笑い声を上げながら。

どこからか祭囃子が聞こえてくる。深夜の2時だというのに。彼女はとっさに逃げ出す。

線路上を走り抜ける。疲れた身体だというのに。火事場のバカ力かは分からないが。

 トンネルを見つける。しかし、彼女は見てしまった。トンネルの奥。そこから伸びている無数の青白い手を。

彼女は叫び声を上げながら来た道を逆走する。駅へと戻らなければ。じゃないと殺されてしまう。本能が警鐘を鳴らし続けている。この地にいてはならないのだと。

やがて、駅に戻る。薄明かりが落ち着かせる。スマホを見る。午前2時を差している。体感では1時間も経っているのに。

 彼女がへたり込んでいると、少年が現れた。しかし、その顔を見て彼女は絶句する。そこにいたのは、かつて侮っていた少年だったから。

死んでいないはず。訃報は聞いていない。というか、初めてあった時と同じであることに気づく。

 夢なのだろうか。試しに自分の頬をつねってみる。痛い。現実である。なら、目の前にいるのは誰なのか。

 少年は彼女に近づく。彼女は立ち上がることすらできない。腰が抜けてしまったから。

少年は彼女に近づく。彼女のことなど知らないとばかりに。そして、囁くように言った。

「悔い改めているか?」

 それを聞いた彼女は気絶してしまった。


 彼女は気がつくと、とあるアパートにいた。記憶によれば子供の頃侮っていた彼の家の前である。

チャイムを鳴らす。しかし、鳴らない。誰も住んでいないのだろうか。というか、今は何時かスマホを見る。

しかし、文字化けしていて分からない。さっきまで、少年が近づいてくるまでは大丈夫だったはずなのに。

 というか、ここはどこなのだろうか。記憶によれば侮っていた彼は家族と一緒に住んでいた場所のはず。しかし、周りが違っている。彼女は迷い込んでしまったのだ。異世界に。

 彼女は元の世界に戻れるのだろうか。それは誰も知ることができないのだーー。

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