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第8話 魔力回復飴の無料配布をしよう

 次の日、店の配達を終えた後再び神殿へと向かうことにした。

 今回は朝に作成した魔力回復飴の試供品を提供するためだ。

 魔法薬と違って即効性はないものの中毒症状も出ず、少しずつ魔力回復に貢献してくれるという優れものだ。

 さらに優しい甘さなのでお口にも嬉しい。

 

「おはようございます。今日は試供品の提供に来ました」


 神殿入り口でそう声を掛けると、いつぞやの若い男性神官がやってくるのが見えた。


「やぁイリスさん、いらっしゃい。とりあえず奥へどうぞ」

「はい、失礼します」


 案内されるままに神殿奥の関係者専用の部屋に通される。

 関係者専用の部屋は男女共用の部屋と男女別の部屋の3種類に分かれている。

 その部屋にうち女性専用の部屋に俺は通されたのだ。


「イリスちゃんだ。いらっしゃーい」

「またお姉ちゃんたちに会いに来てくれたの?」


 ここでしばらく過ごしてからというもの、なぜか女性神官たちは俺に対して甘々な態度で接してくれるようになっていた。

 全く不思議な話である。


「やっぱりイリスちゃんは磨けばもっと光ると思うのよね」

「やっぱりグレモリー様のお孫さんってだけはあるわね」

「でも考えてみてよ。グレモリー様ってすごい年齢らしいけどあの外見、あの小ささ、あの愛らしさで子供を産んでるのよ? 相手は一体誰!?」


 話は師匠のほうへと移っていった。

 どうやら俺の爺さんが気になるらしい。

 というかうちに爺さんっていないんだけどね。


「でもそう考えると、イリスちゃんもいずれこの外見でこの小ささでこの愛らしさで誰かの子供を産むかもしれないんでしょ?」

「あっ、それを考えたらなんか眩暈が……」

「考えたくない現実が押し寄せてくる」


 どうやら一周して俺のほうに話が戻ってきてしまったようだ。

 そもそも俺的には結婚はしないから心配しなくてもいいんだけど。


「そういえば聞いた? この国の王女様が、行方不明になった姉姫を探しているそうよ」

「へぇ~。行方不明ねぇ。お家騒動か何かなのかしら」

「今の王家は全員仲が良いらしいからそれはないはずよ。たしか7人の子供がいるんだっけ?」

「そうそう。国王様には第一妃から第三妃までのお妃様がいて、第一妃が3人の子供を第二妃が3人の子供を第三妃が1人の子供を産んでいるはずね。そのうち第三妃は病気でお亡くなりになられているはずだから今は第一妃と第二妃だけになっているはず」

「ねぇイリスちゃんは何か聞いたことない? エルフ族でしょ?」


 不意に俺に話題が振られてきた。

 行方不明の王女様ねぇ。


「いえ、知らないですね。あまり国の話題には興味がないので」

「そっかー」


 というかその行方不明の話をエルフ族だからって俺に振られても答えようがないんだよね。

 これ、どう答えるのが正解?


「早く見つかるといいわね~」

「そうですね。家族を失うのは辛いですから」


 と、長々とくだらない会話に興じてしまった。


「あ、これ試供品です」

「これが前に言っていた飴ね」

「はい。即効性はないですけどじっくりと回復していくものです。代わりに中毒性はなくお口が甘さで幸せになります」

「あ、それいいわね。ではまず1つ」

「どうぞどうぞ」


 早速一人目の女性神官が試供品の飴を口に入れる。

 そしてカっと目を見開くと「おいしい!」と絶賛の声をあげたのだ。


「え~? そんなに? じゃあ私も。あっ、甘くておいしい」

「いただきます。あ、これいい」

「すき」


 その後も続々と好評の声を頂く。

 どうやらこの方向性は良さそうだ。


「最近は砂糖の流通も整ってきていて価格も下がってますからね。まぁ魔力回復飴にするとまだお値段はそこそこしちゃいますが……」


 この飴は砂糖と魔力回復を手助けしてくれる【クリネ】という薬草を使用している。

 自然採集もできるのだが絶対数は多くなく、精霊と協力することで一定数の量を確保することに成功したものを使用している。

 これは俺にしかできないと思ってもいいだろう。


「うんうん。これなら私たちも嬉しいかも」


 やはりお姉さん方には大好評な様子。


「とはいえ食べすぎはだめです。まだ見ぬ弊害も出るかもしれませんし何より太りますので」

「うぐっ」


 人は肉体の限界以上に魔力をため込むこともなければ結晶化することもないので尿や汗と一緒に大抵は抜けて行ってしまう。

 しかし糖質はしっかりため込むことができるので魔力は溜まらなくても脂肪は溜まっていくのである。


「一応今後も定期的に無料配達しますので焦らず適度に摂取してくださいね」

「「「は~い」」」


 残酷な話かもしれないけど糖質の摂りすぎには注意しようねという話である。


「それにしても、いくら値段が下がってきてるとはいえまだまだ高級品でしょ? それなのに無料で神殿に寄付してもいいの?」


 そう問いかけてくるのは回復術士の女性だ。


「はい。一時的には赤字でも皆さんが宣伝してくださるだけで他の方々が買いますので」

「なるほどねぇ」


 実際神殿からの情報は馬鹿にできない。

 今はそうでもないかもしれないけど、そのうちもっと広まれば大口での購入希望者が来るかもしれないからだ。

 とはいえ、生産設備はまだゴミみたいなものなので、俺がどうにかしないといけないわけだけど……。


「噂を広めるのなら任せて! 私たちの可愛い妹を立派に咲かせて見せるわ!」

「「「おおー!!」」」


 俺はいつの間にか神殿で働く女性たちの妹にされてしまったらしい。

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