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第7話 振り返って前に進め 神殿での依頼をこなそう

「イリスさん、なんだか大変なことになっていますね」


 戻ってきた受付嬢にそんなことを言われてしまった。


「自分で蒔いた種が9割くらいなんですけどね……。はぁ口調とかいろいろと気を付けていかなきゃか」

「少しずつ頑張ってくださいね」

「がんばります」


 いつまでもバカみたいな口調でいるわけにもいかないし、まずはちゃんと全員に敬語を使えるように訓練していこう。

 あとけんかっ早いところも直したいし……。

 思い返せば10歳の時まではこんな感じじゃなかったんだよなぁと思いだす。

 もしかしてグレた!?

 改めて自分の現状を認識した形になってしまった。

 

「ふふ。それならますます神殿でのお仕事はイリスさんのお役に立ちそうですね」

「そう、かも……です……」


 というわけで依頼を受領した俺はその足で神殿へと向かった。

 神殿は街の中央北側に存在しており、人々が通いやすい場所に建てられていた。


「おはようございます。探索者組合からやってきました」


 おはようございますと挨拶するのは癖みたいなものだから気にしないでほしい。

 一通り声掛けを終えると、神殿の奥から男性神官が出てくるのが見えた。


「イリスさん、ですね。お待ちしておりました」

「はい、よろしくお願いします」


 神官さんは20代前半といった見た目をしている。

 非常に礼儀正しいイケメンな青年という感じだ。


「回復術の手伝いと行儀作法とのことで伺っております。こちらへ」

「はい。って、えっ?」


 知らない間に行儀作法まで追加されてしまっていた。

 もしかしてあの受付嬢さん!?


「探索者組合から依頼に付け加えてほしいとの連絡が来たんです。ですので回復術士のお仕事のほかにしばらくは礼儀作法を学んでいただきます」

「わ、わかりました」


 そういえば依頼期間について確認していなかったなと今更ながらに思い出す。

 とはいえ、これは渡りに船なのかもしれない。


「では本日は、そうですね。まだ日も高いですし夕暮れまで礼儀作法の座学といたしましょう。当神殿の女性神官が担当致します」

「余、よろしくお願いします……」


 そんなわけで俺は日暮れまでひたすらに礼儀作法を所作を教えられることになった。

 ついでになぜか俺にも神殿の回復術士の服を支給されてしまった。

 明日からはこれに着替えて担当することになる。

 

「さて、日暮れまでひたすら礼儀作法と所作について学んできましたが、評判で聞くほど粗野ではないようですね。どこかで基礎を学んでいましたか?」


 担当してくれた女性神官は30代の女性だった。

 栗色の髪の毛は長く、優しげな容貌をしている。

 

「えっと、はい……。ですが、その……」


 どこで学んだかを俺は言いたくなかった。

 それを察したのか、女性神官はまた口を開く。


「事情はよく分かりました。当神殿にも時折貴族の子女や別の国の王女殿下なども修行に参ります。今回は期間限定の依頼ではありますが、いつでも修行にいらしてくださいね」

「はい、ありがとうございます」


 一通り話も終わり、片づけを始めた時のこと。


「そういえば先ほど回復魔法を見させていたd買いましたが」

「あ、はい」

「光の精霊のお力をお使いになられるのですね」

「えっと、はい」


 これがなんの確認かは正直分からない。

 けど、精霊以外の種が精霊の力を使うのはとても奇妙なことなのだ。

 そもそも力の根源が違うという理由がある。


「イリスさんには、深い事情がありそうですね」


 女性神官はそう口にすると、意味深にほほ笑んだ。

 この日から1週間ほど継続して神殿での依頼を行うことになる。

 ほぼ丸一日、朝から夕暮れまで繰り返し行われる形だ。


「あれ? イリス。女性回復術士の服なんか着てどうしたんだ?」

「えっと、探索者組合の依頼です。はい」

「ほほぅ。こうしてみると、やっぱ女だな~って改めて思うわ」

「うる……いえ、えっとあまり変なことをおっしゃるのは遠慮していただきたく思います」


 ちらりと周囲を確認すると俺が担当している男性傷病者のことをじっと睨んでいる女性神官たちがいた。

 セクハラ禁止、セクハラダメ絶対。

 

「す、すみません」


 そんなトラブルもありながら一週間俺はひたすらに頑張った。

 時には。


「これ、イリスさんが魔法錬金で作った魔法薬なんですか? 魔力回復用?」

「そうです。師匠から学んでいる最中なんですけど、比較的よくできたとのことで」

「本当に貰っていいの?」

「はい、試供品なので少ないですがよければ」

「ありがとうー!」


 休憩中に俺が作った魔法薬の売り込みやテスターを試してもらったりしていた。

 これがなかなかに評判がよく、ぜひ作ってほしいとお願いされてしまう始末だ。


「はい、ありがとうございます! 次は少し使いやすいように飴玉にしてみようかと考えています」

「飴!? それは素晴らしいですね」

「ぜひ!」


 この国は異世界人転移者なども受け入れているせいか、砂糖の供給もかなり増えているのだ。

 ありがとう、異世界人の転移者・転生者たち。

 そんなこんなで、俺は1週間の依頼を終えることができた。


「まだまだ教えるべきことはありますので、ぜひ依頼以外でも通ってきてください」

「はい、ありがとうございます」


 知らない間に神殿の人にも受け入れられていたようだ。

 もう半分実家のようになっている気がする。

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