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第59話 イリスの事情とフレアさんと店舗契約

 このフレアさん、完全に母親の関係者だった。

 いや、さっき話してた言葉を聞けば想像はできたけどね? 俺の記憶なんかもう完全に当てにならないし!


「フレアちゃん……」

「ブラン様、どうなさいましたか?」

「あぁ、えっとその……ね?」

「ブラン様といえばイリス姫様とどこかへ行かれたと後程聞きましたよ? ティアナ様のお母上を頼られたとか」

「あぁ、うん、そう、よ?」


 フレアさんに押されまくりだんだんと言葉が弱くなっていくブラン。

 これ、言い出したくても言い出せない奴か。

 面白いからどうなるか見ておこう。


「そういえば今回いらっしゃった方の中にも同じような名前が……。んん?」


 と思っていたところ、突然フレアさんが俺のほうを見てきた。


「見たことのある髪色ですね……。お顔も見たことがあるような……」


 人の記憶は様々である。

 さすがに5年も過ぎればあいまいになっていてもおかしくはないというもの。


「んん~? あ、あれ? もしかして……!?」


 ようやく自分の中の違和感に気付いたのか、フレアさんが目を丸くしてしまった。


「イ、イリむぐぅ!?」

「はーい、フレアちゃん、個室に行きましょうね~。アナちゃん?どこか防音性能に優れた個室はあるかしら?」

「あ、はい、ありますよ! 地下になります。こちらです!」

「むぐー!」


 商業組合の組合長を羽交い絞めにしながら俺たちは地下へと向かう。

 そういえば思い出したけど、フレアさんってどこかの商業組合の組合長の娘さんだったっけ。

 それで見習い目的で母の侍女になったとか。

 今はこうして父親の跡を継げるくらい立派になったのかぁ。


 ちなみに商業組合の組合長は別に世襲制ではないそうだ。

 実力を認められれば5年で昇ることも可能なのだという。

 つまりフレアさんは才女ということになる。

 そんなことを考えながら地下へと向かい、アナさんの案内でとある一室に入る。


「おぉ、音が吸収されて反響しません!! これならいくら騒いでも安心ですね!」

「騒ぐのはだめでしょ。大人しくしなさい」

「はーい」


 どうやらあいなは防音室に来るとはしゃぎたくなるタイプの子のようだ。

 まぁ普段と違う感じがして少し楽しいのはわかる。


「はーい。じゃあフレアちゃん解き放ちますよ~。3、2、1、0~」


 ブランがのんびりした口調でカウントダウンし、0になったタイミングでフレアさんの口から手を放す。


「ぷはぁっ。はぁっ。はぁっ」


 解き放たれたフレアさんが肩で息をするので少し待つ。

 すると落ち着きを取り戻したのか、再度フレアさんがこちらを見る。


「イリス姫様あああああ!!」


 感極まったのか、俺に向かって突進。

 そのまま抱き着いてくると俺の頭を胸に押し付けてぐりぐりと揺らす。

 気持ち悪くなりそうな振動が俺の頭を襲っていた。


「はーい、フレアちゃん? イリスちゃんが苦しんでるから落ち着きましょうね~? それに今はお姫様じゃなくて普通のイリスちゃんだから間違えちゃだめよ? 向こうだって定期的にイリスちゃん探してるんだからばれたくないし」

「あ、ご、ごめんなさい。私ったらうっかり……」


 ばれたくないというのはそうだけど、俺と兄妹の問題もあるし国と祖母である師匠との問題でもある。

 なので簡単にこうすれば解決とはならないのが現状だ。

 師匠はこの国を見捨てても良いと思っているからなおさらだね。

 その決意がドレアの王族身分進入禁止政策として現れている。

 ドレアは王族という身分のまま入ることができない唯一の街となっているのだ。


 それからしばらく、事情を説明しフレアさんと認識を合わせていく。

 今回来た目的も店舗を確保するためだしね。

 ただし、知り合いだからと言って依怙贔屓はだめなのでちゃんとした取引をすることが前提だ。

 まぁそんなこと言わなくても商業組合所属な以上分かり切っていることだろうけど。


「なるほど。よくわかりました。イリス様が気に入りそうな物件をご紹介できればいいのですね」

「そういうこと。これはターレスの街での取引記録よ。現在は定期的に高純度の鉄鉱石を卸して関係構築をしているところね」

「なるほど。これなら信用照会は必要なさそうです。取引先に地の精霊の採掘場があるのも素晴らしいです。さすがはイリス様といったところでしょうか」


 ターレスでの取引記録を見たフレアさんもこれなら問題ないと太鼓判を押す。

 それもそのはずで取引相手は商業組合だし、物件紹介や仲介はそちらの副組合長だからだ。

 さらに少量しか取引できないと言われている地の精霊の採掘場産の高純度鉄鉱石を大量に仕入れられる人脈。

 これで通らない審査は基本的にないだろう。


「お値段は少し張りますが、温泉施設付きの大きめの建物があります。倉庫などもありますので荷馬車の乗り入れもできますし大口の売買も可能です。ただまぁお値段が張りますので、200万ブラウといったところでしょうか」

「200万かぁ。払えるけど現状だと少し心許ないかなぁ」


 ターレスでの取引は続いているので400万以上の金額になることは確定している。

 ただちょっと回収には時間がかかるのがネックなのだが……。


「分割支払いできますので問題ありません。分割支払いの利息は1%なので202万ブラウとなりますが、よろしいでしょうか?」

「ブラン、エイリス、どう思う?」


 フレアさんの提案を受け2人に相談する。


「それならいいと思うわ。頭金に手持ちのほとんどを支払っておきましょう」

「そうですね。頭金は多ければ多いほどいいですから。他の資金調達はこちらでもできますので問題はないでしょう」

「じゃあ決まりだな。それでお願いします。フレアさん」

「はい。承りました」


 こうしてまだ完全に手に入れたわけではないが、アルタイの街での店舗を確保することができた。

 あとは資金繰りだけだな。

 やること増えてきて、ちょっと楽しくなってきた。

よろしければポイントなど入れていただけると大変励みになります!

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