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第58話 アルタイ商業組合にて

 謎の乳白色に輝く球こと【真実を見通す者】の種を手に入れた俺はそっと空間収納にしまう。

 どういう風に使えるかはわからないけど、俺たちの領域に植えてみようと思ったからだ。


「あ、改めまして、アルタイへようこそいらっしゃいました! 色々想定外の事が起きてしまいましたが、皆さん問題なく街に入ることができますので、審査証をお持ちになり扉を開けて外に出てください。その扉の外はもうアルタイの街ですので」

「あ、ありがとうございます」


 どうやら問題なく通過することができたようだ。

 というわけで早速お礼を述べると、俺たちはアルタイの街へと向かった。


「ここがアルタイの街、ですか? なんというか温泉街みたいです」

「だな〜」


 扉を出てすぐ見えた光景は街を分断するかのような大きな川と橋だった。

 川からは湯気が立ち上っておりそれなりの温度があることを感じさせている。

 流れの方向を確認してみると、どうやら少し遠くにある雲のかかった山から続いているようだ。

 風に乗って漂ってくる硫黄の臭いがとても濃い。


「ここがアルタイかぁ。本当に温泉の街なんだな」


 あいなの言葉を繰り返すようだけど心の底からそう思う。

 それに俺、温泉大好きだし。


「それではまずは商業組合に向かいましょう。ここの物件も他の街と同じように商業組合が管理していますので」

「そうねぇ。良い物件があれば温泉も楽しめそうだし、探す価値はあるわね〜」

「温泉!」

「温泉なんて久々ね、グレース」

「温泉なんて久々よね、お姉ちゃん」

「温泉温泉〜。イリスさんといっしょに温泉〜♪」

「誰も一緒に入るなんて言ってねえぞ」

「!?」


 若干浮かれ気分のみんなの中に別のベクトルで浮かれているやつがいたので釘を差しておく。

 前に入浴したとき俺の裸をガン見してきたのは忘れてないからな!!

 こいつ、同性だってのにいやらしい目で見てくるんだよなぁ……。


「ふふ、仲がよろしいのですね。少し妬けてしまいますわ。それではこちらです」


 エイリスさんはそれだけ口にすると俺たちを何処かへと案内し始める。

 行先に大きな建物があるのでおそらく商業組合に行くのだろう。

 しばらく歩き、直線上にあった川沿いの大きな建物にたどり着くと、エイリスさんが扉を開けた。


「こちらですわ」


 色々と知っているのかエイリスさんはそれだけ口にすると建物の中へと入っていってしまった。


「はー、見た目通り大きいなぁ」


 商業組合のある建物は4階建ての建物だった。

 建物の内部は中央に受付カウンターがあり、その周囲に事務室や商談室などが配置されているようだった。

 建物中央部は2階まで吹き抜けになっており、渡り廊下に沿うようにして部屋やお店などが配置されている。

 2階にはテナントのようなものがあるらしい。


「あの、どのようなご要件でしょうか……」


 恐る恐るといった感じで俺たちに声がかけられる。

 視線を向けるとそこには可愛らしい桃色髪の美少女がそこにいた。

 長い桃色の髪がとてもチャーミングだ。

 なお服装はよく見かける商業組合の服なので、おそらく制服だろう。


「新人さん? 見かけたことのない顔ですわね」

「は、はい! 新人の【アナ】と申します。それでええっと、貴女方は……」


 思わず馬鹿正直に自己紹介をしてしまったのだろう、慌てている少女アナさん。

 俺たちのことを確認する前に名乗っちゃって良かったのだろうか。


「わたくしはエイリスと申します。【フレア】はいるかしら」

「あ、えーっと、エイリスさん、ですね? 組合長にご用ですか? ええっと、ご予約とかは……」

「あらごめんなさい。していませんでしたわ。一度エイリスが来たと伝えてもらえるかしら。ダメなら帰りますわね」

「あ、えっと、か、確認してきます!! 少々お待ちください!!」


 アナさんはそれだけ伝えると、大急ぎでどこかへと走っていってしまった。

 俺たちを放置していくのは構わないけど走っちゃダメじゃないかな?


「本当に新人なのですね。少々慌てん坊ですけど可愛らしいですわね」

「そうだなぁ」


 本当はダメなんだろうなーと思いつつ、しばらくなんだかほっこりしたような気分で待っていると2人の足音がこちらに向かってくるのが聞こえた。

 1つはなんとなくアナさんだと思うけど、もう1つはわからない。

 さっき言っていたフレアさんだろうか?


「エ、エイリス様! た、大変申し訳ございません……」


 早々にやってきて深々と頭を下げるえんじ色の髪の小柄な女性。

 どうやらこの人がフレアさんのようだ。

 ぴょこんと突き出た耳から察するにエルフ族であると思われる。


「あら、いいのですよ? 可愛らしい新人さんも見られたことですし。フレア、早速で申し訳ないのですけれど、紹介いたしますわね。こちらがわたくしの主である、イリス様ですわ」

「あ、えっと、イリス、です……」

「エイリス様の主様……。祖、それは大変失礼致しました。私はこのアルタイ商業組合で組合長を努めております【フレア】と申します。見ての通りのエルフ族でして……」

「あ、改めまして【アナ】です! エルフ族です」

「よ、よろしくお願いします」


 どうやらアナさんもフレアさんも2人ともエルフ族だったらしい。

 ということは2人ともまだ若いってことか。


「はい、よろしくおねがいしま……。あれ? えっ? もしかしてブラン様……?」

「あら〜、よく見たらフレアちゃんじゃない。こんなところで会うなんて予想外ね〜」

「はい。ティアナ様の侍女を辞めて以来ですね。あぁ、私たちのイリス姫様は今頃何処に……」


 何やらブランと知り合いな様子。

 俺にもうっすら記憶があるようなないような……。

 というか、ちょっとまずい展開になってきたぞ……。

 どうしよう!?

 

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