第57話 アルタイ側転移の間での出来事
宗家さんについていった先にある鳥居。
その鳥居をくぐると白い何もない空間へとたどり着いた。
中心にある鳥居は俺たちが入ってきた鳥居で、その外周にも円形になるようにいくつもの鳥居が設置されている。
非常に不思議で不気味な光景でしかない。
「ここにある鳥居はすべて別の場所に繋がっています。一見するとどの鳥居がどの場所のものか分かりませんが判別するコツがあるんですよ」
宗家さんはそう口にすると鳥居の中心の何もない空間にそっと手を当てる。
「おぉ!?」
すると鳥居の中心に行き先と思われる景色が見えたのだ。
まるで水面に映る景色のように揺らいだ姿を見せている。
「転移を使えない者はこのようにして行き先を決め移動しています。本来であればもっと楽にしたいところなのですが整備も出来ていない状況でしてな」
「なるほど……」
本来なら行き先が分かりやすいように整備されるはずだったのだろう。
だけど何らかの事情で途中で止まっているようだ。
「アルテミシア、どうにかできたりしない?」
なんとなくアルテミシアに対応可能かを確認してみるものの首を横に振られてしまった。
「この場所のはちょっと難しい。できるかもしれないけど時間がかかる」
「う~ん……。そっかぁ」
「まぁまぁイリス様。今はまだ困っておりませぬ故、このままで問題ありません。そのうちどうにかなるかもしれませんからな。ではこちらの鳥居からアルタイへと迎えます。アルタイ側の転移の間に着くとそこで審査が受けられますので手続きをお願いします」
「なるほど。転移先も一度転移の間を経由するんですね」
「その通りです。手続きはすぐ済みますゆえ、諸々の用事が終わりましたらまたこちらに戻ってきていただけますでしょうか」
「わかりました」
一通り説明が終わったようなのでアルタイへと向かう鳥居の前に立つ。
そしてなんとなくその中心の空間に手を触れると、空間が波打つように揺れ街の像を映す。
「イリス様なら問題なく使いこなせるでしょう。ではお気をつけて」
宗家さんはそう口にすると俺に向かって頭を下げて一礼。
俺も慌てて一礼しようとするがエイリスに止められてしまった。
「イリス様。いけません。それでは宗家、また会いましょう」
エイリスはそれだけ言うと俺の手を引きアルタイへと向かう鳥居の中へ入っていく。
俺はよくわからないままその後に続き、他のメンバーもそれに続いた。
そのまま俺たちは鳥居を抜けると、今度は木造の部屋のような場所にたどり着く。
背後には光の渦を中心に抱いた鳥居が1つ。
「ようこそアルタイの街転移の間へ。ここは精霊のための入街審査所です。そしてようこそいらっしゃいました、イリス様」
少し後、目の前に1人の少女が現れた。
黒髪黒目で小袖のような服を着た可愛らしい少女だ。
「咲那、お久しぶりですね。本日は事前にお伝えした通りイリス様及び精霊と仲間の従者の人間を連れています」
「エイリス様、お久しぶりです。はい、既に準備はできております。まぁ入街審査などと言っても大したことをするわけではありませんけどね。危険な物質や生物を持ち込んでいないかくらいの確認です。人間の犯罪者などがここに来ることはそもそもありませんし」
にこやかにほほ笑みながらそう語る黒髪の少女咲那。
見た目にそぐわず色々と経験しているようだ。
「では中央にある木の枠を通り抜けてください。それだけで十分ですので」
咲那がそう言って指示した方向には木の扉の枠が1つだけ置かれていた。
よくはわからないけど、あの枠を通り抜けるだけのようだ。
「ではわたくしから」
そう言ってエイリスが先に木の枠を通る。
すると木の枠から白い粒子が立ち昇るのが見えた。
あれはなんだろうか。
「はい、エイリス様は問題ありませんね。と、このように何も問題がなければ白い粒子が立ち昇ります。この木の枠は星の里の月の遺跡に生えている木で作られているんですよ。そんな環境のせいなのか善悪の判断や危険なものの判断を全て代行してくれるんです」
「へぇ~、変わった木があるんですね」
そんな人々を審判するような樹木が存在しているのか。
月の遺跡には変わった植物が生えているんだな。
「正確には太古の昔に作られた【意志ある木】の1つです。その枠は【真実を見通す者】と名付けられた木で作られているんですよ」
と、俺が感心しているとエイリスが補足説明をしてくれる。
なるほど、そういう不思議な気が存在するのか。
もしかして遺伝子操作とかで生まれたのだろうか?
「じゃあ次は私が!」
俺が再度感心しているとあいなが続いて木の枠に突撃。
白い粒子を昇らせて無事通過。
続いてアルテミシア、ブラン、エリア、グレースが通り抜け問題なく通過した。
「まぁ本来皆さんは審査する必要ないんですけどね……」
咲那さんも仕方ないといいつつお勤めしてくれているようだ。
では次は俺の番だな。
「よし、じゃあ行くぞ」
意気揚々と、しかし若干緊張しつつ木の枠を通り抜ける。
「あっ!」
すると周囲が一瞬ざわめいた。
俺はなんか悪いことしたっけ? と思いつつ木の枠を見る。
すると木の枠からは乳白色に輝く光の粒子が立ち昇っていたのだ。
「あー、これ、どうなるんだ?」
「わ、わかりません! こんな状態初めてですので……。悪い人や危険なものがある場合は黒や赤になるんですけど、こんな色の光は初めてです!」
どうやら咲那さんにも想定できない事態が発生しているらしい。
どこかにマニュアルとかないのだろうか?
そんなことを考えていると、乳白色の輝きは少しずつ収まり、乳白色に輝く1つの玉を落とした。
「なんだこれ?」
足元に転がったその謎の玉を拾い上げる。
「【真実を見通す者】の種、ですね。一度だけ見たことがあります」
謎の玉を転がしながら見ていると、エイリスが近くに寄ってきてその正体を教えてくれた。
これが、種……?
「種、なのか? なんでまた……」
「わたくしにもわかりませんが何かしらの意味があると思います。ところで咲那? そろそろ落ち着きなさい。異常事態ではありませんので」
「あっ、はっ、はいっ!」
慌てながら何やら巻物を確認していた咲那だけど、エイリスの一言でハッと我に返り動きを止める。
どうやら異常事態のマニュアルを確認していたらしい。
「この件は他には秘密にしなさい。それと、その後以上や異変がないか確認しなさい。動作に問題が出るようでしたら再度報告を」
「わ、わかりました!」
俺にはエイリスの立ち位置のことはよくわからないけど、話を聞く限りかなりの立場にいるようだ。
なんとなく思っていたけど、もしかして俺って、すごい人と知り合いになってる感じか?
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