第56話 星の里からアルタイへ
現里長の執務室。
外から見ても大きかったが、中に入るとさらに大きなことがよくわかる。
なぜなら奥に1つの大きな机があり、その上に大量の書簡が置かれているだけにとどまらず、周囲にもずらりと小さい机が並べられそこでたくさんの精霊族たちが積み上げられた書簡を読んでは何かを書き加えるという作業をしていたのだ。
30人以上はいるかもしれない。
「ずいぶん人がいるんですね」
「はい。星の里ではこの近辺の取りまとめをしておりまして、その調整やら何やらで色々と人手が必要なんです」
「なるほど」
説明によるとこの地域の取りまとめ役もこの里がしているらしい。
だからこれほどの人数が事務仕事をしているのか。
「ようこそいらっしゃった。イリス様」
「あ、どうも……お邪魔しています……」
現れたのは大柄な中年の男性の精霊族だ。
筋肉質で戦国武将とかやってそうな見た目をしている。
ちなみに黒髪の武士の裃のような衣装を着ている。
「里長。イリス様方をお連れ致しました」
「ご苦労。【宗助】」
「はっ」
宗助と呼ばれた先導してくれた門番の精霊族はそう口にし一礼するとすっと部屋から出ていった。
それにしても名前、和風だなぁ。
「エイリス殿、ブラン殿、アルテミシア殿はお久しぶりといったところですな。特にアルテミシア殿は精霊の国に行かなければ会えもしないだけに珍しい」
「ん」
「お久しぶりですね、【宗家】」
「貴方、相変わらず大きいのね」
どうやらエイリスたちはこの宗家という精霊族と知り合いなようだ。
ということは大精霊級であるのだろう。
「中級精霊の双子か。遠く噂には聞いていたぞ。2人揃うと上級精霊をも超える力を出せるとか」
「あら? 私たちをご存じなの?」
「面白い話かしら?」
「いやなに、非常に元気が良いと聞いているだけだ」
「「ふぅん」」
どうやらエリアとグレースの話も届いているようだ。
たしかにすごく元気が良くてめちゃくちゃ暴れてたイメージがある。
「同行者の人間は異世界人だったな。まぁこの世界は存外異世界人は珍しくないのでは、見かけたら情報交換してみるといい」
「ほぇ~、そうなんですね~。ありがとうございます!」
俺はほとんど会ったことはないけど、女神の話ではちょくちょく異世界人がやってくることがあるとのことだ。
いる場所とかは聞いているのでいずれ出会うこともあるかもしれない。
「私がこの星の里の現里長の【宗家】です。此度はイリス様にお越しいただき、恐悦至極に存じます。この地域を管理している辰巳から話は伺っておりますが、まずはどの件からご案内いたしましょうか」
改めて宗家さんが俺のほうに向き直ると、今回の用件を確認してきた。
さて、まずはどれから進めるべきだろうか。
「エイリス、ブラン。アルタイの街の件とこの里の件だとどちらが優先度高そう?」
判断に困った俺はとりあえず2人に相談する。
どれからでもいいのだろうけど、逆に時間が迫っている物がないか気になったからだ。
「まずはアルタイの街の物件購入でいいでしょう。月の遺跡に関してはイリス様のお好きなように」
「そうねぇ。私もアルタイが良いと思うわ。拠点は大事よ? あとは温泉かしら」
エイリスは淡々と答えてくれたけどブランは温泉を期待しているらしい。
まぁ探してはみるけど、温泉付き物件って管理が大変だよ?
「ん~、了解。じゃあその方向で」
というわけで方向性は決まった。
まぁ特に異議もないようだしこのまま進めていこう。
「承知しました。では私がお連れ致しましょう。なに、里から繋がる転移陣がありますのですぐですよ」
宗家さんはそう口にすると、執務室の入口へと歩いて行ってしまった。
「それじゃいきましょ、イリスちゃん」
「里にある転移陣は各街の社に通じています。誰にも見られることはありませんからそのまま安心してください」
「いいのかなぁ……。一回も入街履歴ないんだけど……」
こういった転移の時って審査関係とか証明関係ってどうなるんだろう。
考えれば考えるほどガバガバな気がしてくるなぁ……。
「ん。難しいことは大丈夫。行けば分かる」
ついにアルテミシアにも心配されてしまったので大人しく付いていくことにした。
「ではこちらへ。この社の鳥居をくぐれば転移の間に移動しますので、そこからアルタイ行きの鳥居をくぐります。こちらです」
そう言われて案内されたのは執務室近くにある日本でもお馴染みの神社の鳥居であった。
まさかこんなところにも鳥居があるとは……。
「ふぉおおお!! 鳥居ですよ鳥居! まさか鳥居に再び出会える日が来るなんて!!」
あいなは久しぶりに見た故郷と共通の構造物に感動を覚えているらしい。
しかし、なぜ鳥居なんだろ? もしかして月の女神は日本人に関係があったりするのだろうか。
「ほらあいな。遊んでないで行くよ」
「あ、はーい」
あいなとアルテミシアの手を引きながら俺は宗家さんの後を追っていく
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