第54話 虹の橋へ
2日後、早くも俺たちは【アルタイ】の街へ出発するため聖域の森へと来ていた。
なおあいなは特別入場となっている。
「空が、変です! きれいですけど奇妙? なんか絵画の中にいるような、変でおかしな感じです!」
あいなが聖域の森の空を見ながらそう口にする。
たしかに聖域の森の空は虹色の層が空の上にあるから不思議にしか感じないよね。
あいなも混乱しているのか言葉が変になっている。
「あいな落ち着いて。ここの空はこういうものだから。ここだけ別の空間になってるの」
「あ、そうなんですか? 私てっきり違う世界に来てしまったのかと」
「半分間違ってないところがすごい」
あいなのやつ、妙に勘が鋭いな。
「ほうほう。それにしても不思議なところですね。空気も違う気がしますし……」
あいなは物珍しいのかあちこちきょろきょろとしながら見回している。
さて、あいなはしばらく放置だ。
「イリス様。こちらの森のゲートから裏道へ向かいます。裏道は虹の橋で繋がっていますので、途中精霊の国を遠目にですが見られると思いますよ」
「ほぉ」
エイリス曰く、裏道自体は虹の橋で構成されているらしい。
その間には精霊の国があるとのことなので、他にも色々な景色を見ることができるかもしれない。
「うぅ~……。さすがにつかれたわぁ~……。2日間寝かせてくれないなんて……」
ブランが死にそうな声をだしながら俺に寄りかかってくる。
どうやらブランは溜まっていた仕事を片付けるために寝ずに仕事をさせられていたようだ。
どれだけ溜めていたのさ。
「ん、自業自得」
「アルテミシア、ひどい……」
「アルテミシアもエリアもグレースも自分の仕事はちゃんとやってたからな」
「「次は残さないようにがんばりましょうね」」
「うぅ……。はーい」
まぁ大精霊には大精霊なりに重要な仕事があるらしいので、適宜頑張ってほしい。
そもそもうちに大精霊が集まってるのも変な話なんだけどさ。
「ブラン? しゃんとなさい。もう行きますわよ?」
「あ、は~い……」
ブランはエイリスに手を引かれ前を歩き始めた。
俺たちもその後ろに続いて目の前に展開されている光のゲートに向かって歩き出す。
「あ、まってくださーい!」
「慌てなくてもいいからちゃんとついてこいよ。慌てると転ぶからな」
「はーい!」
あいなはそのままとてとてと走り寄ってくると俺の横に並ぶ。
あいなに慌てさせると何が起きるかわからないので、ちょっとだけ注意しておこう。
場合によっては首輪とリードが必要かもしれないけど……。
そのようなことを考えつつ、俺はあいなの手を引いてゲートをくぐった。
「わっ、これ、浮いてるんですか!?」
「そうよ?」
光のゲートをくぐった先に待ち受けていたのは、宙に浮かんだ七色の光の回廊だった。
俺たちの足元にその七色の回廊があり、まるで虹の橋のようになっていたのだ。
「虹の橋っていうと、なんか昔そんな名前の橋の神話を聞いたような~」
「ビフレストか? 北欧神話の」
「あ、そうそう。それでそれです!」
何やらうんうんと悩んでいたようなので、俺が覚えている言葉を口に出してみた。
どうやら正解だったようで、あいなもすっきりとした顔をしている。
「それにしても、私の元居た世界にある神話と似たような現象が多いんですねぇ」
「そうだと思いますわよ? この世界をお創りになられたアイオン様とご親族様は異世界からやって来られましたので」
「へぇ~、そうなんですか。意外ですねぇ」
どうやらあいなはそういった話に興味があるようだ。
エイリスの話を聞きながらふんふんと頷いている。
「でもどうやって別の世界を作ったんですか? 世界と世界の狭間に行ってという感じとか?」
あいなの興味は世界の創造にまで及んだらしい。
そういうことに興味を持ってしまうお年頃なのかもしれないけど、深入りしすぎないようにな。
「アイオン様は世界をお創りにはなられましたが、世界と世界の狭間へと渡ることはできませんでした。そこでアイオン様はアイオン様のご家族と結婚されたとあるお方のお力をお借りします。この方が月の女神様のご両親です」
「へぇ~、それで?」
「アイオン様は世界と世界の間にわたる道を得、そこでそのお方の力を借りて新しい世界を創造なさいました。それがこの世界の始まりというわけです」
「なるほど……。つまり創造神であるアイオンさんとその謎の人が協力したからこそこの世界を作れたというわけですね」
「その通りです」
あいなって時々頭良いよなと俺は思う。
やっぱり天才型なんじゃないだろうか? 飲み込みが異様に早いもん。
「そうなるとその存在が気になりますね。一体どこから来たのでしょう」
「それは誰にもわかりませんわ。月の女神様に出会うことがあったらその時お尋ねになるのがよろしいでしょう」
エイリスはそう口にすると俺のほうをちらりとみた。
俺に聞かれても月の女神なんて知らないからわからないんだけど……。
「いつかお会いしてみたいです!」
「えぇ。お美しい髪の小柄なお優しい方ですよ」
「そうなんですか? まるでイリスさんみたいですね」
「ふふ、そうですね」
「あのなぁ……」
この2人、なんだかんだで仲が良いよなと思う。
そのまま俺たちはしばらく談笑しながら歩いていると、周囲の景色は何もない空間から草原や森や山のある空間にたどり着いた。
遠くには小さく城のようなものが見えている。
「ここが精霊の国ですわ。世界と世界の間の空間にそっと存在している、隠された世界ですわ」
エイリスがそう説明し、立ち止まる。
俺は周囲を見渡してみる。
空はうっすらと黄金のような色をしており、時折虹のような色合いが混じり変化していた。
空気は普通に存在しているが清々しく、呼吸していて気持ちが楽になるような気がする。
おそらく、天国を表すとしたらここになるだろう。
ここ精霊の国は、まさにそんな場所だった。
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