第53話 そしてあいなが現れた
「ふぉおおお!! 美味しいです! 美味! 美味!」
エイリスさんとしばらく会話しつつ【アルタイ】での動きを考えているとあいながこちらを見つけてやってきてしまった。
あいなは抹茶スイーツが好きなのか太る勢いでバリバリと食べている。
君の一日の摂取カロリー何日分が今この瞬間に消えていったんだい?
「ふぉふぉふぉ。気に入ってくれたようじゃのぅ」
「はい! もうこのお店の子になりたいくらいですよ! あ、でも私にはイリスさんがいるんでした!」
「は? いないが?」
「ふぉふぉふぉ。そうかいそうかい。イリス様が相手じゃかなわんのぅ」
やっぱりあいなは種族問わず人に好かれる傾向にあるようだ。
素直なところが好感に繋がっているのだろう。
「なんでですか! イリスさん!?」
「何でもも何もないだろ。俺は誰のものにもなる気はねーの」
「はっ!? つまりイリスさんはみんなのアイドルを目指していると!?」
「んなことあるかああああ!! アイドルになりたいならお前が目指せよな」
「それはもちろん、嫌です!」
「こいつ……」
あいなはいつもこんな感じなので少々場がうるさくなってしまう。
今回も周囲に迷惑がかかっていないか軽く見回してみたが、とりあえずまだどうにかなっているようだ。
気をつけないとなぁ……。
「あいなさんはいつも元気で可愛らしいですわね。ぜひそのままの貴女でいてください」
「ありがとうございます、エイリスさん! そうそう、この前錬金術室でいただいたお茶美味しかったです!」
「あら? お気に召したのでしたらまたいつでも。たくさん用意してありますので」
「嬉しいです!!」
あいなのやつ、いつのまにエイリスと仲良くなったんだ?
ちなみに俺はエイリスにそういった物を貰ったことはない。
なんとなくさみしいぞ。
「イリス様もお誘いしたいとは思っているのですが、イリス様には周りに精霊が多くなかなか……」
「あーわかります〜。イリスさん妙にモテるといいますか、必ず誰かしらが一緒にいるのでお誘いが難しいんですよねぇ〜」
あれ? 俺って外からだとそう見えてるの!?
たしかにブランやらアルテミシアが近くにいるときが多い気はするけど……。
どうやら俺の方にも少なからず問題があったようだ。
「そういうもんかねぇ」
「そういうものです」
「そういうものですよ!」
2人揃って同じようなことを言う。
なんで君らそんなに仲良いの?
「でも今日はエイリスさんと一緒なんですね?」
不意にエイリスと一緒にいることについて言及してくるあいな。
君は俺の彼女か何かですか?
「ふふ、今日はイリス様にご相談があったのですよ。次に向かう温泉街の【アルタイ】について」
「温泉!! 私温泉行きたかったんですよ! いつですか!?」
「あー、ブランが戻ってきたらだから数日以内ってところだな。その間こっちの店舗の管理責任者を用意しないといけないけど」
不在の間にやってほしいことは少なくとも4つだ。
1つめは精霊組合へ来る人の対応。
2つめは鉄鉱石の販売に関する対応。
3つめは在庫整理と鉄鉱石入荷に関する対応。
4つめは販売関係の対応。
「それでしたらこちらで人員を募集いたします」
「ありがとうございます。賃金については相手の希望に合わせられるので気軽に相談してください」
「はい、ありがとうございます。その方向で希望者を募りたいと思います」
「はえ~。サクサク決まりますねぇ~」
エイリスさんがいてくれて本当に良かった。
問題が速やかに解決したので後は結果を待つだけとなったのだから。
それにしてもあいなはなんというか、うん、自由だな。
「新しい抹茶菓子を用意いてみたのじゃがいかがかな?」
「いただきます!」
あいなよ、お前のカロリー収支がすごいことになってるぞ。
貯金ではなく脂肪を溜めてどうするのか。
まぁこんなこと言ったらただのモラハラなんだけど。
「ふぉふぉふぉ。よく食べなされ。まだまだたくさんあるからのぅ」
「やったー!」
まぁあいなはなんとなく代謝良さそうだから大丈夫か。
一応あとで内臓にダメージいってないか検査くらいはしておいてあげよう。
健康第一。
「そういえばさっき普通の人族の男性にお茶に誘われちゃったんですよね~。断りましたけど」
「あら、そうなのですか? まぁあいなさんはおモテになりそうですものね」
「え~、そうですかねぇ? でもいまいち興味わかないんですよねぇ」
そして唐突に始まる謎トーク。
その後しばらくはあいなのナンパされた話とエイリスの恋愛関係の話が続くのであった。
結論だけ言えばあいなもエイリスもそういったことに興味がない様子。
たまに俺に振られることもあったが、俺に振られても困るので適当に流す。
「あ、イリスおねえちゃーん!」
「あら? イリス様、お久しぶりです」
しばらくよくわからない話が続いた後、カフェにフラメルさんとエミルがやってきた。
どうやらここのカフェの常連であるらしい。
「おぉ、フラメルにエミル。よく来たのぅ」
2人を見て嬉しそうにほほ笑む辰巳さん。
「お爺ちゃん! 来たよ~!」
「お父さんは相変わらずねぇ」
「ほっほ。そうかのぅ?」
「あれ? 2人と辰巳さんは家族だったの?」
「そうじゃよ。わしの嫁さんがこっちの出身でのぅ。2人には武蔵式ではなくアイネティス式の名前を付けたのじゃよ」
「そうだったんですか……」
意外なことに、辰巳さんとフラメルさんとエミルは家族だったようだ。
さすがの俺もびっくりだよ。
「お姉ちゃんと一緒に座る~!」
「こら、エミル?」
「いやだも~ん! ね? いいよね? お姉ちゃん!」
「あ、うん。いいけど……」
なんだかよくわからないけど俺にくっつくようにしてエミルは俺の隣を陣取ってしまった。
「ぶー!」
「何膨れてんだよ」
そしてあいなが不機嫌になった。
頬っぺた膨らませて抗議してくるので、思わず頬っぺたを突っついてやったけどな。
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