第50話 ドレアであいなに出会った
メイドナースという謎の服装で回復術士の仕事をさせられたわけだけど、一体どんな罪を犯せばこんな不可思議な格好をさせられた上に恥ずかしい思いをさせられるというのか……。
これは神様を恨むべきではないだろうか。
許すまじ神様!
さて、神様への恨みを胸に抱いたまま俺は神殿を後にする。
給料はまぁまぁよかったのでその点だけは許せるかもしれないけど……。
「にふふ。見ちゃいましたよ! イリスさん、なんだか可愛い格好してましたよね!?」
「出たな、あいな」
どうやってここに辿り着いたのかはわからないけどドレアにあいりが出現していた。
最近あいなに若干甘くなったアルテミシアが転移陣を貸してくれたようだけど、神殿でのアルバイトの件はブランしか知らないはずだ。
しかしブランがあいなに伝えるとは考えにくい。
「まぁイリスさんを見つけたのはたまたまなんですけどね。私はちょっとお買い物目的でドレアに来ていましたので」
「ほぅ? 何を買いに?」
「着替えですよ? といっても古着ですけど」
「あー。ターレスだとそういうのあまり多くなさそうだもんね」
「そうなんです! 大きな街ですけど職人の街だな~って感じがします。ある程度古着屋はあるんですけどドレアに比べると全体的に少ないです!」
あいながドレアに古着を求めてやってきたように、ドレアには多くの古着屋がある。
ドレアの特徴として色々な人が集まる大きな街というのがある。
そうなると必然的に新しい服を売るお店も多くできることになるのだが、同時に売りに出される古着の数もそれなりの量存在することになる。
面白いことにターレスと取引する商品の中には古着も含まれているそうなのだ。
「まぁドレア都市学園にも服飾科とかあるからなぁ。あそこは色んな職業科があるからそこで学ぶ人も多いよ」
「こういう世界の学園って、『騎士だー!』『魔法使いだー!』ってのばかりじゃないんですか? よく読んでたライトノベルとかだと学園といえば貴族VS平民だー! とか騎士学科魔法学科だー! 対立だー! 王族だー! ってのばかりでしたよ」
「まぁ言いたいことは分かる」
たしかにドレア都市学園には戦闘関連の学科や魔術関連の学科などもある。
でもやはり力を入れているのは職人や商業という面が強い。
だからか建築学科なんてものもあれば植物学科なんて変わったものもあるのだ。
「ほほー。でも植物学は大事ですよね。微生物関係とか細菌関係なんかも必要だとおもいますし」
「あいなもなかなか良いこと言うね」
「ふへへ、そうでしょうか!?」
ちなみに近年そういった話も出ているとは聞いているので、科学分野も少しずつ発展していくのかもしれない。
ただそれと同時に魔法について以前よりは最重要視されるようなことはなくなっているらしい。
というのも、魔法は破壊的な力を行使する分には非常に楽だけど、何かを作り出すことに関しては苦手というか手間も考えることも倍以上かかるらしいのだ。
そういったものの一例が回復術士の不足だろうか。
回復術は必要な割にパーティーへの貢献度が見えにくく、大抵の場合は魔法薬で済んでしまうことがほとんどだ。
聖女や聖者といった上位クラスになるともっと色々なことができるのだけど、回復術士の護衛、発動までの詠唱時間、残り魔力による活動の制限などが地味に負担になるとのことだ。
当然それらはある程度効率化することはできるとのことだけど、まぁかかるコストを考えればやらないほうがいいと考える人も多い。
「イリスさん、私思ってたんですけど」
「ん?」
不意にあいなが問いかけてきた。
「魔法って便利なんでしょうか?」
「どうだろうね? 俺もほとんど使えないし」
あいなは魔法が使えない。
俺も一部を除けばほとんど使えない。
なのでこの問いに関しては答えることができなかった。
多分便利は便利なんだろう。
「遠距離攻撃にしても弓や投げナイフ、魔法攻撃じゃないですか。銃とかあってもいいと思いません?」
驚いたことにあいなは銃という言葉を持ち出してきた。
普段縁がない存在である銃。
あいなのスキルなら多分作れるだろう。
「一応火縄式と火打石式は海で使ってるらしいよ。陸地じゃほとんどお目にかかれないけど」
「ほほぉ! あ、でも海賊とか銃使ってるイメージですね」
「まぁそれはわかるけど、魔法使いが船酔いしてたり手数が足りない時のために装備してるらしいからね。まぁ銃に関しては硫黄と硝石が手に入ったら考えてみるよ。この辺りにはないし」
「残念です」
硝石はともかく、硫黄はドレア周辺では手に入らないので今後の課題だな。
どこか遠くに行った時に火山地帯があったら探してみるのもいいだろう。
ターレスにも取引がないようだし。
「じゃあイリスさん」
「どした?」
「今度遠出する時は火山方面の街にしてみましょうよ。硫黄も手に入るかもしれませんし温泉もあるでしょうから」
「温泉かぁ……。悪くないな」
「ふへへ。温泉のある街に拠点。なんか贅沢な気がします!」
どうやらあいなの思考は温泉街に行ってしまったらしい。
しかし温泉かぁ。
あとでブランに相談してそっち方面の街のルートでも確認してみるか。
俺、そのあたりのこと知らないんだよね。
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