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第5話 探索者組合にて1

 「うおおおおー! やったー!!  初めての魔法スキルだー!!」


 俺の悲願が1つ叶った日だった。

 これでようやく何者かになれる気がしたからだ。


「いいかい? あんたにはこれから魔法錬金を極めた錬金術師として立派になってもらうよ。勇者パーティーのことは一旦忘れて自分の技術を磨くことを優先しな」

「え? パーティーのことは気にしてないけど」


 師匠はまだ俺が未練たらたらだと思っているのだろうか?


「そっちじゃないよ。幼馴染たちのことさね」

「うっ、それはまぁ……」


 彼女たちは俺よりも強いので色々と自衛できるだろうけど、あいつのセクハラ攻撃は止まなそうだ。

 俺がいるときでも結構セクハラしていたし。


「お姉ちゃん勇者様と旅をしていたの~? 勇者様ってどんな人~? かっこいい~?」

「えっ? う~ん、どうだろう……?」


 純粋なエミルにどう伝えればいいか非常に悩む。

 ちなみに顔は実はまともに覚えてはいないんだよね。

 普通? な感じだったと思うけど。


「勇者様は今精霊たちの間で評判悪いんですよね」


 そう口にするのはエミルの母親のフラメルさんだ。

 評判が悪いって、あいつ精霊にもセクハラしたのか?


「ほぅ。ちなみにどんな風に言われてるんだい?」


 そこに興味を示したのが我らがばばあこと師匠だ。


「やっぱり一番はイリス様を追い出したことですかね。協力はするけど好意的ではないという感じで……。聖剣の精霊も前ほど積極的ではないようですし」

「おやまぁ。それは何とも。道理でルナの心象も悪くなったわけだ」


 師匠やほかの人はそう言ってはくれるものの、俺自身にまともなスキルがなかったのも1つの原因だろう。

 ハーレム云々は置いておいたとしてもきっかけではあることに違いない。


「俺、やっぱりソフィたちに守られてたんだな……」

 

 改めて今自分にできること、これからできること、やるべきことを明確にして成長していかなければいけないだろう。

 このまま俺が嫌われ続けたらあっちにも被害が出かねないのだから。

 俺たちの関係の悪化が勇者パーティーの破滅に繋がるなんて、そんなのは絶対嫌だから。


「ならちゃんと恩返ししてやりな。まぁ関係の修復なんてのは今考えなくてもいいだろう。そっちはあの子たちに任せておきな。とりあえずあんたは組合に配達に行きな」

「あっ、そうだった。いってくる」

「いってらっしゃーい」


 とうわけで、途中だった配達にこれから向かうことになった。

 まずは目の前の仕事を片付けてから他のことをやらないとな。


「そういえばフラメルや。家事と育児の合間に仕事をする気はないかい?」

「仕事、ですか? エミルの面倒を見てくれるのならやってもいいですけど」

「そうかい。ならイリスがいない間の配達を適度にお願いしようかね。もちろん家庭の事情を優先して問題ないさね」

「わかりました。それなら」

「助かるよ。うちは子育て家庭にも優しいからね。給金は満額出すよ」


 なんか後ろで師匠が勧誘を始めていた。

 まぁ配達員が増えるなら俺も助かるしな。


「んじゃいってきまーす」


 そのまま改めて一声かけて外に飛び出していった。


「よーし。んじゃ改めて探索者組合に配達に行きますか」


 今日の天気は晴れ。

 さっきまで雨だったせいか地面は濡れている。

 

 ちなみに俺の今日の服装は白いシャツに紺色のズボンという簡素な服装。

 髪はまだ短めなので、外見だけ見れば身長の小さい男児くらいのものかもしれない。

 ちなみにこの街の女性の平均身長は160-170程度らしい。

 

 街を歩いていくと色々な種族の人間に出会うことができる。

 ファンタジーでおなじみのエルフやドワーフ、獣人に竜人、それに魔族に人間、妖精族などなど。

 実に多種多様だ。

 特にこの街はエルフの国の辺境にあって人間の国との境くらいにあるらしい。

 貿易も活発な賑やかな街と言えるだろう。


「よっ、イリス。今日も配達かい? 変なのに絡まれるなよ?」

「ジェイソンのおっさん、元気そうで何より。まぁ絡まれたらとりあえず逃げるとするよ」


 道行く人と会話をしたり仕事をしている人に声を掛けられたりと、商店の仕事をしていると知り合いがどんどん増えていくのがわかる。

 配達を続けていればいずれは街中が知り合いだらけになりそうだ。

 そんなこんなで歩いていると探索者組合の看板が見えてきた。

 俺も一応登録してはいるけどまだ最低ランクなんだよなぁ。


「さてとさくっと配達しちゃいますか」


 気合を入れて探索者組合に突撃だ! たのもー!


 大きな扉を開けると中はたくさんの人でにぎわいを見せていた。

 組合自体の建物は大きめなので人でぎっちぎちだとかそういったことはない。

 広いホールの中央には資料や依頼情報、壁際には依頼掲示板や休憩スペース、入り口入ってすぐ手前に案内カウンター、奥に依頼受付窓口や新規登録窓口などなど、そんな感じの配置がされていた。

 つまるところ中央側はがらがらなのだ。


「ようこそいらっしゃいました! ドレア探索者組合へようこそ! ってあれ?」


 入ってそうそう勢いよく案内係の受付嬢に迎えられたのだが、俺を見て小首を傾げていた。


「イリスさん、今日は納品ですか? ご依頼ですか? それとも受注ですか?」

「今日はとりあえず配達のほうです。ついでに登録カードの更新もしておこうかなと。師匠の依頼で採集もあるかもしれないので」

「なるほど、承知しました! 私が責任をもって更新しますね! 納品物もお預かりします!」

「ありがとうございます」


 顔馴染みの受付嬢なので話はスムーズだ。

 とりあえず配達は自体は完了したので受取証を貰って登録カードを貰うまでは依頼掲示板でも見ておこうかな。


 探索者組合の昼間は比較的人が少ないほうなのだが、今日は人が多かった。

 なんでも突然の嵐に巻き込まれそうだったので依頼期間に余裕のある組は出発を見合わせたのだとか。

 とはいえ、備え付けの酒場では昼間からお酒を飲んでいる大人も多いようだが。


「さてと、何かいい依頼はっと。スキルも使えるし何か練習になる物がいいよな」


 いくつか今の俺でもできそうな依頼があった。

 例えば、神殿での臨時の回復師の募集なんかだ。

 急な事故などで怪我人が増えるなどして神殿の回復魔法担当者の手が塞がってしまった時などに張り出されることが多い。

 というのも、回復魔法を使える人って案外少なく、神殿関係で神聖魔法を学ぶか職業精霊の回復師に頼むかするしか方法がない。


「う~ん、回復魔法の練習にはちょうどいいのかもしれない」


 というわけで早速張り出されていた神殿での臨時の回復師の募集依頼に応募することにした。

 とはいえ、エミルと離れててもうまく使えるようになっているんだろうか? 若干気になるところである。


「イリスさん、お待たせしました! こちら登録カードと受領証です! ってあら? 何か依頼を受けるんですか?」


 戻ってきた受付嬢が俺の持っている依頼書のコピーに興味を示した。


「はい。ちょうど回復魔法が使えるようになったので習熟度を高めてみようかなと」

「か、回復魔法ですか!? それじゃあちょっと私で試してみてくださいよ」

「え? いや、だめですよ。奇麗な肌なのに傷をつけたりしては……」


 突然の申し出に俺は困惑。

 それにしてもこの受付嬢、行動力あるなぁ……。


「大丈夫です! 私も回復魔法が使えるので!」

「えっと、はい。それなら……」


 なんだかんだ押されつつ回復魔法を使ってみることになった。


「じゃあ行きますね。【ヒール】」


 針で指先を傷つけた受付嬢にヒールを掛ける。

 すると血はあっという間に止まり、針でつけた傷も消えてなくなってしまった。


「イリスさんが魔法を使えてる……。これはご報告に上がらないと……」


 一体どこに報告するつもりなのだろうか。

 そう思い改めて受付嬢を見るとエルフの耳をしているのがわかった。

 エルフ、組合所属、ふむ……。

 なんとなくこの受付嬢の正体が分かった気がした。

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