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第4話 初めてのヒール

 俺のスキルといえば【精霊との絆】という精霊と親密になれるスキルがあるだけだった。

 でもブランと仲良くしていたってこんなよくわからないゲームみたいなお知らせは今まで聞いたことがなかった。

 それにあの声、どこかで聞いたことあるようなないような……。


「お姉ちゃんどうしたの?」

「あ? あぁ、なんでもねえよ。それはそれとして俺配達あるから遊ぶならまた今度な」

「えー。配達ってお姉ちゃんどこで働いてるの?」

「グレモリー商店だよ」

「グレモリー様のところなんだー」


 どうやらグレモリー商店は幼女にも認知されているらしい。

 でもあそこってお菓子とか置いてなかったよな? 意外にあのばばあって人気あるのか? まぁ150cmのちびっこだからロリババアといえばそうなんだろうけど。


「グレモリー様には色々とお世話になっているんですよ。イリス様もすぐに周りに認知されると思いますよ?」

「そうかなぁ。俺って精霊と絆を結ぶくらいしかスキルねえし、なんなら魔法錬金の練習を今更始めてるくらいだしなぁ」


 どうやらばばあの評価はめちゃくちゃ高いらしい。

 おっと、ばばあっていってるのがバレたらまた折檻されちまう。


「大丈夫ですよ。イリス様ならすぐ上達しますから」

「ロリババアのくせに……」

「誰がロリババアだって?」

「ひっ」


 ロリババアと口に出した瞬間、師匠が現れた。

 一体いつの間にこっちに来たんだか……。


「グレモリー様、おはようございます」

「あぁ、おはよう。フラメルもエミルも元気そうで何よりだよ。それにしてもうちに孫は本当に口が悪いねぇ」

「そ、そんなことはございませんことよ……」

「はん。まぁいいよ。それより早く配達においき……ちょっと待ちな」


 師匠はそう言うと俺のほうに近寄ってきてしげしげと俺と精霊幼女エミルを交互に観察する。


「あんた、ロリコンだったのかい?」

「はぁ!?」


 このばばあ突然訳の分からないことを言い出したのだ! 一体どういうことだよ!!

 

「だってあんたとエミルの間に絆が結ばれているじゃないのさ。親密度が高くないとそんなのは結べないよ?」

「いや、ちょっとまってくれ。この子とは今日出会ったばかりだよ? 初めましてすらしてないのに親密度が高いとか絆が結ばれているとかどういうことなのさ!」

「そんなこと言ったってねぇ。まぁあんたの性癖のことはどうでもいいさね。それより一旦店に戻るよ。ついておいで」

「うへ~……」


 なんだかわからないけど大変なことになってきたぞ……。

 

 そのまま意味も分からず師匠について店へと戻る道を歩く。

 さっき通ったばかりの道をすぐにもう1回歩くことになるなんて誰が思う?

 やがて店に辿り着くと、ミューズさんとウィルさんが俺たち4人を見て目を丸くしていた。


「グレモリー様、いつの間にこちらに? それとイリスちゃんとフラメルさんにエミルちゃん? 不思議な組み合わせね」

「あれ? エミルちゃん何か雰囲気変わった? 気のせい?」

「あんたらは鋭いのか鈍感なのかどっちなんだい。まぁいい。ちょっとの間だけ店を閉めておくれ。大体一時間くらいしたら再度開けていいからね」

「えっ? え~っと?」

「何かよくわからないけどわかりました。ミューズ、行くわよ」

「ふぇえええええ!?」


 ミューズさんは訳が分からず混乱しているようだ。

 まぁ何の説明もなしにそんなこと言われたらそうもなるか。


「ほれ、あんたらは奥だよ。早くおいで」

「奥ってーと工房か。なんだろう」

 

 俺の疑問には答えず奥へと1人で進んでいく師匠。

 仕方ないから俺たちは急いで師匠の後を追った。


「部屋に入ったらイリスとエミルはあたしの目の前においで。フラメルは寛いでな」

「ふむ……」

「お姉ちゃん、なんだろうね?」

「さーてね」


 俺たちが部屋に入るのを確認すると師匠は工房の扉の鍵をカチャリと閉めた。


「さて、今回のことだけど、実はあたしも詳しくは知らないんだよ」

「は? なんだそれ」


 このばばあ急に詳しくは知らないとか言いだし始めた。


「いいかい? これはルナが決めたことだ。あたしはあの子の姉ではあるけど、あんたとあの子の間のことは詳しくは知らないからね」

「……。なるほど」


 ルナが師匠に教えていないなら師匠は知らなくても当然ということになる。

 となると、このよくわからない状況はルナが仕組んだことなのか……。


「お姉ちゃん、ルナって誰の事?」

「あ~っと、ルナクルスって女神様のことだ」

「えー!? 女神様って女神様でしょ!? ちゃんとフルネームで呼ばなきゃダメなんだよ~?」

「ま、まぁ、そうだよな。じゃあこれからはルナクルス様って呼ぼうかな」

「そうそう、それが正しいことだよー」


 ちびっこには逆らえない。

 そんなこんなで呼び方を改めようとしたところ、不意に師匠の表情が目に入った。

 頭に手を当て頭痛を抑えるような仕草をしている。


(なんだ……?)


 直後、外は急な土砂降りに見舞われてしまった。


「なんで突然雨雲が!?」

「おーい、急いで荷物をしまえー!」

「なんだよ、今日は晴れじゃなかったのかよ!?」

「大変だー! 神殿の女神様の像の目から涙みたいな液体が流れ始めたぞ!」


 外は突然のハプニングに見舞われてしまっているようだ。

 何が起きてるんだ?


「エミルや、イリスは特別にルナクルス様をルナって呼ぶことを許されてるんだよ。だからそう呼ぶことを許しておあげ」

「えー? う~ん、う~ん。グレモリー様がそう言うなら、わかったー」

「ほれイリス。許可が出たから改めてルナって呼んでおあげ」

「む? わ、わかったよ。ごめんな、ルナ」


 俺がそう呼んだ直後、外では別の騒ぎが起き始めていた。


「きゅ、急に晴れやがった。一体全体どうなってんだ」

「ねぇ聞いた? 神殿の女神様の像、心なしか微笑んでるように見えるらしいよ」

「さっきまで涙を流してたって聞いたのに!?」


 どうやら外の騒ぎは落ち着いたらしい。

 ってまって? ルナ、全部見てんの!?

 そっと師匠の顔を見ると、こくんと頷いているのが見えた。

 あー! もしかして今までのことも全部見てたんじゃないのか!? うわー! うわー!


「こほん。話を戻そうかね。今回イリスとエミルの間に起きたことはなんとなく予想がついたよ。どうやらあの子、本気でイリスを迎え入れるつもりのようだよ」

「え~っと、どういうこと?」


 何か合点がいったらしい師匠は1人で納得していた。

 俺は全く理解できてないけど……。


「イリス。あんたあの子に何か言われたかい?」

「え? ん~。あー。たしか『これからも共に居てください』だったっけ。んで、当然って答えたんだっけ」

「なるほどねぇ。よくわかったよ。んじゃ、あたしの推測通りだろうから教えるとするかね」

「あっと、お願いします」

「おねがいしまーす!!」


 というわけで俺とエミルの間に何が起きたのかを支障が説明してくれることになった。


「まずイリス。あんたは【精霊との絆】以外のスキルはなかったね?」

「うん。その通り」

「よし。じゃあそれを前提に。あたしがあんたにあげたスキルカードをお出し」

「あ~っと、これか」


 ポケットに入れておいた師匠特製のスキルカードを取り出す。

 半透明の板に文字が書かれている探索者組合の登録カードとはちょっと違うものだ。

 あっちは金属の板に書かれてたけど。


「んじゃ、スキルの欄を確認するよ。まずスキル名は【精霊との絆】だよ」

「うん」

「次にこのスキルは今変化している。2つの項目が開放されているのに気が付いているかい?」

「えっ?」


 師匠に言われて慌ててスキルカードを確認する。


 スキル名:精霊との絆

 スキル内容第1段階:精霊と仲良くなり深い絆を結べるようになる。

 スキル内容第2段階:絆を深めた精霊の能力を自分の能力に追加、同時に絆を深めた精霊の能力を2倍に引き上げる。

 スキル内容第3段階:絆を深めた精霊の能力を自身の能力として使用できるようになる。技術・スキル問わず。


「……。えっ?」


 いつの間にか俺のスキルはよくわからないことになっていた。

 最初は『スキル内容:精霊と仲良くなり深い絆を結べるようになる。』だけだったはずなのだ。


「ルナ、やってくれたね。つまりイリス。あんたは絆を深めた精霊であればだれのどんな能力や技術でも自分の物にできちまうんだ。本当にバカな能力だよ」

「えぇ? まってまって。俺よくわかってない」

「なら早速実践すればいいさね。エミルは母親が光の職業精霊で父親が水の職業精霊だったね」

「あ、そうです。私が光で浄化系とか回復、強化が得意です。旦那のヨシュアは水で水系の回復とか攻撃とかが得意ですね。エミルは今はまだ回復魔法くらいしか使えないですね」

「【ヒール】使えるよー!」

「ほぉう。なかなか優秀だね。ほれイリス。それならエミルのヒールの力を借りてみな」

「えっ?」

「お姉ちゃんならいいよ~!」


 俺が困惑しているうちに話はどんどん進んでいってしまう。

 エミルはなんか俺の手を握ってにこにこしているし、何なんだ……。


「よ、よくわからないけど、エミルの力を借りてみるよ」

「じゃあ私も、お姉ちゃんに力を貸しま~す!」

「よしイリス。この針を指に軽く刺してから、傷口にヒールを使ってみな」

「ま、まじで? あ、うん。やるよ……。ん~……。いてっ!? ひ、ヒール!」


 恐る恐る指に針を軽く刺して血を出す。

 そしてそのまま傷口に手をのひらを当て、ヒールを唱える。

 するとーー。


「き、傷口が治った! まじで!?」

「お姉ちゃんすごーい!!」


 なんと、今までまともなスキルが使えなかった俺でもヒールが使えたのだ。


「どうにかなったようだね。ふぅ……。はてさて、今後どうなっていくことやら」


 俺、初めてヒール使えたよ! ありがとう、ルナ! ありがとう師匠! ありがとうエミル!

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