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第43話 街ブラのあとは

 ちょっとしたぶらり散歩を終えて店舗に帰還。

 もちろん師匠も一緒なのだが、道中色んな人に「可愛い姉妹ね」などと言われてしまったのは秘密だ。

 これで「祖母なんです」なんて言ったら街の人はどんな反応するだろうね?

 きっと色んな人が師匠の旦那について考えることだろう。


「ただいま〜」

「あ、イリスちゃんおかえりなさい」

「ブラン早かったね」


 どうやらブランもすぐに戻ってきていたようだ。

 入ってすぐ挨拶してみたら反応が返ってきたので少し驚いた。


「うん、すぐ持っていくって言って神殿の転移スクロールで飛んでいっちゃったわ。あらグレモリー様」

「がんばっているようだね、ブラン。さっきちらっとターレスの街を見てきたけど、まだあの肖像画売ってたのかい」

「ぶふっ」


 やっべ、思わず吹き出しちゃった。


「イリス、お前も同じ目に合わせてやろうか? ったく。いらん恥をかいたよ」

「あぁ〜。グレモリー様が「これなら変な目で見られないだろう」とか言って変身して描かせた肖像画のことですね。懐かしい。イリスちゃん? あまり笑っちゃだめよ?」

「あー、うん。ごめんごめん。それにしても神殿の転移スクロールなんてよく提供してくれたね」


 各街の神殿には緊急時に備えて何枚かの転移スクロールが準備されている。

 これは緊急事態のとき、急ぎ連絡が必要なときなどに活用されるもので基本的に使われることのない代物だ。

 それを使用させるということはそれだけの事情があるということでもある。


「そうねぇ。イリスちゃんは会ったことのない子だけど相応の立場でもあるから……」

「あー。だろうね。まぁ大きな借りが作れたならそれでいいんじゃないかな」

「うーん……」


 俺としては仮が作れる程度と思っていたのだけど、ブランの表情は芳しくない。

 これはあまり良くないときの顔だな。


「本来避けられない死の運命を歪めたのを忘れておらんだろうな?」

「あ、そうだった……」


 師匠の忠告がなければなぁなぁで済ませるところだったが、人の死というのはどの世界でも簡単には避けられないものだ。

 地球の場合は医療技術や科学技術が進歩したおかげで色々な恩恵を受けられているが、この世界はまだ途上の段階だ。

 地球で治るものはこの世界では治せないのだ。

 その分、魔法の力である程度の欠損の治療などは可能だが、病気などの疾病には全く有効ではない。

 更にいうなら魂の損傷を治す術はこの世界にはないし、地球にもまだないのだ。


「【アリオス】様は当然喜んでいたわ。ご兄妹の一族のことですもの。ただ問題はその後よ。この恩を返すことは不可能に近いわ」


 ブランが口にした【アリオス】とは父方の祖父の名前だ。

 ちなみに父は【アイデス】という名前だが。


「そうだねぇ。まぁ今回のことはあたしに話が来るだろう。どこを落とし所にするかは問題だけど、まぁ適当なところで手打ちにするつもりさね」

「ご苦労をお掛けします」

「なに、これくらい対処できるから問題ないさね。ただイリスがうっかり解決してしまうとそれはそれで問題だからねぇ」

「そうですねぇ」


 2人はそう話し合うと、同時に俺の顔を見る。

 たしかに今回問題を解決したのは俺ではあるけど……。

 ちょっと考えなしだったかなぁ。


「それにしてもグレモリー様。よくこのような薬が手に入りましたね。やはりルナクルス様からでしょうか?」

「あー。まぁそんなところさ。あまり詮索しないでおくれ」

「承知致しました」


 さすがの師匠も今回の薬の出所については少し困ってしまったらしい。

 俺が不思議な声に導かれて作りました。なんて言えるわけないもんなぁ。


「イリスもいいかい? もし今回のようなことがあったら事前にあたしに知らせておくれ。それとあの件。新しい物ができたらまずあたしに見せな」

「はーい」


 師匠の口にしたあの件とは、俺が作った白い魔法薬の件のことだ。

 師匠も師匠なりに俺のことを心配しているみたいだしな。

 と、そんな話をしていたところ、店の入口前が何やら騒がしくなってきたのに気づいた。

 知っている声がするのであいなたちだろう。


「ふぃ〜。色々あって疲れました〜……。あ、イリスさーん、おかえりなさーい!」


 店に入ってくるなりあいなはそう口にすると俺に向かって抱きついてくる。

 この大型犬はいつもハグを求めてくるな……。


「あいな人気すごい。男性女性関係なし。でもナンパ目的の人間も多かった」

「ですよねー! 私ナンパされるの嫌いなんですよ……。怖いし怖いし」

「でもあいなは基本的にお菓子もらってばかりだったわよね」

「ご年配の女性からの人気がすごかったわね」

「ほぉ〜。まぁ可愛いし人懐っこいからなぁ」

「えへへ。可愛いだなって……。照れちゃいます」


 どうやらあいなは街の人に大人気だったらしい。

 すぐ餌付けされる辺り可愛がられているのがよく分かる。

 ナンパの件は可愛い子ではあるし、見た感じ隙が多いからつけ入りやすそうと思われたんだろうな。


「そういえばイリスさんってナンパされることあるんですか?」


 不意にあいながそんなことを口にしてきた。

 俺の答えといえば……。


「あるにはあるけど、こんな見た目の俺に声かけるやつは大抵変質者だぞ? それに幼馴染がいるときはどこからともなく幼馴染がやってきて追い払ってたな」

「ふふふ。イリスちゃんをナンパするクズは別途お仕置きが必要よね」


 幼馴染がいないときは俺についてるブランがナンパ男をいつの間にか消していたので、その後どうなったかは知らない。


「あわわ。ブランさんが怖いです!」


 黒いオーラを放ち始めたブランに怯えたあいなが俺に抱きついてくる。

 まぁブランってちょっとヤンデレっぽいところがあるっていうか、行き過ぎた愛情というかね……。


「こらブラン。あほなことやってるんじゃないよ」

「うぅ……。はい……」


 師匠が止めたことでブランの病み化は抑制されたのでした。

 俺、いつかブランに刺されるんじゃないだろうか……。


「こんにちはー。ターレス商業組合から鉄鉱石の買い取りにきましたー。今大丈夫でしょうか?」

「あ、はーい。いつでも大丈夫ですよ。今用意しますね。ご入用の量はありますか?」


 さっそく商業組合から買い取りの人員が来たようなので対応する。

 とりあえず1トンくらいならすぐに出しても問題ないだろう。


「多ければ多いほどありがたいのですが、どのくらいならすぐご用意できそうですか?」

「とりあえず1トンまでは用意できます。明日また1トン朝には入ってくる予定ですよ」


 まぁ本当は100トンあるんだけど。

 全部出したら値崩れするだろうから小出しにしていく予定だ。


「おぉ! では1トンでお願いします! 明日またお伺いしますので、よろしくお願いします」

「はい。では倉庫の方でお渡しします。料金の対応はブランお願い。10キロあたり450ブラウだから」

「はい」


 本日の取引料金は鉄鉱石1トン、単価10キロあたり450ブラウなので45000ブラウとなった。

 このまま全部売ると総額450万ブラウなので仕入れた金額の4.5倍になりそうだ。

 若干ずるいかもしれないけど許してほしい。

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