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第44話 前世との真夜中の授業2回目

 薬を届けてから1週間。

 祖父から聞いた話によるとそのまたいとこの女の子は無事に回復したようだ。

 経過も順調で、魔力が漏れるような症状も出なかったとか。


「というわけで結局あの薬が役に立ったって話」

『なるほど。私の知識が役に立ったならよかった』

「ありがとな。ところで疑問なんだけど、今そうやって話せるなら身体があれば表に出てこれたりするのか?」


 この一週間この姿の見えない少女について考えていたことがある。

 彼女は俺で俺は彼女ということだけど、どう考えても人格が2つあるような状態なのだ。

 ということは、身体を作れば人格を移せるのではないだろうかと。

 魂については……正直わからない。


『それは無理。私は言ってみれば貴女のもっと前の前世の記憶の残滓。本当の私は貴女だし、私の記憶も力も貴女の奥底に眠ってるわ。話し方も性格も違うのは生き方次第だから気にすることもない。それに私と話せている時点で貴女は私の力をちゃんと受け継いでるから。例えできたとしても一時的に人形に移したりする程度』

「だとしたら姿を見ることはもうできないってこと?」


 どんな姿だったのか、少し見てみたい気もするだけに残念な気持ちになる。


『夢の中でなら会える。それと貴女のスキルがもっと成長すれば、前世の私の姿になって活動することもできる。あの日本で見た変身みたいに』

「それは……ちょっと面白そうかも」


 いわゆる変身ヒーローや変身ヒロインというやつだろう。


『材料だけは先に教えておく。【火の秘石】【水の秘石】【風の秘石】【土の秘石】【光の秘石】【闇の秘石】【空間の秘石】これらを作り出して【月の秘石】に合成するだけ』

「聞いたことのない材料がたくさん」


 各属性の【秘石】なんていう素材を俺は知らない。

 あとでブランたちにも聞いてみるべきだろうか。


『各属性の秘石は貴女にしか作れないから精霊から素材になる精霊石を貰って作って。それと今使っている魔法錬金用の錬金釜をアップグレードさせる必要があるから素材を作らないとだめ』

「今ある錬金釜じゃ作れないものってこと?」


 この錬金釜は師匠お手製なだけあって色んな素材を作ることが可能だ。

 すりつぶしたりという手間はあるものの、成果物だけを釜の底に残せるので鉄の延べ棒などの作成にも大いに役立たせてもらっている。


『うん。【概念錬金術】を使う必要がある。これは抽象的なイメージなどから想像通りのものを作るためのもの。例えば鉄の延べ棒と鋼鉄の延べ棒、ちょっとした素材の違いはあるけどほぼ同じ素材を使うとしたら選べないでしょ? 【概念錬金術】は頭の中で思い描いたものを作るための素材を教えてくれたり選択して成果物を得ることができる。あっちの世界でいうところのゲームのシステムみたいな感じだと思って』

「ほぉ!」


 今まで若干不便に思っていた事が解決するらしい。

 特に例にあったように鋼鉄を作りたいけど鉄も作りたいとき、1回毎に素材を追加しないといけないから困っていたところだった。

 

「でもこれって、ある意味素材さえあれば想像通りのものが作れる可能性があるってことだろ? いつも通り最終的な組み立ては自分自身でやらないといけないけど、素材だけは想像通りになる」

『そう。だから本来は作成にもっと設備が必要な素材も作ることができる。【コークス】とか』


 どうやらかなりチート級の錬金術を使えるようになるようだ。

 となると火薬の調合方法も色々と選べることになるのか。


「便利すぎる」

『でしょう? さてと、じゃあ今日の授業です。今回は属性鉄を作る講義をするね。一時的ではなく恒久的に属性を宿せる。ただし加工にはちょっと問題がある。でもあいなとの組み合わせなら問題ない』

「属性鉄かぁ。そういえば師匠にも教えてもらったことはないな」


 師匠は薬には強いのだけどこういった鉄関係はあまり強くない。

 その代わり薬に関わることなら魂関係以外のことはほぼ何でもできるそうだ。


『女神にも得意なもの不得意なものはある。私は色々な錬金術を教えられる。特に得意なのは特殊素材の作成。今回のも特殊素材だから張り切ってる』

「頼もしい」

『私の全部を貴女が引き継いだら、貴女はきっともっと伸びるから出し惜しみせずに教えていくよ』


 ふと、彼女が言った『私の全部を貴女が引き継いだら』という言葉に引っかかりを覚えた。

 彼女は残滓であり魂自体は俺と同じだと言っている。

 いつか消えてしまうのだろうか?

 

「なぁ。もし俺が全部を引き継いだらどうなるんだ?」

『貴女は何も変わらないよ? 私は消えてしまうけど貴女は貴女。貴女はいずれ自分で私という前世を思い出すし垣間見ることができる。私は記録、私は記憶。だからそこは気にしないで』

「気にするなといっても……」


 俺は、すべてを学んだ時に耐えることができるのかな……?

 このまま前世の俺を残したままにはできないのだろうか……。


『言ったはず。私は貴女。私にはもう魂はない。私の魂は貴女になった。さ、始めるよ』

「あ、あぁ……」


 こうして真夜中の授業が始まった。

 内容は至極単純。

 鉄と各種属性石を釜に一緒に入れるだけだ。

 これで出来るのが各種属性鉄で、その鉄をすべてまとめて、月光の粉を追加した鉄が月光鉄と呼ばれるものになるそうだ。

 この月光鉄を元に錬金釜を作ると、俺のイメージをそのまま具現化させる【概念錬金術】が使えるようになるそうだ。


『【概念錬金術】は【創世】と同じ。使い方には気を付けて』

「わ、わかった……」


 この日、俺は新しい錬金術を知った。

 この日、俺は迷う自分を知った。

 この日、俺は向き合うべき前世を知った。

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